トミックス300系後期型登場時 レビュー(マイクロエースとちょい比較あり)
2022年5月、トミックスより300系後期型・登場時が発売された。
・98775 JR 300-0系東海道・山陽新幹線(後期型・登場時)基本セット 24,200円
・98776 JR 300-0系東海道・山陽新幹線(後期型・登場時)増結セット 23,210円
(税込み表示)

300系が「のぞみ」でデビューして間もない頃の、下枠交差型パンタグラフが3基あったころの仕様。模型では久々のお目見えとなった。
300系の模型は実車デビューからほどない1992年、トミックスから初めて発売された。時期的に下枠交差型パンタが3基、客用扉がプラグドアのJ編成(JR東海)がプロトタイプだったが、当時の時代背景的に全形式が模型化されていないなど大らかな製品であり、その後はトミックス新幹線製品の中でも長らく放置されていた。
しかし、実車の引退が見えてきた2010年。基本設計は同じながら全形式を模型化して形式代用を解消の上、シングルアームパンタグラフに交換後の姿で大幅にリニューアル。後にF編成(JR西日本)やさよなら運転仕様などもラインナップされ、さらに客用扉が引き戸になった後期型に移行(プラグドア製品は生産終了扱い)、改めてJ編成・F編成ともにラインナップされることになった。
また、やはり実車の引退を受けてか2012年にマイクロエースも300系に参入。当時プラグドアだったトミックス製品に対して引き戸にして差別化、J編成・F編成をラインナップした。
これまで寂しかった300系の模型が実車の引退間近になって急にラインナップを拡大することになったわけだけど、いずれもシングルアームパンタに交換された姿であり、下枠交差型パンタ時代の製品はトミックス最初期製品のみ。前述のとおり現在の目で見ればいろいろ「物足りない」製品が中古市場にあるだけの状況だった。シングルアームパンタ製品の屋根を入れ替えて、オリジナルよりもマシな下枠交差型パンタ仕様を作る猛者もいたが、パーツの調達からして誰もが簡単にできるものではなかった。
しかし2021年、ついに(ようやく)「まともな」下枠交差型パンタの製品が登場。マイクロエースから2パンタに削減された時代のF8編成が発売された。これまでトミックス初期製品に抱かれていた不満に応えるかのような製品だったが、その後本家(?)トミックスからも下枠交差型パンタ製品が発表・発売。マイクロとは異なり登場時の3パンタ仕様となったが、ここへきて下枠交差型パンタ製品がテコ入れされる結果となった。
なお、シングルアームパンタ仕様になるがこれまでずっと300系をスルーしてきたカトーからも発売予告がなされており、「のぞみ」30周年となった2022年はその初代車両の模型がにわかに盛り上がっている状況だ。
さて、今回レビューするのはトミックス久々(すぎる)の下枠交差型パンタ仕様の製品、「後期型登場時」である。これまでの同社の300系は基本的には最初期製品がベースで、シングルアームパンタ製品以降は形式代用の解消や各種近代化が図られてきたが、今回製品はその流れに乗りつつ原点回帰したような感じである。なお、初期製品は客用扉がプラグドアの編成だったが、今回製品は引き戸になっているため製品名に「後期型」が付けられている。
また、予算の都合で基本セットのみしか押さえられなかったが(だって高いんだもの…)、マイクロエースの下枠交差型パンタ製品と一部比較してみた。
・A7358 300系新幹線 F8編成 パンタグラフ削減後 基本8両セット 37,510円
・A7359 300系新幹線 F8編成 パンタグラフ削減後 増結8両セット 36,190円
(税込み表示)
300系のトミックスvsマイクロエース比較レビューはメインサイトでやっていること、今回の両社の製品はベースはそれらと同じであることから、簡易かつ観点が偏った(屋根上ばかりとか)レビューになっている点はご了承いただきたい。また、マイクロは増結セットが未購入なので、それにかかわる箇所も比較的できていない。また、今回のトミックスは付属パーツを一切付けていない状態でレビューしているので重ねてご了承いただきたく。
詳細なレビューについてはメインサイトの比較レビュー(トミックス初期製品のレビューもあり)も参考にされたい。

基本と増結セットで16両フル編成になるシンプルなセット構成。もちろん、トミックスなので2つのブックケースにわたって号車順に収納できる。ただし、基本セットの8号車位置(画像左側の一番下)の先頭形状ウレタンを16号車位置(画像右側の一番下)に移動する必要がある。
マイクロも、基本+増結というセット構成でフル編成にはなるものの、ホビーサーチさんの画像を見る限り号車順の収納は対応してなさそうだ。0系1000番台(NH49編成のやつ)では対応していたのに対応がちぐはぐに感じる。期待する方が間違ってるのかもしれないが。
トミックスの動力車は7・11号車の2両、いずれも業務用室がある車両に設定されている。シングルアームパンタ製品は6・12号車のパンタ付き車両に設定されていたので、今回は動力車が若干編成中央に寄った(走行特性に大きな差はないと思うけど)。
マイクロの動力車は7・10号車でトミックスよりもさらに中央に寄っているが、これは従来製品(シングルアームパンタ)も同じだ。

トミックスの付属品はインレタとケーブルヘッドに付けるガイシパーツ。パーツは右が増結セット用で左の基本セット用より1つランナーの数が多い。インレタは基本セットのみの付属で、収録編成はJ16・19・24・29編成。
今回製品のプロトタイプは引き戸で3パンタなのでJ16~29編成が該当し、J15編成以前はプラグドア、J30編成以降は当初から2パンタなので適合しない。なお、シングルアームパンタ製品にも引き戸の「後期型」製品が存在するが、そちらの収録編成はJ26・35・47・51編成と幅広い。
マイクロのプロトタイプはF8編成固定で、今のところJ編成の下枠交差型パンタはラインナップにない。
車番や編成番号以外では禁煙マーク等も収録されているが、300系の禁煙車の変遷は以下の通り(メインサイトから再掲)。
①デビュー時~1996年3月 1・2・7・8・12・13・14号車が禁煙車
②1996年3月~2001年10月 1・2・5・6・7・8・9・12・13・14号車が禁煙車(5・6・9号車追加)
③2001年10月~2006年3月 1・2・5・6・7・8・9・11・12・13・14号車が禁煙車(11号車追加)
④2006年3月~2011年3月 1・2・4・5・6・7・8・9・11・12・13・14号車が禁煙車(4号車追加)
⑤2011年3月~引退時(2012年3月) 1・2・3・4・5・6・7・8・9・11・12・13・14号車が禁煙車(3号車追加)
マニュアルでは1994年頃がサンプルとして記載されており最初期の①が該当する。この時は禁煙車の方が少なかったのだが②以降は逆転している。
資料がなくて3パンタから2パンタに削減された時期が詳しくはわからないのだが、当初から2パンタになったJ30編成が1995年、最終増備J61編成が1998年登場なので、その間にJ29編成以前の2パンタ化が完了していたと思われる。したがって、3パンタである今回製品に適合できるのは①②ということになる。
マイクロは禁煙マーク印刷済みで、ホビーサーチさんの画像では11号車が禁煙ではない一方で5・6号車は禁煙なので、②1996年3月~2001年10月が適用されている。
今回は屋根上の号車番号が含まれていないが、おそらく当時は貼られていなかったためだと思われる。
※2022/6/14追記---------------------------------------------------
どうやら、屋根がグレーの時代でも屋根上の号車番号は貼られていたようだ。下記のパンタ周辺の件でも情報をいただいた、「趣味の鉄道模型ホームページ」の管理人様より、号車番号が確認できる写真をご提供いただいたので確定情報だ。ソースは「とれいん1994-10 No.238」とのことで、当時の300系の屋根上について相当詳しく記載されているようなので、興味があれば探してみるといいかもしれない(筆者も欲しくなった)。新幹線の詳細も載せることあるのね、あの雑誌…
今回製品に号車番号がないのはコストの問題で省略したか、メーカーも当時は貼られていないと思ったかのどちらかだろう。
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左が今回製品、右がトミックスの旧製品(最初期製品)。
シングルアームパンタ製品を含めてトミックスの300系は最初期製品から設計が変わっておらず、ボディや前面窓は同じパーツを使用している。したがって並べてみても造形は全く同じである。30年前の設計とはいえ、造形に関しては現在でも余裕で通用するレベルだと思う。
今回製品は若干白が強いが、旧製品は経年があるかもしれない。あと、前面窓ガラスは今回製品はスモーク入りになっているのでボディ断面の白が目立ちにくくなっている。これは「さよならセット」から採用されたものだ。

