トミックス700系「ひかりレールスター」 レビュー
2022年6月、トミックスより700系「ひかりレールスター」が発売された。
・98769 JR 700-7000系山陽新幹線(ひかりレールスター)セット 25,080円
(税込み表示)

久々にリニューアルされたトミックスの700系「ひかりレールスター」。
700系「ひかりレールスター」はJR西日本が所有する、8両編成の「E編成」と呼ばれる700系である。従来走っていた0系の「ウエストひかり」を置き換える目的で2000年3月から新大阪~博多間で運行されたのが始まりである。九州新幹線が全通し「みずほ」「さくら」が登場すると「ひかりレールスター」は徐々に減少、その後は500系とともに山陽新幹線内の「こだま」に活躍の場を移している(実車の詳細はメインサイトに譲る)。
「みずほ」「さくら」が登場した約10年前、筆者は「ひかりレールスター」は早晩消滅すると予想していたが(そのつもりで乗り納めもしていた)、2022年6月現在、「ひかりレールスター」は朝方の上り2本だけでさすがに「風前の灯火」という印象だけども、いまだに運用は残っているし700系の16両編成(C・B編成)はすでに全車引退している中、E編成は16編成すべてが健在。山陽新幹線限定運用なので走行距離が少なめということもあるが、かなりしぶとい編成だと感じる。「こだま」としてならまだまだ活躍するのだろう。
模型としてはトミックスが2003年2月に発売したものが初めてで、これはカトーがすでにC編成(JR東海)を製品化していたのでバッティングしないようE編成を選定したということもあるだろう。
最初期製品は当時のトミックス標準的な仕様で、改良型フックリングカプラー+可動幌、車端の客用扉の窓ガラスが入っていない、ヘッドライトは黄色LEDというものだった。ほどなくセット構成が基本+増結セットに改められている。
2010年12月にリニューアルがなされ、通電カプラー(フックリング)化、車端の窓ガラス追加、フライホイール動力への変更が行われた。そして2022年6月、通電カプラーをフックU字型に、行先表示機のモールド化、新型モーターの採用といった内容で最新のリニューアルが行われることになった。
E編成はトミックス以外から発売されたことはないが、このように時代に合わせてリニューアル(アップデート)されながら現在に至っている。まとめると以下のようになる。
・第1世代(2003年2月) フックリングカプラー、車端窓ガラスなし、8両セット→途中で基本+増結セットに変更
・第2世代(2010年12月) 通電カプラー(フックリング)、車端窓ガラス追加(行先表示機除く) フライホイール動力に変更
・第3世代(2022年6月) 通電カプラー(フックU字)、行先表示機をモールド化 、新型モーターに変更
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(2022/7/22追記)
読者様コメントより、第1世代ではセット構成が変わった際に、黒染め車輪から通常の車輪に変更されているとのこと。
(YUUKI 様、情報提供ありがとうございます)
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今回紹介するのは2022年6月に発売された第3世代である。第2世代はスルーしたが、所持している第1世代はいろいろ仕様が古いのでこのたび「買い替え」のつもりで購入、レビューすることにした。第1世代の製品は持っているので、どの辺が新しくなったのかを比較しながら見てみたいと思う。
なお、今回製品も従来製品をベースとしていることから、例に漏れずメインサイトのレビュー記事も参考にされたい。また、今回はあまりボリュームのある記事ではないのでご了承のほど。

8両フル編成1セットというシンプルな構成。もっとも、基本+増結セットの形態をとっていたのは第1世代のみである。当時のE編成はまだまだ新しく、スターター向けの構成が成り立っていたからかもしれない。

付属品はインレタのみで後付けのガイシパーツなどはないが、これは従来製品も同じである。
含まれる編成はE13・14・15編成となる。第1世代の基本セットはE15編成の車番が印刷済みだったが、それ以外は今回製品を含めてすべて印刷無し、インレタ表現になっている。
E編成は最終増備のE16編成を除けば外観の変化はほとんどないのに(このへんの詳細はメインサイトを)、これまで3世代のインレタすべてがE13~15編成を継承しており、他製品がリニューアルで編成が変更されることが多いことを考えると珍しいといえる。E1~12編成は当初4・5号車間のケーブルヘッドがなかったからかもしれないが、後にケーブルヘッドが増設されてE1~15編成の差異はほとんどなくなったはず。なんらかのこだわりがあるのか。
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(2022/7/5追記・修正)
この件、読者様からのコメントにより新たな事実が判明したので追記する。
それは、E1~12編成とトミックスがひたすらプロトタイプとしているE13~15編成では、4・5号車間のケーブルヘッドの形状が異なるというものだ。前者が途中でケーブルヘッドを増設したというのは既知の情報であり、メインサイトでもそのように書いているが、形状に違いがあるというのはこれまで書籍でもネットでも見たことがなく、筆者も初耳でかなり衝撃的な情報だ。
手持ちの画像には比較できるような同じ画角の写真がなく苦戦したが(E編成が東京駅にでも来てくれれば速攻調査なんだけど…)、一応エビデンスになりそうな画像をほじくってみた。


