トミックス E3系1000番台新塗装レビュー
2019年5月、トミックスよりE3系1000番台の新塗装が発売された。
●98669 JR E3-1000系山形新幹線(つばさ・新塗装)セット 22,400円

山形新幹線の新庄延伸に伴い、すでに秋田新幹線「こまち」として活躍していたE3系を山形新幹線向けに仕様変更して導入したのがE3系1000番台である。延伸開業した1999年にL51・52編成、2005年にL53編成が増備された。山形新幹線の車両としてはあくまでも「純増」であり、既存の400系の置き換えは目的としていない。
L51・52編成は「こまち」用でいえばR17編成以前の「前期型」と同期であるため、それらに続くように新塗装化もされることなく廃車となったが、L53編成はR18編成以降の「後期型」であり車歴も若いことから新塗装化されて現在も活躍中である。L51・52編成の代替車両については、E6系導入により余剰が発生した「こまち」用のR18編成以降の一部編成を山形新幹線向けに改造して充当することになった。
R編成は6両編成であるのに対しL編成は7両編成となるため、いわゆる「ニコイチ」で転用改造することになった。具体的にはR23~26編成のうち、R24編成とR26編成の14号車を抜き、R25編成とR23編成の12・13号車を挿入し7両編成化したうえで、既存のL編成(L53編成、L61~72編成)と設備等を揃える改造を行い、R24+R25編成がL54編成、R26+R23編成がL55編成となった。番台区分は1000番台としてL53編成から連番になっている。
この手の「他の編成から車両を持ってきて改造・改番」というのは0系・200系にはよく見られたが、最近の新幹線車両では非常に珍しいケースといえ、基本的な見た目はL53編成と同じながら、改造転用車らしく一部に「こまち」時代の面影が残っていたりもする。なお、時期的にL54・55編成は当初より新塗装で登場しており、1000番台で新旧両方の塗装を纏ったのはL53編成だけということになる。
さて、2000番台の新塗装はカトー・トミックスともにすでに発売されているが、今回紹介するのは「1000番台の」新塗装の製品である。前述のとおり相当するのはL53編成と改造転用車のL54・55編成となるが、発売発表時から公式にはどちらになるかは言及がなく、発売日まで待たなければならなかった。筆者は既存の1000番台製品を塗り替えただけのL53編成になると予想していたが、14号車のボディを12号車のボディに入れ替えるだけで簡単に再現できたせいか、実際に発売されたのはL54・55編成だった。
今回製品がL53編成だったらスルーするつもりだったが、新たなバリエーションとなるL54・55編成ではそうはいかない。発売当日に確認後、そのまま購入することになった。そして、レビュー記事もこうして書くことになったと・・・
毎度のことだけども、「基本的に従来製品と同じ」ということはメインサイトのレビューに大部分書いてあるということで、そちらも参考にしていただけると。今回も主要部分だけの紹介なので、前置きの割には小規模な記事にとどまっていることはご容赦を。

2000番台の新塗装は基本+増結セットだったが、今回は7両1セットのシンプルな商品構成となっている。付属インレタはプロトタイプ通りL54・55編成が収録され、L53編成は含まれていない。

左が2000番台、右が今回製品の1000番台。正面から見た差異はヘッドライトの形状くらいで、その他基本設計は既存のトミックスE3系そのものである。塗装についても色合い・塗り分け位置・光沢ともに2000番台から変化はない。


11号車後位を見る。上が1000番台(今回製品)、下が2000番台。
メインサイトでも書いたが、2000番台では客用扉左側にある車掌室窓の位置が修正されているが、今回製品は従来の0・1000番台のボディをそのまま使用しているため車掌室窓が少々客用扉寄りで、グリーン車マークの周辺がやや窮屈な感じになっている。客用扉右側の多目的室の窓位置にも差異がみられるが、これは実車どおりで2000番台では若干車体中央寄りになっている。
少々見づらいが、床下のダクト形状にも差が見られる。トミックスのE3系は発売時期的に前期型の小型のものになっており、そのボディを流用している以上、後期型がベースのL54・55編成においては実車と異なっている。一方、2000番台についてはボディが新規制作されているため実車どおりになっている。
ロゴマークについては印刷クオリティはそのまだが、1000番台では若干上方に印刷されている。個体差かと思ったら11号車山側、16号車両側についても上方寄りになっているのでどういうことかと調べてみると・・・