左が今回製品、右がマイクロ。
トミックスより設計は新しいが、こちらもボディなど基本的な部分は旧製品(シングルアーム仕様)を引き継いでいる。しがたって、モールドの濃さやノーズ部分の造形、前面窓上の手すり有無などはメインサイトの比較レビューで紹介した内容と同じだ。


上が今回製品、下がマイクロ。
トミックスは旧製品となんら変わるところはないが、マイクロはヘッドライト周りの仕様が変更されており(後述)4灯が再現されているかのように見える。実車はもっと奥まった位置にあるのだけど、かなりリッチな雰囲気だ。
マイクロ旧製品ではヘッドライト表面がやや奥まり気味だったが、今回は逆に飛び出し気味になっているのはヘッドライトプリズムが変わった証拠。ここまで拡大しないとわからないレベルなので普通に見る分には気にならないだろう。
また、マイクロ旧製品は塗装の光沢がかなり強かったが、今回は標準的な光沢である。


トミックスは相変わらず床下のLCXアンテナがない…16号車の床下と共用しているからだが、そろそろ何とかしてほしいと思う。設計が新しいマイクロは当然再現されている。



1号車後位で上から今回製品、マイクロ、トミックス旧製品。
今回製品vsマイクロではモールドや印刷表記の差はシングルアーム製品のそれと同じである。トミックスは車番や禁煙マークをインレタで表現するが、マイクロは印刷済み。またマイクロはJR西日本車なのでジャッキ用の穴が印刷表現されている。
今回製品vsトミックス旧製品ではボディが同じなので基本的なモールドは同じだが、客用扉が旧製品のプラグドアから引き戸になっている点が異なる。金型改修によるものらしく、シングルアームパンタ製品を含めてプラグドアの製品は生産終了となっている。
また、トミックス旧製品は印刷表記が全くない(インレタすらない)。写真は省略したが、初回製品では省略されていた車端の窓ガラスは今回製品では当然入っている。

奥が今回製品、手前がトミックス旧製品。
下枠交差型パンタ時代の300系は屋根上がグレーで塗装されていたのが特徴で、旧製品は時代的に当然グレーで表現されていた。白で表現していたシングルアームパンタ製品から久々のグレー屋根になった今回製品だが、色味は旧製品とほぼ同じようだ。ボディと同様、屋根板パーツも旧製品のそれと同じだ。

奥が今回製品、手前がマイクロ。
シングルアームパンタ製品から始まったマイクロは今回初のグレー屋根で、トミックスよりもやや明るく、ウォームな感じのグレーである。また滑り止めはそれよりも濃いグレーで表現。白地だった旧製品よりも落ち着いていて、それでいてメリハリもある印象。


1号車屋根上、上が今回製品、下がマイクロ。
1号車の屋根板(注:マイクロは先頭車に限りボディ一体型である)はどちらも旧製品のそれと同じで、トミックスは滑り止めや車端のハッチがモールドなのに対し、マイクロは塗装・印刷で表現している。写真左側の無線アンテナはモールドに大きな違いはないものの、マイクロは塗装がやや厚ぼったく感じる。

今回製品はほとんど旧製品を流用(屋根上は最初期製品、ボディはシングルアームパンタ製品)しているのだけど、3・15号車の屋根板は今回新規制作されたものである。写真左が3号車、右が15号車でどちらも博多寄りになるが、このような高圧線終端処理が実装されたことでようやく先頭車直後のケーブルヘッド途切れが解消された。
初回がシングルアームパンタだったマイクロは、屋根上になにもない2号車以外の中間車すべての屋根上を新規制作しているはずである。3・15号車が増結セットなので残念ながら今回は比較できなかったが、トミックス同様よろしくやってる…のだと思う。


300系の下枠交差型パンタ時代はパンタ部以外はすべて「傾斜型ケーブルヘッド」で接続していた。700系以降は一部を除いて直ジョイントになったし、300系も後にそうなった。比較的思想が近そうなE2系初期型は高圧線が屋根下に潜った。各連結部に小ぶりな傾斜型ケーブルヘッドがずらりと並ぶ姿は300系初期の特徴でもあった。
左がマイクロ、右が今回製品(ポジション入れ替わってしまった)となるが、ケーブルヘッドの大きさ自体はほぼ同じながらトミックスはやや丸みを帯びた形状だ。実車調査はもうできないので(筆者が新幹線趣味に入った頃には下枠交差型パンタは風前の灯だった)どちらが実車に近いかは判断しかねるが、どちらも特に問題なさそうだとは思う。なお、トミックスは付属のガイシパーツを取り付ける必要がある。
ガイシ下にある屋根の切り欠きはトミックスは浅くマイクロは深いが、これは後者の方が実車に近い。グレーの屋根板パーツを見ればわかるが、トミックスは屋根板が薄くて切り欠きを深くできていない。