上がE12編成。下がE16編成。動画からの切り出しなので画質が悪い(しかもブレてる)のはご勘弁を。また、E13~15編成の動画がなくてE16編成になってしまったが、当初からケーブルヘッド増備は変わりないのでおそらく見た目も同じだろう。
こうして見ると、明らかにE12編成の方がガイシ位置が高く、ケーブルヘッド本体の長いことがわかる(末端部が屋根上滑り止めを跨いでいる)。また、ガイシ直下の屋根切り欠きもない。


完全に同じ画角にはできなかったが、右上に写っているケーブルヘッドの高さに差がみられる。明らかにE7編成(上)の方が高いことがわかる。
これらは300系のパンタ撤去車は8・9号車間の屋根車端に切り欠きがないので、ケーブルヘッドを高くして対処した事情と似ている。E1~12編成も当初は4・5号車間は直ジョイントだったので切り欠きがなかったわけだが、切り欠きを新たに設けるより、ケーブルヘッドを上げる方が簡単ということだろう。同じような対処になったのは道理である。
ちなみに、E2系のJ51~53編成とJ54編成以降にもケーブルヘッド有無の違いがあり、こちらは特に改造されなかったが、もしされたとしたら300系、E編成と同じような感じだったかもしれない。すでにJ53編成しか残ってなく、それすら風前の灯火という感じなので実現はなさそうだが…
トミックスがこれまでE13~15編成をインレタに収録していたのは、こうした事実考証に基づいているという認識で間違いないだろう。「いわれてみれば」という感じではあるけど、筆者もそこまで考えが及ばなかった。
というわけで、これでE編成の新しいバリエーション増やせますネ…って、E編成のさよなら運転がE1~12編成で行われたら「さよならセット」で実現の可能性はあるのか。
(らんきち様、情報提供ありがとうございます)
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禁煙マークは印刷がないので面倒なのは否定できないが、時代の変遷に応じた姿を再現できるメリットもある。E編成はデビュー時~2004年4月までは1・3・4・7・8号車が禁煙車で、2004年4月に5号車、2011年3月に2号車が加わっている。
(2022/10/25追記)
さらに、2012年3月には残っていた6号車も禁煙車となり喫煙ルームもないため、山陽新幹線を走る車両としては唯一全席禁煙となっている。
車椅子対応マークもインレタ表現となるが、こちらは7号車固定なので印刷済みでもよかった気がする。

左が今回製品、右従来製品(以降、すべて第1世代)。
第3世代となる今回製品はあくまでも「リニューアル」であり、基本的には従来製品と同じである。特に今回は新規パーツはまったくないため、造形などは寸分の違いもなくグレーの色味程度しか違いを見いだせない。
もっとも、第1世代の発売から20年近く経っているとはいえ、特に作り直す必要はないと思えるほど優れた造形を誇っていたこともよくわかる。
(2022/7/4追記)
読者様より、両者のワイパー形状が微妙に違うように見えるというコメントをいただきました。改めて見比べると確かに差があり、今回製品はワイパーの関節部分がやや下方に移動し、根元側のアームがやや短くなった感じです。ただ、両者ともJR西の700系としては正しい形状であると判断します。どちらが実車に近いかは…正直、実車写真は画角などの問題もあって判断が難しいです。


上が今回製品、下が従来製品。先頭部の乗務員室扉周辺を見る。
前述のとおりボディは同じなので乗務員室扉や客用扉モールド感もまったく同じである。ただし、写真右の方にある座席表示機はガラス表現からモールド表現に変更されている。また、号車番号の印刷済みになった(第2・3世代)。
ただ、乗務員室扉前方にある「Rail Star」のロゴは大きさが少々異なる。