実車も1000番台(上)はロゴマークの位置が高いのだった。したがって、忠実に再現した結果の差異と考えてよさそうだ。画角が違うのであれだけども、前述の多目的室窓の位置についても差異がわかる。


上が1000番台。今回製品のプロトタイプであるL54・55編成の特徴として、別の編成の12号車(身障者対応車)を14号車として持ってきた関係で客用扉が広くなっている。模型でも12号車のボディを14号車にも使うことで再現している。一方、下の2000番台では通常の幅になっていることがわかる。転用改造にあたり14号車は身障者対応座席も交換されており、いわば「扉の幅が広いだけの普通車」になったので身障者対応マークもついていない。身障者対応は従来通り12号車が受け持っている。
しかし、L54・55編成のもう一つの外観上の特徴、14号車のパンタカバーは「つばさ」仕様に改造されたが12号車は「こまち」仕様のまま、については再現されていない。トミックスのE3系は過去作すべてのパンタカバーが「つばさ」仕様なので、そもそも「こまち」製品の時点で実車と異なっており、今回製品の12号車もやはり「つばさ」仕様になってしまっている。現美新幹線もそうだったし、仮に「とれいゆ」が発売されても同じ結果になるだろう。


自由席となる16・17号車については(写真は17号車)、1000番台(上)は2000番台(下)よりも客用窓の数が1つ分多い。1000番台は自由席車のシートピッチが狭く、指定席車よりも座席が1列多いからである。一方、2000番台は普通車全車でシートピッチが統一されている。
●総評
基本的には従来製品の流用&塗装変更程度なので、製品のクオリティ自体も従来のE3系製品と変わらない。パンタカバーは従来通り「つばさ」仕様のまま、ダクト形状も前期型のままというのは実車と異なっているけども、ボディを含めたパーツの新規制作が一切ない(するはずもない)とすれば「想定内の実車との違い」ではある。あとは、そこを許容できるかどうかかな。
とはいえ、あえてL53編成ではなくL54・55編成に仕立てたのは個人的には面白いと思った。ボディを入れ替えるだけで再現できるという、メーカーにとってお手軽な動機なだけだったのかもしれないが、E3系の新たなバリエーションが増えたことは歓迎したい。従来製品と同様に併結運転もできるので、同社のE2系1000番台と組み合わせて楽しみたい。
●98669 JR E3-1000系山形新幹線(つばさ・新塗装)セット 22,400円

山形新幹線の新庄延伸に伴い、すでに秋田新幹線「こまち」として活躍していたE3系を山形新幹線向けに仕様変更して導入したのがE3系1000番台である。延伸開業した1999年にL51・52編成、2005年にL53編成が増備された。山形新幹線の車両としてはあくまでも「純増」であり、既存の400系の置き換えは目的としていない。
L51・52編成は「こまち」用でいえばR17編成以前の「前期型」と同期であるため、それらに続くように新塗装化もされることなく廃車となったが、L53編成はR18編成以降の「後期型」であり車歴も若いことから新塗装化されて現在も活躍中である。L51・52編成の代替車両については、E6系導入により余剰が発生した「こまち」用のR18編成以降の一部編成を山形新幹線向けに改造して充当することになった。
R編成は6両編成であるのに対しL編成は7両編成となるため、いわゆる「ニコイチ」で転用改造することになった。具体的にはR23~26編成のうち、R24編成とR26編成の14号車を抜き、R25編成とR23編成の12・13号車を挿入し7両編成化したうえで、既存のL編成(L53編成、L61~72編成)と設備等を揃える改造を行い、R24+R25編成がL54編成、R26+R23編成がL55編成となった。番台区分は1000番台としてL53編成から連番になっている。
この手の「他の編成から車両を持ってきて改造・改番」というのは0系・200系にはよく見られたが、最近の新幹線車両では非常に珍しいケースといえ、基本的な見た目はL53編成と同じながら、改造転用車らしく一部に「こまち」時代の面影が残っていたりもする。なお、時期的にL54・55編成は当初より新塗装で登場しており、1000番台で新旧両方の塗装を纏ったのはL53編成だけということになる。
さて、2000番台の新塗装はカトー・トミックスともにすでに発売されているが、今回紹介するのは「1000番台の」新塗装の製品である。前述のとおり相当するのはL53編成と改造転用車のL54・55編成となるが、発売発表時から公式にはどちらになるかは言及がなく、発売日まで待たなければならなかった。筆者は既存の1000番台製品を塗り替えただけのL53編成になると予想していたが、14号車のボディを12号車のボディに入れ替えるだけで簡単に再現できたせいか、実際に発売されたのはL54・55編成だった。
今回製品がL53編成だったらスルーするつもりだったが、新たなバリエーションとなるL54・55編成ではそうはいかない。発売当日に確認後、そのまま購入することになった。そして、レビュー記事もこうして書くことになったと・・・
毎度のことだけども、「基本的に従来製品と同じ」ということはメインサイトのレビューに大部分書いてあるということで、そちらも参考にしていただけると。今回も主要部分だけの紹介なので、前置きの割には小規模な記事にとどまっていることはご容赦を。