冒頭で述べたがここもガイシパーツは取り付けてないのでご了承のほど。すべて今回製品で上から5・6号車、8・9号車、11・12号車のパンタカバーの組み合わせ。左が博多寄り。
パンタカバーのパーツ自体は最初期製品の段階で5・6号車、11・12号車の組み合わせは用意されており、8・9号車のはそれを組み合わせた形となる。最初期製品で3パンタをやる場合はこのパーツ調達が大変だったが、ようやくそんな苦労から解放されることに。
3パンタ時代の300系は進行方向に対して後方の2基を使用し前方の1基は畳んでいた(2パンタ化以降は2基常用)。営業運転中にパンタの折り畳み運用しているのは他にはE5系・E6系くらいである。今回製品はパンタが可動式になったんだし、フル編成で走らせるならその辺こだわりたい。


奥が今回製品、手前がマイクロ。5・6号車間のパンタ周辺を比較。トミックスは3パンタ時代、マイクロは2パンタ時代になるが、こうして見るとかなり異なっている。
3パンタ時代は角度が寝ている「船底型」と角度が立っている「平型」の2種類があり(名前は筆者が勝手に付けた)、上の写真で言えばトミックスの5号車(左)が「船底型」・6号車(右)が「平型」になる。編成の外側に向いている端が「船底型」で、中間はすべて「平型」という組み合わせになっていた。
これが2パンタ時代(当初から/改造されて問わず)になると「船底型」が廃止され、編成の外側に向いている端が「平型」、中間は新しい「丸形」を装備することになった。素人目には「丸型」が前面に晒されている方が空気抵抗とか良さそうに感じるが、まあそんな簡単な話ではないのだろう。
トミックスは最初期製品が3パンタ時代だったこともあり、同じく3パンタである今回製品ではパンタカバーはすべて流用で済んでいるが、仮に2パンタ製品をやるとしたら「丸形」を新規制作する必要があるだろう。邪推すれば、なるべく新規制作したくないので3パンタにした可能性はある。
マイクロはシングルアーム製品からスタートだったので屋根板含めてパンタカバーは新規制作が必要であり、その意味では2パンタでも3パンタでもよかったと思うが、今回は2パンタをチョイス。その結果、「丸形」カバーはNゲージでは今回初登場となった。
それにしても、メインサイトでは「平型」で「丸形」の代用しても大きくかけ離れていないみたいなことを書いた気がするが、こうして見ると結構違うんだなと…正直、ちょっと揺らいでいる(汗)。



上から「平型」(今回製品)、「丸形」(マイクロ)、「船底型」(今回製品)。すべてパンタがある側で横から大きさ(長さ)を比較。「丸形」はやや「船底型」寄りの、中間のサイズであることがわかる。
ところで、マイクロはピンボケしてしまった。カメラのモニターでは気付かず、PCに持ってきて気づいたが撮り直しが面倒でそのまま載せたというオチ。まあ、大きさの比較には問題ないということで。


上が今回製品、下がマイクロ。パンタはそれぞれ両社で他形式で使用していたものを流用。トミックスはプラ製、マイクロは金属製という違いがあるが、トミックスは脚のガイシが白いのがリッチな印象だ。しかし、マイクロは2本の車端ガイシ間の高圧線を立体的に表現しているし、屋根板とカバーのグレー違いにメリハリがあり、こっちはこっちでよいところもある。
ん?ガイシの本数が違う?
写真では付けていないが、トミックスは中央にガイシが1本あるだけだ。ガイシ根本の左右から高圧線が来ているような配置だが、マイクロはパンタの真下を通っている。なんだかカバーの形状以上に違いがあるように思える。
筆者の手元にはこれといった資料がなく、どういうことかと困惑していたところ(実車が走っていたら速攻調査撮影なんだけど)、絶妙なタイミングで「趣味の鉄道模型ホームページ」の管理人様からブログにコメントいただいた。引用(一部修正)すると、
さらに別途、上記を裏付ける情報提供もいただけた(それはもう完璧なエビデンスで。Y.Ishii様、本当にありがとうございます!!)。
まとめるとこうなる。
①1次車(J2~5編成) プラグドア+ガイシ1本(高圧母線は車体内で引き込み。上記画像のガイシ左側にあるのが多分それ)
②2次車(J6~15編成) プラグドア+ガイシ2本(高圧母線は車体外で引き込み)
③3次車(J16編成~) 引き戸+ガイシ2本(上に同じ)
※J1編成は試作車なのでここでは置いておく。
トミックスの300系は実車の営業運転開始からほどなく発売されているから、最初期製品が①になったのは辻褄が合う。ただし、今回製品は引き戸+ガイシ1本になってしまったので、その点は実車と異なっている。なお、1次車が2パンタ化された際にガイシも2次車以降の仕様になったかどうかは不明(高圧母線を外に出すのは大変そうなので、筆者はなっていないに1票)。
マイクロはF8編成となるが、F編成の1次車(F1~5編成)、2次車(F6~F9)はそれぞれJ編成の2次車・3次車に相当しているみたいなので、②を採用していて実車通りである。

右が今回製品、左がマイクロ。パンタ車と対になる側のカバーのガイシ周辺はどちらも同じ意匠だ。パンタが付いているカバーもそうだが、トミックスはカバーと屋根板が一体になっているが、マイクロはカバーのみであることがわかる。

左が今回製品、右がマイクロ。「平型」カバーにあるステップのモールドは大きさ・位置ともに大差ないが、マイクロは上方にある手すりも再現している。
カバーはトミックスは光沢があり、マイクロはザラザラで艶消しという感じだ。

奥が今回製品、手前がマイクロ。8・9号車間の屋根上。
2パンタ化の際にここからパンタが撤去され(J30編成以降は最初からパンタがない)、その跡には9号車側が大型、8号車側が小型というアンバランスなケーブルヘッドに置き換えられた。
マイクロは当然それを再現しているのだが、メインサイトで書いたようにケーブルヘッドの形状がJ30編成以降の当初から2パンタだった編成の形状になっており、全編成が3パンタだったF編成としては厳密には間違っている。旧製品(シングルアーム)の時は同時発売のJ編成との兼ね合いもあってやむを得なかったのかもしれないが、今回は屋根板が新規なので(反対側の車端は直ジョイントかケーブルヘッドかの違いがある)修正してもよかったのでは?と思う。もしくは、J編成の下枠交差型パンタ2基仕様を出す計画があるのか。

奥が今回製品、手前がトミックス最初期製品。11・12号車間の屋根上。マイクロはこの部分が増結セットなので今回は比較できない(といっても5・6号車を反転させた程度である)。
そこで旧製品と比較してみたがパンタカバーのパーツは全く同じものであることがわかると思う。ただし、パンタが固定式か可動式化の違いはあり、前述したとおり3パンタ時代はパンタの折り畳みがあったわけで、その意味でも旧製品はフル編成を想定したものではなかったのだろう。
旧製品は可動幌の黄ばみもさることながら、パンタカバーもまあまあ黄ばんで茶色っぽくなってる。まあ、未塗装プラはグレーでも黄ばむので。うちのスーパーファミコンもそうだったから。押し入れの奥に放り込んで以来20年くらい見てない気がするけど、今見たらさらに黄ばんでるんだろうか…