停目のポールで見づらいが、ロゴと乗務員室扉との距離感は従来製品の方が近いと思う。ただ、高さについては今回製品の方が近く(「Rail Star」の下端と乗務員室扉のノブ上端から)、ロゴ自体の大きさも適正化されているような…気がする?判断が難しい。個体差があるかもしれないが、印刷位置がもう少し後方に寄るとよかったかも。
第2世代についてはホビーサーチさんの画像を見る限り、第1世代のそれに近いようだ。


上が従来製品、下が今回製品。
優れた造形を持つトミックスE編成だが、先頭部横のパーティングラインが目立つという欠点があった。こうして見比べてみると今回製品は少し目立たなくなったかな?という気がしないでもないが、不満を感じないレベルかどうかといわれると微妙だ。写真は1号車海側で山側および8号車もこんな感じ。8号車山側だけは比較的目立たないなど、箇所による個体差もある。
ボディがそのまま流用された第2世代はともかく、今回製品は行先表示機で金型に修正が入ったので、もしかしたらノーズも修正してくれるのではと期待していたが(もしかしたら修正はあったのかもしれないが)そうはならなかったようだ。メインサイトの記事で10年前に、ここの改善は期待薄と書いていたのだが現実になってしまったようだ。


上が今回製品、下が従来製品。1号車後位をチェック。
こちらもモールド感は全く同じで、座席表示機と行先表示機のガラス表現→モールド表現が大きな違いとなる。従来製品は見てのとおり車端の行先表示機にはガラスを入れる余地が全くなく、車端の客用扉窓にガラスが入った第2世代でさえここはフォローされなかった。後に発売された700系C編成も同じ問題を抱えていたが、後の「さよならセット」でモールド表現に変更、このたびE編成にも反映されることになった。
筆者はメインサイトに記事で10年前からここはモールド化した方がよいのでは?と主張していたので、実現はC編成の方が先だったとはいえ、E編成にも波及したのは感慨深いものがある。
誤解のないように書いておくけど、筆者は当サイトの影響によるものだとは全く思っていない。そもそもメーカーもこんなところ見てないだろうし(苦笑)、よしんば見ていたとしても、ある程度の大きさの企業が個人サイトの意見を取り入れるというのは常識的にあり得ない。要するに、今回の修正はメーカー(トミックス)が自ら問題点を認識し、真摯に改良に臨んだというのが筆者の考えだ。だけども、形はどうあれ(当サイトが何の役になってなくても)、自分が願っていたものが実現したことには変わりなく、その意味で「感慨深い」という表現を使わせてもらった。加えて、先ほど書いたようなメーカーの姿勢に感服したというのも、今回製品の購入動機の一つである。
その他、従来製品は基本セットのものなのでE15編成の車番が印刷済み。前述のとおり、今回製品はインレタ表現となる。また、先頭部と同様にここの「Rail Star」ロゴも大きさに差がある。

実車を見る限り、今回製品の方が近そうだ。窓回りのダークグレーに対してロゴはやや下寄りであること、車端と客用扉との間隔を見比べても、である。そう考えると、先頭部ロゴの大きさも適正化されているのかもしれない。


上が今回製品、下が従来製品。2号車新大阪寄りの比較。
こちらも行先表示機と座席表示機のガラス表現→モールド表現の変化および、号車番号と車番の印刷の変化がわかるかと思う(従来製品の2号車は基本セットに含まれていた)。
行先表示機はモールド化されたが、C編成は実車が幕式なのでまあまあよかったが、E編成はLED式の黒パネルなのでそのままでは半端といえば半端である。しかも、内部の塗装もあまりきれいではない。
自然に見せるなら黒で塗りつぶすか(走行中は消灯している)、ステッカーを貼るかということになるが、700系のJR西車はトミックスしか出していないので他社製品からの流用とかができない。ステッカーを自作するかサードパーティ製を購入して対応するにしても少々面倒ではある。
もっとも、従来製品は特に車端部の行先表示機はそんな対策すら困難だったから、モールド化されただけでも相当マシになったといえるだろう。


上が今回製品、下が従来製品。
従来製品では可動幌に干渉するため車端の窓ガラスがなかったが、今回製品はしっかりガラスがあることが確認できる。なお、このガラスは第2世代ですでに実現している。また、その際に車端部の行先表示機はガラスなしだったのは前述のとおりである。

ついでにここ(7号車)のロゴも見ておこう。やはり、ロゴの大きさ自体は今回製品の方が適正なようだ。ただ、高さ位置については従来製品の方がそれっぽい。大きさはともかく、印刷位置は若干個体差が出るようだ。