2000番台の新塗装は基本+増結セットだったが、今回は7両1セットのシンプルな商品構成となっている。付属インレタはプロトタイプ通りL54・55編成が収録され、L53編成は含まれていない。

左が2000番台、右が今回製品の1000番台。正面から見た差異はヘッドライトの形状くらいで、その他基本設計は既存のトミックスE3系そのものである。塗装についても色合い・塗り分け位置・光沢ともに2000番台から変化はない。


11号車後位を見る。上が1000番台(今回製品)、下が2000番台。
メインサイトでも書いたが、2000番台では客用扉左側にある車掌室窓の位置が修正されているが、今回製品は従来の0・1000番台のボディをそのまま使用しているため車掌室窓が少々客用扉寄りで、グリーン車マークの周辺がやや窮屈な感じになっている。客用扉右側の多目的室の窓位置にも差異がみられるが、これは実車どおりで2000番台では若干車体中央寄りになっている。
少々見づらいが、床下のダクト形状にも差が見られる。トミックスのE3系は発売時期的に前期型の小型のものになっており、そのボディを流用している以上、後期型がベースのL54・55編成においては実車と異なっている。一方、2000番台についてはボディが新規制作されているため実車どおりになっている。
ロゴマークについては印刷クオリティはそのまだが、1000番台では若干上方に印刷されている。個体差かと思ったら11号車山側、16号車両側についても上方寄りになっているのでどういうことかと調べてみると・・・


実車も1000番台(上)はロゴマークの位置が高いのだった。したがって、忠実に再現した結果の差異と考えてよさそうだ。画角が違うのであれだけども、前述の多目的室窓の位置についても差異がわかる。


上が1000番台。今回製品のプロトタイプであるL54・55編成の特徴として、別の編成の12号車(身障者対応車)を14号車として持ってきた関係で客用扉が広くなっている。模型でも12号車のボディを14号車にも使うことで再現している。一方、下の2000番台では通常の幅になっていることがわかる。転用改造にあたり14号車は身障者対応座席も交換されており、いわば「扉の幅が広いだけの普通車」になったので身障者対応マークもついていない。身障者対応は従来通り12号車が受け持っている。
しかし、L54・55編成のもう一つの外観上の特徴、14号車のパンタカバーは「つばさ」仕様に改造されたが12号車は「こまち」仕様のまま、については再現されていない。トミックスのE3系は過去作すべてのパンタカバーが「つばさ」仕様なので、そもそも「こまち」製品の時点で実車と異なっており、今回製品の12号車もやはり「つばさ」仕様になってしまっている。現美新幹線もそうだったし、仮に「とれいゆ」が発売されても同じ結果になるだろう。


自由席となる16・17号車については(写真は17号車)、1000番台(上)は2000番台(下)よりも客用窓の数が1つ分多い。1000番台は自由席車のシートピッチが狭く、指定席車よりも座席が1列多いからである。一方、2000番台は普通車全車でシートピッチが統一されている。
●総評
基本的には従来製品の流用&塗装変更程度なので、製品のクオリティ自体も従来のE3系製品と変わらない。パンタカバーは従来通り「つばさ」仕様のまま、ダクト形状も前期型のままというのは実車と異なっているけども、ボディを含めたパーツの新規制作が一切ない(するはずもない)とすれば「想定内の実車との違い」ではある。あとは、そこを許容できるかどうかかな。
とはいえ、あえてL53編成ではなくL54・55編成に仕立てたのは個人的には面白いと思った。ボディを入れ替えるだけで再現できるという、メーカーにとってお手軽な動機なだけだったのかもしれないが、E3系の新たなバリエーションが増えたことは歓迎したい。従来製品と同様に併結運転もできるので、同社のE2系1000番台と組み合わせて楽しみたい。