左が今回製品、右がマイクロ。連結方式はトミックスがフック・U字型通電カプラー、マイクロが伸縮式アーノルドカプラーで、前者は同社の標準カプラー、後者は旧製品と同じカプラーが採用されている。それにしても、今回の撮影で連結もさせてみたがアーノルドカプラーは見た目はともかく本当に扱いやすい。トミックスが使い勝手に難があるだけになおさらだ。
新幹線は編成組んでナンボ、実車でも妻面はほとんど見えないからトミックスのようでも全く問題ないが、マイクロの作りこまれた妻面、特に写真にあるようなパンタがある妻面はシングルアームの時よりも重厚感があってこれはこれで見ものである。


上が今回製品、下がマイクロ。
トミックスのヘッドライト構造は従来製品と全く変わっておらず、4灯表現はそもそもない。ただヘッド・テールともに光量はかなり多いので、走行中はかなり目立つと思う。
マイクロの従来製品は4灯表現を実装していたものの正直そうは見えず光量も不足気味だったが、今回は内部構造が変更されており(後述)、光量に関してはかなり改善された。電球色LEDだと思うがトミックスよりも黄味が強いようだ。
ただ、4灯表現についてはやっぱり微妙。上の方で消灯状態で4灯っぽく見える写真があったが、点灯させると内側のライトがすっぽり抜けるような見た目に。やはり中実プリズムでは歪んでしまうのか。




上2つが今回製品、下2つがマイクロ。なんか傾いてしまった(汗)。
トミックスはとにかく光量が多く、テールライトすらキラキラしてしまっているくらいである(肉眼で見る分には違和感ない)。マイクロは従来製品よりも明らかに光量が増えているが(メインサイト参照)、正面から見てもやはり4灯には見えない。また、若干ではあるが写真左側に光量が偏っているようだ。

マイクロのボディを外して点灯させてみる。従来製品はコクピットパーツ下に小さな4つのプリズムが覗いていたが、そのせいか光量が不足していたのだろうか、今回はここの4灯はやめてプリズムを大型化、光量を増やす方向に変更されていることがわかる。

マイクロのボディ側。ヘッドライトのプリズムが変更されており、ここで4灯表現しようとしているのがわかる。結果は以下略だが。プリズム形状の違いはメインサイトを参考にされたい。

トミックスは光量が多くボディと床下に隙間があることから光漏れがある。下のレールが光っているのが特に顕著だし、写真左上にも漏れが少し見える。また、暗い環境だとボディの頬の部分も透けてしまうことがあり、このあたりは設計の古さがもろに出てしまうようだ。もっとも、マイクロにも光漏れが若干あるにはある。
●総評
どちらも従来製品をベースに、下枠交差型パンタの仕様に上手くまとめたという印象だった。
トミックスはもともと下枠交差型パンタの製品があった分マイクロよりはハードルは低かったはずで、実際、一部屋根上の新規制作だけで済んでいる。しかしながら、相変わらずLCXアンテナ無しの床下、ヘッドライトの表現など設計の古さが目立つことも否めなかった。
それと、今回製品は「登場時」ということもあってプラグドアのボディを捨てた(金型を引き戸に改修してしまった)のはもったいないと思った。実際、パンタ周辺の意匠が引き戸の編成と合っていない弊害が出てしまっているし、それはそれとしてもマイクロ、最近発売発表されたカトーとの差別化という意味ではアイデンティティになっていたかと思う。プラグドア編成は少数派だし、「さよならセット」のためにやむを得なかったのは理解するが…
まあ、基本的な造形は現在でも見劣りしないし、これまで最初期製品でどうにかするしかなかった同社の下枠交差型パンタ仕様が相当まともになったことは確かだ。そして、現時点では3パンタ仕様はこれだけなので存在価値も十分ある。
いずれパンタカバーを新規制作して2パンタ仕様も発売するのだろうか。その際にはLCXアンテナを再現した床下の見直しも(願望としては従来製品へのフォローも含め)期待したい。
マイクロは当初から下枠交差型パンタ仕様を想定していたのか屋根板を別パーツにしており(トミックスも別パーツだが屋根上の色分けのためだ。当時実車のシングルアームはない)、トミックスほどではないにせよそれほど苦労せずに実現できたようだ。しかも2パンタでNゲージ300系では初の製品化である。初登場のパンタカバーをはじめパンタ周辺のディテールはなかなかのものだ。
改善されたとはいえ中途半端なヘッドライト、濃いめなモールド、広い連結部、従来製品のような精度が甘い品質の悪さはあるものの、現時点ではこちらにも存在価値は大いにある。ただ、何度か言及しているがやはり価格がネックだろう。フル編成なら定価ベースでトミックスより2万5000円以上高く、この差額でトミックスのどちらかのセットに匹敵するほど。情けないが、筆者も今回は基本セットを買うのがやっとだった。
今回は両社プロトタイプが違うので(トミックスはJ編成3パンタ、マイクロはF編成2パンタ)、価格が気になるが両方揃えてもかぶることはないし、従来製品をベースにしているということは一定のクオリティが保証されている(一長一短も引き継いでいる)ので、どちらかだけ買っても特に後悔することはないだろう。
さて、冒頭で述べた通りとうとうカトーも300系に参入してきた。引退のとき以来、久々にNゲージ300系が盛り上がることになった。300系は編成(J or F)、ドア形状、パンタ(下枠交差型は数も)の掛け合わせでかなりラインナップが増えるので、メーカーが増えるのはこの点でも歓迎できる。
ただ、現状引き戸仕様を3社でやっているのは正直食傷気味だし退屈だと思う。どうせラインナップが増えるなら、たまにはプラグドアの製品も見てみたい。買う方は大変だが・・・(苦笑)
●【読者様ご提供】マイクロ300系のヘッドライトを小加工(2022/6/12追記)
4灯化表現がイマイチなマイクロ300系だが、今回紹介した下枠交差型パンタ製品についてはヘッドライトプリズムに小加工することで「いい感じに」4灯に近づけることができるようだ。

当ブログ読者様のデテロニー様から加工撮影の上お知らせいただいたもので、ご提供いただいた画像が「お見事!」と思い、今回紹介させていただくこととなった。
デテロニー様、画像公開のご許可、誠にありがとうございます。

加工内容としては、車体側のプリズム内側に写真のように枠部分に色差しするというもの。



結果はご覧の通りだ。ただ、ご提供者様によると4灯に見える角度は限界があるようで、元のプリズムの歪みがある以上そこは仕方がないかもしれない。とはいえ、筆者は純正に比べたら相当マシになっていると思う。
なお、言うまでもないことだが、この加工(に限らないけど)をされる場合は絶対に自己責任でやること。ただでさえ高額、入手困難品である。失敗した場合パーツだけの入手はできない。
小加工とはいえかなり細かい作業ができる腕があること、失敗の覚悟ができていること、その責を自分で負うことができる者だけがやっていい作業だ。そうでない者は見ているだけが無難だ。ご提供者様はもとより、筆者も一切の責任は負わないのでご了承のほど。
・98775 JR 300-0系東海道・山陽新幹線(後期型・登場時)基本セット 24,200円
・98776 JR 300-0系東海道・山陽新幹線(後期型・登場時)増結セット 23,210円
(税込み表示)