左が今回製品、右が従来製品。
連結部は可動幌の形状など見た目には変わっていないが、カプラーは従来製品の「改良型フックリングカプラー」から現在の主流である「フックU字型通電カプラー」になっている。ちなみに、第2世代は「フックリング式通電カプラー」が採用されていた。
同一形式・同一編成の製品でかつ、限定品を挟まない通常製品でという条件なら、2回のリニューアルで3種類の歴代新幹線用カプラーを装備したのは今のところ700系E編成くらいではないだろうか(ちゃんと調べてないで書いてるので、もしかしたら他にあるかも…)。


上は動力車で下はトレーラー車、それぞれ左が従来製品、右が今回製品。
動力車では床下パーツの車端にあるバーの位置変更(従来製品ではカプラーの下を取っている)、トレーラー車では座席パーツ(下写真の青い部分)への突起追加が行われている。もっともこれらは通電カプラー化された第2世代の段階で行われていた可能性が高い。
また、こうして見ると車内パーツの色は自由席・指定席ともに変わっていないことがわかる。自由席車の座席の色が微妙なのは相変わらずということだ。

左が今回製品、右が従来製品。
塗装は色味・光沢とも大きくは変わらないが、ライトグレーと黄色帯は従来製品が明るめ、窓回りのダークグレーは今回製品が明るめに感じる。わずかな差でしかないけど、従来製品はコントラストが強くメリハリがあり、今回製品は落ち着いた雰囲気になったといえそうだ。
こうして見ると、ロゴの大きさ、行先表示機の表現に差があることが改めてわかるかと思う。

今回製品は屋根上の号車番号は印刷済みとなる。第1・2世代ではインレタ表現だった。第2世代の段階で印刷済みであり、第1世代のみがインレタ表現である。
(2022/7/4修正)読者様のコメントにより、第2世代はインレタ表現とのことでしたので修正しました。
(ゆのまち様、情報提供ありがとうございます)
屋根上は第1世代の頃から3号車・6号車の大型ジョイントを表現しているなど再現度が高く、それらは今回製品にも引き継がれている。

奥が今回製品、手前が従来製品。
前述のとおり屋根上はパンタ周辺を含めて従来製品から変わっていないのだが、パンタカバーの色は結構異なっている。従来製品はコントラストになっていて模型的な見栄えはするもの、実車に近いのはボディ塗装と差がない今回製品の方である。

どちらも従来製品となるが、筆者の所持品は2号車と7号車(手前)で色味が異なる。といっても元からこうだったわけではなく(同一個体で撮影したメインサイトのアーカイブではこんな差はない)、7・8号車はリビングで飾っていたのでカバーが紫外線で黄変したのだろう。ボディはまったく影響を受けていないのは塗装されているからであり、逆に言えばパンタカバーは無塗装ということである。
今回製品はボディと同色になったが、無塗装なのか塗装されているのかはたして…たぶん無塗装だと思うが。


上が今回製品、下が従来製品。
今回製品ではようやくヘッドライトが電球色LEDになった。従来製品は(たぶん第2世代も)黄色LEDだったので、ようやく面目を保った格好だ。光量も十分、変な光漏れも一切ない。
ちなみに、パーツを共用しているであろうC編成は最初期製品が黄色LED、後に発売された限定品(「さよならセット」「AMBITIOUS JAPAN!」)は電球色LEDという組み合わせである。
●総評
基本的には従来製品と同じ=メインサイトで書き尽くしているのであまり書くところはなく、このところのN700S、300系のレビューと比べると、久々にライトなレビューに落ち着いた。
前述した通り、筆者が今回「買い替え」にいたったのは行先表示機の修正で、それを行ったメーカーに感服したというのが大きい。
此方も買わねば…無作法というもの…
ということだ。
唯一ノーズ横のパーティングラインには不満があるところで、ここさえ修正されていたら「今回製品はE編成模型の決定版」とまで書くつもりだった。つまり、今回製品は残念ながら「決定版」にはなれなかったと思っている。それでも、行先表示機以外にもヘッドライトなど良くなったところはいくつかあり、まあ第1世代は仕様が古すぎるとしても、買い替えた価値は十分にあったと思っている。
もともと第1世代の頃からよくできた製品であり、さらに改良された今回製品は今からE編成の模型が欲しいという人にも問題なく勧められる製品だと思う。8両編成というのも比較的手軽でよい。
「ひかりレールスター」としての700系E編成はそろろろ終わりが見えつつあるが「こだま」としてならまだまだ走ると思うので、興味があればこれを機に自分のラインナップに加えるのも悪くないと思う。
・98769 JR 700-7000系山陽新幹線(ひかりレールスター)セット 25,080円
(税込み表示)