300系が「のぞみ」でデビューして間もない頃の、下枠交差型パンタグラフが3基あったころの仕様。模型では久々のお目見えとなった。
300系の模型は実車デビューからほどない1992年、トミックスから初めて発売された。時期的に下枠交差型パンタが3基、客用扉がプラグドアのJ編成(JR東海)がプロトタイプだったが、当時の時代背景的に全形式が模型化されていないなど大らかな製品であり、その後はトミックス新幹線製品の中でも長らく放置されていた。
しかし、実車の引退が見えてきた2010年。基本設計は同じながら全形式を模型化して形式代用を解消の上、シングルアームパンタグラフに交換後の姿で大幅にリニューアル。後にF編成(JR西日本)やさよなら運転仕様などもラインナップされ、さらに客用扉が引き戸になった後期型に移行(プラグドア製品は生産終了扱い)、改めてJ編成・F編成ともにラインナップされることになった。
また、やはり実車の引退を受けてか2012年にマイクロエースも300系に参入。当時プラグドアだったトミックス製品に対して引き戸にして差別化、J編成・F編成をラインナップした。
これまで寂しかった300系の模型が実車の引退間近になって急にラインナップを拡大することになったわけだけど、いずれもシングルアームパンタに交換された姿であり、下枠交差型パンタ時代の製品はトミックス最初期製品のみ。前述のとおり現在の目で見ればいろいろ「物足りない」製品が中古市場にあるだけの状況だった。シングルアームパンタ製品の屋根を入れ替えて、オリジナルよりもマシな下枠交差型パンタ仕様を作る猛者もいたが、パーツの調達からして誰もが簡単にできるものではなかった。
しかし2021年、ついに(ようやく)「まともな」下枠交差型パンタの製品が登場。マイクロエースから2パンタに削減された時代のF8編成が発売された。これまでトミックス初期製品に抱かれていた不満に応えるかのような製品だったが、その後本家(?)トミックスからも下枠交差型パンタ製品が発表・発売。マイクロとは異なり登場時の3パンタ仕様となったが、ここへきて下枠交差型パンタ製品がテコ入れされる結果となった。
なお、シングルアームパンタ仕様になるがこれまでずっと300系をスルーしてきたカトーからも発売予告がなされており、「のぞみ」30周年となった2022年はその初代車両の模型がにわかに盛り上がっている状況だ。
さて、今回レビューするのはトミックス久々(すぎる)の下枠交差型パンタ仕様の製品、「後期型登場時」である。これまでの同社の300系は基本的には最初期製品がベースで、シングルアームパンタ製品以降は形式代用の解消や各種近代化が図られてきたが、今回製品はその流れに乗りつつ原点回帰したような感じである。なお、初期製品は客用扉がプラグドアの編成だったが、今回製品は引き戸になっているため製品名に「後期型」が付けられている。
また、予算の都合で基本セットのみしか押さえられなかったが(だって高いんだもの…)、マイクロエースの下枠交差型パンタ製品と一部比較してみた。
・A7358 300系新幹線 F8編成 パンタグラフ削減後 基本8両セット 37,510円
・A7359 300系新幹線 F8編成 パンタグラフ削減後 増結8両セット 36,190円
(税込み表示)
300系のトミックスvsマイクロエース比較レビューはメインサイトでやっていること、今回の両社の製品はベースはそれらと同じであることから、簡易かつ観点が偏った(屋根上ばかりとか)レビューになっている点はご了承いただきたい。また、マイクロは増結セットが未購入なので、それにかかわる箇所も比較的できていない。また、今回のトミックスは付属パーツを一切付けていない状態でレビューしているので重ねてご了承いただきたく。
詳細なレビューについてはメインサイトの比較レビュー(トミックス初期製品のレビューもあり)も参考にされたい。

基本と増結セットで16両フル編成になるシンプルなセット構成。もちろん、トミックスなので2つのブックケースにわたって号車順に収納できる。ただし、基本セットの8号車位置(画像左側の一番下)の先頭形状ウレタンを16号車位置(画像右側の一番下)に移動する必要がある。
マイクロも、基本+増結というセット構成でフル編成にはなるものの、ホビーサーチさんの画像を見る限り号車順の収納は対応してなさそうだ。0系1000番台(NH49編成のやつ)では対応していたのに対応がちぐはぐに感じる。期待する方が間違ってるのかもしれないが。
トミックスの動力車は7・11号車の2両、いずれも業務用室がある車両に設定されている。シングルアームパンタ製品は6・12号車のパンタ付き車両に設定されていたので、今回は動力車が若干編成中央に寄った(走行特性に大きな差はないと思うけど)。
マイクロの動力車は7・10号車でトミックスよりもさらに中央に寄っているが、これは従来製品(シングルアームパンタ)も同じだ。

トミックスの付属品はインレタとケーブルヘッドに付けるガイシパーツ。パーツは右が増結セット用で左の基本セット用より1つランナーの数が多い。インレタは基本セットのみの付属で、収録編成はJ16・19・24・29編成。
今回製品のプロトタイプは引き戸で3パンタなのでJ16~29編成が該当し、J15編成以前はプラグドア、J30編成以降は当初から2パンタなので適合しない。なお、シングルアームパンタ製品にも引き戸の「後期型」製品が存在するが、そちらの収録編成はJ26・35・47・51編成と幅広い。
マイクロのプロトタイプはF8編成固定で、今のところJ編成の下枠交差型パンタはラインナップにない。
車番や編成番号以外では禁煙マーク等も収録されているが、300系の禁煙車の変遷は以下の通り(メインサイトから再掲)。
①デビュー時~1996年3月 1・2・7・8・12・13・14号車が禁煙車
②1996年3月~2001年10月 1・2・5・6・7・8・9・12・13・14号車が禁煙車(5・6・9号車追加)
③2001年10月~2006年3月 1・2・5・6・7・8・9・11・12・13・14号車が禁煙車(11号車追加)
④2006年3月~2011年3月 1・2・4・5・6・7・8・9・11・12・13・14号車が禁煙車(4号車追加)
⑤2011年3月~引退時(2012年3月) 1・2・3・4・5・6・7・8・9・11・12・13・14号車が禁煙車(3号車追加)
マニュアルでは1994年頃がサンプルとして記載されており最初期の①が該当する。この時は禁煙車の方が少なかったのだが②以降は逆転している。
資料がなくて3パンタから2パンタに削減された時期が詳しくはわからないのだが、当初から2パンタになったJ30編成が1995年、最終増備J61編成が1998年登場なので、その間にJ29編成以前の2パンタ化が完了していたと思われる。したがって、3パンタである今回製品に適合できるのは①②ということになる。
マイクロは禁煙マーク印刷済みで、ホビーサーチさんの画像では11号車が禁煙ではない一方で5・6号車は禁煙なので、②1996年3月~2001年10月が適用されている。
今回は屋根上の号車番号が含まれていないが、
※2022/6/14追記---------------------------------------------------
どうやら、屋根がグレーの時代でも屋根上の号車番号は貼られていたようだ。下記のパンタ周辺の件でも情報をいただいた、「趣味の鉄道模型ホームページ」の管理人様より、号車番号が確認できる写真をご提供いただいたので確定情報だ。ソースは「とれいん1994-10 No.238」とのことで、当時の300系の屋根上について相当詳しく記載されているようなので、興味があれば探してみるといいかもしれない(筆者も欲しくなった)。新幹線の詳細も載せることあるのね、あの雑誌…
今回製品に号車番号がないのはコストの問題で省略したか、メーカーも当時は貼られていないと思ったかのどちらかだろう。
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左が今回製品、右がトミックスの旧製品(最初期製品)。
シングルアームパンタ製品を含めてトミックスの300系は最初期製品から設計が変わっておらず、ボディや前面窓は同じパーツを使用している。したがって並べてみても造形は全く同じである。30年前の設計とはいえ、造形に関しては現在でも余裕で通用するレベルだと思う。
今回製品は若干白が強いが、旧製品は経年があるかもしれない。あと、前面窓ガラスは今回製品はスモーク入りになっているのでボディ断面の白が目立ちにくくなっている。これは「さよならセット」から採用されたものだ。