久々にリニューアルされたトミックスの700系「ひかりレールスター」。
700系「ひかりレールスター」はJR西日本が所有する、8両編成の「E編成」と呼ばれる700系である。従来走っていた0系の「ウエストひかり」を置き換える目的で2000年3月から新大阪~博多間で運行されたのが始まりである。九州新幹線が全通し「みずほ」「さくら」が登場すると「ひかりレールスター」は徐々に減少、その後は500系とともに山陽新幹線内の「こだま」に活躍の場を移している(実車の詳細はメインサイトに譲る)。
「みずほ」「さくら」が登場した約10年前、筆者は「ひかりレールスター」は早晩消滅すると予想していたが(そのつもりで乗り納めもしていた)、2022年6月現在、「ひかりレールスター」は朝方の上り2本だけでさすがに「風前の灯火」という印象だけども、いまだに運用は残っているし700系の16両編成(C・B編成)はすでに全車引退している中、E編成は16編成すべてが健在。山陽新幹線限定運用なので走行距離が少なめということもあるが、かなりしぶとい編成だと感じる。「こだま」としてならまだまだ活躍するのだろう。
模型としてはトミックスが2003年2月に発売したものが初めてで、これはカトーがすでにC編成(JR東海)を製品化していたのでバッティングしないようE編成を選定したということもあるだろう。
最初期製品は当時のトミックス標準的な仕様で、改良型フックリングカプラー+可動幌、車端の客用扉の窓ガラスが入っていない、ヘッドライトは黄色LEDというものだった。ほどなくセット構成が基本+増結セットに改められている。
2010年12月にリニューアルがなされ、通電カプラー(フックリング)化、車端の窓ガラス追加、フライホイール動力への変更が行われた。そして2022年6月、通電カプラーをフックU字型に、行先表示機のモールド化、新型モーターの採用といった内容で最新のリニューアルが行われることになった。
E編成はトミックス以外から発売されたことはないが、このように時代に合わせてリニューアル(アップデート)されながら現在に至っている。まとめると以下のようになる。
・第1世代(2003年2月) フックリングカプラー、車端窓ガラスなし、8両セット→途中で基本+増結セットに変更
・第2世代(2010年12月) 通電カプラー(フックリング)、車端窓ガラス追加(行先表示機除く) フライホイール動力に変更
・第3世代(2022年6月) 通電カプラー(フックU字)、行先表示機をモールド化 、新型モーターに変更
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(2022/7/22追記)
読者様コメントより、第1世代ではセット構成が変わった際に、黒染め車輪から通常の車輪に変更されているとのこと。
(YUUKI 様、情報提供ありがとうございます)
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今回紹介するのは2022年6月に発売された第3世代である。第2世代はスルーしたが、所持している第1世代はいろいろ仕様が古いのでこのたび「買い替え」のつもりで購入、レビューすることにした。第1世代の製品は持っているので、どの辺が新しくなったのかを比較しながら見てみたいと思う。
なお、今回製品も従来製品をベースとしていることから、例に漏れずメインサイトのレビュー記事も参考にされたい。また、今回はあまりボリュームのある記事ではないのでご了承のほど。

8両フル編成1セットというシンプルな構成。もっとも、基本+増結セットの形態をとっていたのは第1世代のみである。当時のE編成はまだまだ新しく、スターター向けの構成が成り立っていたからかもしれない。

付属品はインレタのみで後付けのガイシパーツなどはないが、これは従来製品も同じである。
含まれる編成はE13・14・15編成となる。第1世代の基本セットはE15編成の車番が印刷済みだったが、それ以外は今回製品を含めてすべて印刷無し、インレタ表現になっている。
E編成は最終増備のE16編成を除けば外観の変化はほとんどないのに(このへんの詳細はメインサイトを)、これまで3世代のインレタすべてがE13~15編成を継承しており、他製品がリニューアルで編成が変更されることが多いことを考えると珍しいといえる。
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(2022/7/5追記・修正)
この件、読者様からのコメントにより新たな事実が判明したので追記する。
それは、E1~12編成とトミックスがひたすらプロトタイプとしているE13~15編成では、4・5号車間のケーブルヘッドの形状が異なるというものだ。前者が途中でケーブルヘッドを増設したというのは既知の情報であり、メインサイトでもそのように書いているが、形状に違いがあるというのはこれまで書籍でもネットでも見たことがなく、筆者も初耳でかなり衝撃的な情報だ。
手持ちの画像には比較できるような同じ画角の写真がなく苦戦したが(E編成が東京駅にでも来てくれれば速攻調査なんだけど…)、一応エビデンスになりそうな画像をほじくってみた。


上がE12編成。下がE16編成。動画からの切り出しなので画質が悪い(しかもブレてる)のはご勘弁を。また、E13~15編成の動画がなくてE16編成になってしまったが、当初からケーブルヘッド増備は変わりないのでおそらく見た目も同じだろう。
こうして見ると、明らかにE12編成の方がガイシ位置が高く、ケーブルヘッド本体の長いことがわかる(末端部が屋根上滑り止めを跨いでいる)。また、ガイシ直下の屋根切り欠きもない。


完全に同じ画角にはできなかったが、右上に写っているケーブルヘッドの高さに差がみられる。明らかにE7編成(上)の方が高いことがわかる。
これらは300系のパンタ撤去車は8・9号車間の屋根車端に切り欠きがないので、ケーブルヘッドを高くして対処した事情と似ている。E1~12編成も当初は4・5号車間は直ジョイントだったので切り欠きがなかったわけだが、切り欠きを新たに設けるより、ケーブルヘッドを上げる方が簡単ということだろう。同じような対処になったのは道理である。
ちなみに、E2系のJ51~53編成とJ54編成以降にもケーブルヘッド有無の違いがあり、こちらは特に改造されなかったが、もしされたとしたら300系、E編成と同じような感じだったかもしれない。すでにJ53編成しか残ってなく、それすら風前の灯火という感じなので実現はなさそうだが…
トミックスがこれまでE13~15編成をインレタに収録していたのは、こうした事実考証に基づいているという認識で間違いないだろう。「いわれてみれば」という感じではあるけど、筆者もそこまで考えが及ばなかった。
というわけで、これでE編成の新しいバリエーション増やせますネ…って、E編成のさよなら運転がE1~12編成で行われたら「さよならセット」で実現の可能性はあるのか。
(らんきち様、情報提供ありがとうございます)
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禁煙マークは印刷がないので面倒なのは否定できないが、時代の変遷に応じた姿を再現できるメリットもある。E編成はデビュー時~2004年4月までは1・3・4・7・8号車が禁煙車で、2004年4月に5号車、2011年3月に2号車が加わっている。
(2022/10/25追記)
さらに、2012年3月には残っていた6号車も禁煙車となり喫煙ルームもないため、山陽新幹線を走る車両としては唯一全席禁煙となっている。
車椅子対応マークもインレタ表現となるが、こちらは7号車固定なので印刷済みでもよかった気がする。

左が今回製品、右従来製品(以降、すべて第1世代)。
第3世代となる今回製品はあくまでも「リニューアル」であり、基本的には従来製品と同じである。特に今回は新規パーツはまったくないため、造形などは寸分の違いもなくグレーの色味程度しか違いを見いだせない。
もっとも、第1世代の発売から20年近く経っているとはいえ、特に作り直す必要はないと思えるほど優れた造形を誇っていたこともよくわかる。
(2022/7/4追記)
読者様より、両者のワイパー形状が微妙に違うように見えるというコメントをいただきました。改めて見比べると確かに差があり、今回製品はワイパーの関節部分がやや下方に移動し、根元側のアームがやや短くなった感じです。ただ、両者ともJR西の700系としては正しい形状であると判断します。どちらが実車に近いかは…正直、実車写真は画角などの問題もあって判断が難しいです。


上が今回製品、下が従来製品。先頭部の乗務員室扉周辺を見る。
前述のとおりボディは同じなので乗務員室扉や客用扉モールド感もまったく同じである。ただし、写真右の方にある座席表示機はガラス表現からモールド表現に変更されている。また、号車番号の印刷済みになった(第2・3世代)。
ただ、乗務員室扉前方にある「Rail Star」のロゴは大きさが少々異なる。