左が今回製品、右がマイクロ。
トミックスより設計は新しいが、こちらもボディなど基本的な部分は旧製品(シングルアーム仕様)を引き継いでいる。しがたって、モールドの濃さやノーズ部分の造形、前面窓上の手すり有無などはメインサイトの比較レビューで紹介した内容と同じだ。


上が今回製品、下がマイクロ。
トミックスは旧製品となんら変わるところはないが、マイクロはヘッドライト周りの仕様が変更されており(後述)4灯が再現されているかのように見える。実車はもっと奥まった位置にあるのだけど、かなりリッチな雰囲気だ。
マイクロ旧製品ではヘッドライト表面がやや奥まり気味だったが、今回は逆に飛び出し気味になっているのはヘッドライトプリズムが変わった証拠。ここまで拡大しないとわからないレベルなので普通に見る分には気にならないだろう。
また、マイクロ旧製品は塗装の光沢がかなり強かったが、今回は標準的な光沢である。


トミックスは相変わらず床下のLCXアンテナがない…16号車の床下と共用しているからだが、そろそろ何とかしてほしいと思う。設計が新しいマイクロは当然再現されている。



1号車後位で上から今回製品、マイクロ、トミックス旧製品。
今回製品vsマイクロではモールドや印刷表記の差はシングルアーム製品のそれと同じである。トミックスは車番や禁煙マークをインレタで表現するが、マイクロは印刷済み。またマイクロはJR西日本車なのでジャッキ用の穴が印刷表現されている。
今回製品vsトミックス旧製品ではボディが同じなので基本的なモールドは同じだが、客用扉が旧製品のプラグドアから引き戸になっている点が異なる。金型改修によるものらしく、シングルアームパンタ製品を含めてプラグドアの製品は生産終了となっている。
また、トミックス旧製品は印刷表記が全くない(インレタすらない)。写真は省略したが、初回製品では省略されていた車端の窓ガラスは今回製品では当然入っている。

奥が今回製品、手前がトミックス旧製品。
下枠交差型パンタ時代の300系は屋根上がグレーで塗装されていたのが特徴で、旧製品は時代的に当然グレーで表現されていた。白で表現していたシングルアームパンタ製品から久々のグレー屋根になった今回製品だが、色味は旧製品とほぼ同じようだ。ボディと同様、屋根板パーツも旧製品のそれと同じだ。

奥が今回製品、手前がマイクロ。
シングルアームパンタ製品から始まったマイクロは今回初のグレー屋根で、トミックスよりもやや明るく、ウォームな感じのグレーである。また滑り止めはそれよりも濃いグレーで表現。白地だった旧製品よりも落ち着いていて、それでいてメリハリもある印象。


1号車屋根上、上が今回製品、下がマイクロ。
1号車の屋根板(注:マイクロは先頭車に限りボディ一体型である)はどちらも旧製品のそれと同じで、トミックスは滑り止めや車端のハッチがモールドなのに対し、マイクロは塗装・印刷で表現している。写真左側の無線アンテナはモールドに大きな違いはないものの、マイクロは塗装がやや厚ぼったく感じる。

今回製品はほとんど旧製品を流用(屋根上は最初期製品、ボディはシングルアームパンタ製品)しているのだけど、3・15号車の屋根板は今回新規制作されたものである。写真左が3号車、右が15号車でどちらも博多寄りになるが、このような高圧線終端処理が実装されたことでようやく先頭車直後のケーブルヘッド途切れが解消された。
初回がシングルアームパンタだったマイクロは、屋根上になにもない2号車以外の中間車すべての屋根上を新規制作しているはずである。3・15号車が増結セットなので残念ながら今回は比較できなかったが、トミックス同様よろしくやってる…のだと思う。


300系の下枠交差型パンタ時代はパンタ部以外はすべて「傾斜型ケーブルヘッド」で接続していた。700系以降は一部を除いて直ジョイントになったし、300系も後にそうなった。比較的思想が近そうなE2系初期型は高圧線が屋根下に潜った。各連結部に小ぶりな傾斜型ケーブルヘッドがずらりと並ぶ姿は300系初期の特徴でもあった。
左がマイクロ、右が今回製品(ポジション入れ替わってしまった)となるが、ケーブルヘッドの大きさ自体はほぼ同じながらトミックスはやや丸みを帯びた形状だ。実車調査はもうできないので(筆者が新幹線趣味に入った頃には下枠交差型パンタは風前の灯だった)どちらが実車に近いかは判断しかねるが、どちらも特に問題なさそうだとは思う。なお、トミックスは付属のガイシパーツを取り付ける必要がある。
ガイシ下にある屋根の切り欠きはトミックスは浅くマイクロは深いが、これは後者の方が実車に近い。グレーの屋根板パーツを見ればわかるが、トミックスは屋根板が薄くて切り欠きを深くできていない。

冒頭で述べたがここもガイシパーツは取り付けてないのでご了承のほど。すべて今回製品で上から5・6号車、8・9号車、11・12号車のパンタカバーの組み合わせ。左が博多寄り。
パンタカバーのパーツ自体は最初期製品の段階で5・6号車、11・12号車の組み合わせは用意されており、8・9号車のはそれを組み合わせた形となる。最初期製品で3パンタをやる場合はこのパーツ調達が大変だったが、ようやくそんな苦労から解放されることに。
3パンタ時代の300系は進行方向に対して後方の2基を使用し前方の1基は畳んでいた(2パンタ化以降は2基常用)。営業運転中にパンタの折り畳み運用しているのは他にはE5系・E6系くらいである。今回製品はパンタが可動式になったんだし、フル編成で走らせるならその辺こだわりたい。


奥が今回製品、手前がマイクロ。5・6号車間のパンタ周辺を比較。トミックスは3パンタ時代、マイクロは2パンタ時代になるが、こうして見るとかなり異なっている。
3パンタ時代は角度が寝ている「船底型」と角度が立っている「平型」の2種類があり(名前は筆者が勝手に付けた)、上の写真で言えばトミックスの5号車(左)が「船底型」・6号車(右)が「平型」になる。編成の外側に向いている端が「船底型」で、中間はすべて「平型」という組み合わせになっていた。
これが2パンタ時代(当初から/改造されて問わず)になると「船底型」が廃止され、編成の外側に向いている端が「平型」、中間は新しい「丸形」を装備することになった。素人目には「丸型」が前面に晒されている方が空気抵抗とか良さそうに感じるが、まあそんな簡単な話ではないのだろう。
トミックスは最初期製品が3パンタ時代だったこともあり、同じく3パンタである今回製品ではパンタカバーはすべて流用で済んでいるが、仮に2パンタ製品をやるとしたら「丸形」を新規制作する必要があるだろう。邪推すれば、なるべく新規制作したくないので3パンタにした可能性はある。
マイクロはシングルアーム製品からスタートだったので屋根板含めてパンタカバーは新規制作が必要であり、その意味では2パンタでも3パンタでもよかったと思うが、今回は2パンタをチョイス。その結果、「丸形」カバーはNゲージでは今回初登場となった。
それにしても、メインサイトでは「平型」で「丸形」の代用しても大きくかけ離れていないみたいなことを書いた気がするが、こうして見ると結構違うんだなと…正直、ちょっと揺らいでいる(汗)。



上から「平型」(今回製品)、「丸形」(マイクロ)、「船底型」(今回製品)。すべてパンタがある側で横から大きさ(長さ)を比較。「丸形」はやや「船底型」寄りの、中間のサイズであることがわかる。
ところで、マイクロはピンボケしてしまった。カメラのモニターでは気付かず、PCに持ってきて気づいたが撮り直しが面倒でそのまま載せたというオチ。まあ、大きさの比較には問題ないということで。


上が今回製品、下がマイクロ。パンタはそれぞれ両社で他形式で使用していたものを流用。トミックスはプラ製、マイクロは金属製という違いがあるが、トミックスは脚のガイシが白いのがリッチな印象だ。しかし、マイクロは2本の車端ガイシ間の高圧線を立体的に表現しているし、屋根板とカバーのグレー違いにメリハリがあり、こっちはこっちでよいところもある。
ん?ガイシの本数が違う?
写真では付けていないが、トミックスは中央にガイシが1本あるだけだ。ガイシ根本の左右から高圧線が来ているような配置だが、マイクロはパンタの真下を通っている。なんだかカバーの形状以上に違いがあるように思える。
筆者の手元にはこれといった資料がなく、どういうことかと困惑していたところ(実車が走っていたら速攻調査撮影なんだけど)、絶妙なタイミングで「趣味の鉄道模型ホームページ」の管理人様からブログにコメントいただいた。引用(一部修正)すると、
菱形パンタを装備していた頃のトミックス製品では、パンタカバー内の碍子の配置が1次車(J2~5編成)のもので、2次車(J6~15編成)とは異なっています。2次車以降、特高圧引通線と接続された中央の碍子以外に、もう1つ碍子が追加され、そこから床下に配線が下りているはずです。
さらに別途、上記を裏付ける情報提供もいただけた(それはもう完璧なエビデンスで。Y.Ishii様、本当にありがとうございます!!)。
まとめるとこうなる。
①1次車(J2~5編成) プラグドア+ガイシ1本(高圧母線は車体内で引き込み。上記画像のガイシ左側にあるのが多分それ)
②2次車(J6~15編成) プラグドア+ガイシ2本(高圧母線は車体外で引き込み)
③3次車(J16編成~) 引き戸+ガイシ2本(上に同じ)
※J1編成は試作車なのでここでは置いておく。
トミックスの300系は実車の営業運転開始からほどなく発売されているから、最初期製品が①になったのは辻褄が合う。ただし、今回製品は引き戸+ガイシ1本になってしまったので、その点は実車と異なっている。なお、1次車が2パンタ化された際にガイシも2次車以降の仕様になったかどうかは不明(高圧母線を外に出すのは大変そうなので、筆者はなっていないに1票)。
マイクロはF8編成となるが、F編成の1次車(F1~5編成)、2次車(F6~F9)はそれぞれJ編成の2次車・3次車に相当しているみたいなので、②を採用していて実車通りである。

右が今回製品、左がマイクロ。パンタ車と対になる側のカバーのガイシ周辺はどちらも同じ意匠だ。パンタが付いているカバーもそうだが、トミックスはカバーと屋根板が一体になっているが、マイクロはカバーのみであることがわかる。

左が今回製品、右がマイクロ。「平型」カバーにあるステップのモールドは大きさ・位置ともに大差ないが、マイクロは上方にある手すりも再現している。
カバーはトミックスは光沢があり、マイクロはザラザラで艶消しという感じだ。

奥が今回製品、手前がマイクロ。8・9号車間の屋根上。
2パンタ化の際にここからパンタが撤去され(J30編成以降は最初からパンタがない)、その跡には9号車側が大型、8号車側が小型というアンバランスなケーブルヘッドに置き換えられた。
マイクロは当然それを再現しているのだが、メインサイトで書いたようにケーブルヘッドの形状がJ30編成以降の当初から2パンタだった編成の形状になっており、全編成が3パンタだったF編成としては厳密には間違っている。旧製品(シングルアーム)の時は同時発売のJ編成との兼ね合いもあってやむを得なかったのかもしれないが、今回は屋根板が新規なので(反対側の車端は直ジョイントかケーブルヘッドかの違いがある)修正してもよかったのでは?と思う。もしくは、J編成の下枠交差型パンタ2基仕様を出す計画があるのか。

奥が今回製品、手前がトミックス最初期製品。11・12号車間の屋根上。マイクロはこの部分が増結セットなので今回は比較できない(といっても5・6号車を反転させた程度である)。
そこで旧製品と比較してみたがパンタカバーのパーツは全く同じものであることがわかると思う。ただし、パンタが固定式か可動式化の違いはあり、前述したとおり3パンタ時代はパンタの折り畳みがあったわけで、その意味でも旧製品はフル編成を想定したものではなかったのだろう。
旧製品は可動幌の黄ばみもさることながら、パンタカバーもまあまあ黄ばんで茶色っぽくなってる。まあ、未塗装プラはグレーでも黄ばむので。うちのスーパーファミコンもそうだったから。押し入れの奥に放り込んで以来20年くらい見てない気がするけど、今見たらさらに黄ばんでるんだろうか…