停目のポールで見づらいが、ロゴと乗務員室扉との距離感は従来製品の方が近いと思う。ただ、高さについては今回製品の方が近く(「Rail Star」の下端と乗務員室扉のノブ上端から)、ロゴ自体の大きさも適正化されているような…気がする?判断が難しい。個体差があるかもしれないが、印刷位置がもう少し後方に寄るとよかったかも。
第2世代についてはホビーサーチさんの画像を見る限り、第1世代のそれに近いようだ。


上が従来製品、下が今回製品。
優れた造形を持つトミックスE編成だが、先頭部横のパーティングラインが目立つという欠点があった。こうして見比べてみると今回製品は少し目立たなくなったかな?という気がしないでもないが、不満を感じないレベルかどうかといわれると微妙だ。写真は1号車海側で山側および8号車もこんな感じ。8号車山側だけは比較的目立たないなど、箇所による個体差もある。
ボディがそのまま流用された第2世代はともかく、今回製品は行先表示機で金型に修正が入ったので、もしかしたらノーズも修正してくれるのではと期待していたが(もしかしたら修正はあったのかもしれないが)そうはならなかったようだ。メインサイトの記事で10年前に、ここの改善は期待薄と書いていたのだが現実になってしまったようだ。


上が今回製品、下が従来製品。1号車後位をチェック。
こちらもモールド感は全く同じで、座席表示機と行先表示機のガラス表現→モールド表現が大きな違いとなる。従来製品は見てのとおり車端の行先表示機にはガラスを入れる余地が全くなく、車端の客用扉窓にガラスが入った第2世代でさえここはフォローされなかった。後に発売された700系C編成も同じ問題を抱えていたが、後の「さよならセット」でモールド表現に変更、このたびE編成にも反映されることになった。
筆者はメインサイトに記事で10年前からここはモールド化した方がよいのでは?と主張していたので、実現はC編成の方が先だったとはいえ、E編成にも波及したのは感慨深いものがある。
誤解のないように書いておくけど、筆者は当サイトの影響によるものだとは全く思っていない。そもそもメーカーもこんなところ見てないだろうし(苦笑)、よしんば見ていたとしても、ある程度の大きさの企業が個人サイトの意見を取り入れるというのは常識的にあり得ない。要するに、今回の修正はメーカー(トミックス)が自ら問題点を認識し、真摯に改良に臨んだというのが筆者の考えだ。だけども、形はどうあれ(当サイトが何の役になってなくても)、自分が願っていたものが実現したことには変わりなく、その意味で「感慨深い」という表現を使わせてもらった。加えて、先ほど書いたようなメーカーの姿勢に感服したというのも、今回製品の購入動機の一つである。
その他、従来製品は基本セットのものなのでE15編成の車番が印刷済み。前述のとおり、今回製品はインレタ表現となる。また、先頭部と同様にここの「Rail Star」ロゴも大きさに差がある。

実車を見る限り、今回製品の方が近そうだ。窓回りのダークグレーに対してロゴはやや下寄りであること、車端と客用扉との間隔を見比べても、である。そう考えると、先頭部ロゴの大きさも適正化されているのかもしれない。


上が今回製品、下が従来製品。2号車新大阪寄りの比較。
こちらも行先表示機と座席表示機のガラス表現→モールド表現の変化および、号車番号と車番の印刷の変化がわかるかと思う(従来製品の2号車は基本セットに含まれていた)。
行先表示機はモールド化されたが、C編成は実車が幕式なのでまあまあよかったが、E編成はLED式の黒パネルなのでそのままでは半端といえば半端である。しかも、内部の塗装もあまりきれいではない。
自然に見せるなら黒で塗りつぶすか(走行中は消灯している)、ステッカーを貼るかということになるが、700系のJR西車はトミックスしか出していないので他社製品からの流用とかができない。ステッカーを自作するかサードパーティ製を購入して対応するにしても少々面倒ではある。
もっとも、従来製品は特に車端部の行先表示機はそんな対策すら困難だったから、モールド化されただけでも相当マシになったといえるだろう。


上が今回製品、下が従来製品。
従来製品では可動幌に干渉するため車端の窓ガラスがなかったが、今回製品はしっかりガラスがあることが確認できる。なお、このガラスは第2世代ですでに実現している。また、その際に車端部の行先表示機はガラスなしだったのは前述のとおりである。

ついでにここ(7号車)のロゴも見ておこう。やはり、ロゴの大きさ自体は今回製品の方が適正なようだ。ただ、高さ位置については従来製品の方がそれっぽい。大きさはともかく、印刷位置は若干個体差が出るようだ。

左が今回製品、右が従来製品。
連結部は可動幌の形状など見た目には変わっていないが、カプラーは従来製品の「改良型フックリングカプラー」から現在の主流である「フックU字型通電カプラー」になっている。ちなみに、第2世代は「フックリング式通電カプラー」が採用されていた。
同一形式・同一編成の製品でかつ、限定品を挟まない通常製品でという条件なら、2回のリニューアルで3種類の歴代新幹線用カプラーを装備したのは今のところ700系E編成くらいではないだろうか(ちゃんと調べてないで書いてるので、もしかしたら他にあるかも…)。


上は動力車で下はトレーラー車、それぞれ左が従来製品、右が今回製品。
動力車では床下パーツの車端にあるバーの位置変更(従来製品ではカプラーの下を取っている)、トレーラー車では座席パーツ(下写真の青い部分)への突起追加が行われている。もっともこれらは通電カプラー化された第2世代の段階で行われていた可能性が高い。
また、こうして見ると車内パーツの色は自由席・指定席ともに変わっていないことがわかる。自由席車の座席の色が微妙なのは相変わらずということだ。

左が今回製品、右が従来製品。
塗装は色味・光沢とも大きくは変わらないが、ライトグレーと黄色帯は従来製品が明るめ、窓回りのダークグレーは今回製品が明るめに感じる。わずかな差でしかないけど、従来製品はコントラストが強くメリハリがあり、今回製品は落ち着いた雰囲気になったといえそうだ。
こうして見ると、ロゴの大きさ、行先表示機の表現に差があることが改めてわかるかと思う。

今回製品は屋根上の号車番号は印刷済みとなる。第1・2世代ではインレタ表現だった。
(2022/7/4修正)読者様のコメントにより、第2世代はインレタ表現とのことでしたので修正しました。
(ゆのまち様、情報提供ありがとうございます)
屋根上は第1世代の頃から3号車・6号車の大型ジョイントを表現しているなど再現度が高く、それらは今回製品にも引き継がれている。

奥が今回製品、手前が従来製品。
前述のとおり屋根上はパンタ周辺を含めて従来製品から変わっていないのだが、パンタカバーの色は結構異なっている。従来製品はコントラストになっていて模型的な見栄えはするもの、実車に近いのはボディ塗装と差がない今回製品の方である。

どちらも従来製品となるが、筆者の所持品は2号車と7号車(手前)で色味が異なる。といっても元からこうだったわけではなく(同一個体で撮影したメインサイトのアーカイブではこんな差はない)、7・8号車はリビングで飾っていたのでカバーが紫外線で黄変したのだろう。ボディはまったく影響を受けていないのは塗装されているからであり、逆に言えばパンタカバーは無塗装ということである。
今回製品はボディと同色になったが、無塗装なのか塗装されているのかはたして…たぶん無塗装だと思うが。


上が今回製品、下が従来製品。
今回製品ではようやくヘッドライトが電球色LEDになった。従来製品は(たぶん第2世代も)黄色LEDだったので、ようやく面目を保った格好だ。光量も十分、変な光漏れも一切ない。
ちなみに、パーツを共用しているであろうC編成は最初期製品が黄色LED、後に発売された限定品(「さよならセット」「AMBITIOUS JAPAN!」)は電球色LEDという組み合わせである。
●総評
基本的には従来製品と同じ=メインサイトで書き尽くしているのであまり書くところはなく、このところのN700S、300系のレビューと比べると、久々にライトなレビューに落ち着いた。
前述した通り、筆者が今回「買い替え」にいたったのは行先表示機の修正で、それを行ったメーカーに感服したというのが大きい。
此方も買わねば…無作法というもの…
ということだ。
唯一ノーズ横のパーティングラインには不満があるところで、ここさえ修正されていたら「今回製品はE編成模型の決定版」とまで書くつもりだった。つまり、今回製品は残念ながら「決定版」にはなれなかったと思っている。それでも、行先表示機以外にもヘッドライトなど良くなったところはいくつかあり、まあ第1世代は仕様が古すぎるとしても、買い替えた価値は十分にあったと思っている。
もともと第1世代の頃からよくできた製品であり、さらに改良された今回製品は今からE編成の模型が欲しいという人にも問題なく勧められる製品だと思う。8両編成というのも比較的手軽でよい。
「ひかりレールスター」としての700系E編成はそろろろ終わりが見えつつあるが「こだま」としてならまだまだ走ると思うので、興味があればこれを機に自分のラインナップに加えるのも悪くないと思う。