左が今回製品、右がマイクロ。連結方式はトミックスがフック・U字型通電カプラー、マイクロが伸縮式アーノルドカプラーで、前者は同社の標準カプラー、後者は旧製品と同じカプラーが採用されている。それにしても、今回の撮影で連結もさせてみたがアーノルドカプラーは見た目はともかく本当に扱いやすい。トミックスが使い勝手に難があるだけになおさらだ。
新幹線は編成組んでナンボ、実車でも妻面はほとんど見えないからトミックスのようでも全く問題ないが、マイクロの作りこまれた妻面、特に写真にあるようなパンタがある妻面はシングルアームの時よりも重厚感があってこれはこれで見ものである。


上が今回製品、下がマイクロ。
トミックスのヘッドライト構造は従来製品と全く変わっておらず、4灯表現はそもそもない。ただヘッド・テールともに光量はかなり多いので、走行中はかなり目立つと思う。
マイクロの従来製品は4灯表現を実装していたものの正直そうは見えず光量も不足気味だったが、今回は内部構造が変更されており(後述)、光量に関してはかなり改善された。電球色LEDだと思うがトミックスよりも黄味が強いようだ。
ただ、4灯表現についてはやっぱり微妙。上の方で消灯状態で4灯っぽく見える写真があったが、点灯させると内側のライトがすっぽり抜けるような見た目に。やはり中実プリズムでは歪んでしまうのか。




上2つが今回製品、下2つがマイクロ。なんか傾いてしまった(汗)。
トミックスはとにかく光量が多く、テールライトすらキラキラしてしまっているくらいである(肉眼で見る分には違和感ない)。マイクロは従来製品よりも明らかに光量が増えているが(メインサイト参照)、正面から見てもやはり4灯には見えない。また、若干ではあるが写真左側に光量が偏っているようだ。

マイクロのボディを外して点灯させてみる。従来製品はコクピットパーツ下に小さな4つのプリズムが覗いていたが、そのせいか光量が不足していたのだろうか、今回はここの4灯はやめてプリズムを大型化、光量を増やす方向に変更されていることがわかる。

マイクロのボディ側。ヘッドライトのプリズムが変更されており、ここで4灯表現しようとしているのがわかる。結果は以下略だが。プリズム形状の違いはメインサイトを参考にされたい。

トミックスは光量が多くボディと床下に隙間があることから光漏れがある。下のレールが光っているのが特に顕著だし、写真左上にも漏れが少し見える。また、暗い環境だとボディの頬の部分も透けてしまうことがあり、このあたりは設計の古さがもろに出てしまうようだ。もっとも、マイクロにも光漏れが若干あるにはある。
●総評
どちらも従来製品をベースに、下枠交差型パンタの仕様に上手くまとめたという印象だった。
トミックスはもともと下枠交差型パンタの製品があった分マイクロよりはハードルは低かったはずで、実際、一部屋根上の新規制作だけで済んでいる。しかしながら、相変わらずLCXアンテナ無しの床下、ヘッドライトの表現など設計の古さが目立つことも否めなかった。
それと、今回製品は「登場時」ということもあってプラグドアのボディを捨てた(金型を引き戸に改修してしまった)のはもったいないと思った。実際、パンタ周辺の意匠が引き戸の編成と合っていない弊害が出てしまっているし、それはそれとしてもマイクロ、最近発売発表されたカトーとの差別化という意味ではアイデンティティになっていたかと思う。プラグドア編成は少数派だし、「さよならセット」のためにやむを得なかったのは理解するが…
まあ、基本的な造形は現在でも見劣りしないし、これまで最初期製品でどうにかするしかなかった同社の下枠交差型パンタ仕様が相当まともになったことは確かだ。そして、現時点では3パンタ仕様はこれだけなので存在価値も十分ある。
いずれパンタカバーを新規制作して2パンタ仕様も発売するのだろうか。その際にはLCXアンテナを再現した床下の見直しも(願望としては従来製品へのフォローも含め)期待したい。
マイクロは当初から下枠交差型パンタ仕様を想定していたのか屋根板を別パーツにしており(トミックスも別パーツだが屋根上の色分けのためだ。当時実車のシングルアームはない)、トミックスほどではないにせよそれほど苦労せずに実現できたようだ。しかも2パンタでNゲージ300系では初の製品化である。初登場のパンタカバーをはじめパンタ周辺のディテールはなかなかのものだ。
改善されたとはいえ中途半端なヘッドライト、濃いめなモールド、広い連結部、従来製品のような精度が甘い品質の悪さはあるものの、現時点ではこちらにも存在価値は大いにある。ただ、何度か言及しているがやはり価格がネックだろう。フル編成なら定価ベースでトミックスより2万5000円以上高く、この差額でトミックスのどちらかのセットに匹敵するほど。情けないが、筆者も今回は基本セットを買うのがやっとだった。
今回は両社プロトタイプが違うので(トミックスはJ編成3パンタ、マイクロはF編成2パンタ)、価格が気になるが両方揃えてもかぶることはないし、従来製品をベースにしているということは一定のクオリティが保証されている(一長一短も引き継いでいる)ので、どちらかだけ買っても特に後悔することはないだろう。
さて、冒頭で述べた通りとうとうカトーも300系に参入してきた。引退のとき以来、久々にNゲージ300系が盛り上がることになった。300系は編成(J or F)、ドア形状、パンタ(下枠交差型は数も)の掛け合わせでかなりラインナップが増えるので、メーカーが増えるのはこの点でも歓迎できる。
ただ、現状引き戸仕様を3社でやっているのは正直食傷気味だし退屈だと思う。どうせラインナップが増えるなら、たまにはプラグドアの製品も見てみたい。買う方は大変だが・・・(苦笑)
●【読者様ご提供】マイクロ300系のヘッドライトを小加工(2022/6/12追記)
4灯化表現がイマイチなマイクロ300系だが、今回紹介した下枠交差型パンタ製品についてはヘッドライトプリズムに小加工することで「いい感じに」4灯に近づけることができるようだ。

当ブログ読者様のデテロニー様から加工撮影の上お知らせいただいたもので、ご提供いただいた画像が「お見事!」と思い、今回紹介させていただくこととなった。
デテロニー様、画像公開のご許可、誠にありがとうございます。

加工内容としては、車体側のプリズム内側に写真のように枠部分に色差しするというもの。



結果はご覧の通りだ。ただ、ご提供者様によると4灯に見える角度は限界があるようで、元のプリズムの歪みがある以上そこは仕方がないかもしれない。とはいえ、筆者は純正に比べたら相当マシになっていると思う。
なお、言うまでもないことだが、この加工(に限らないけど)をされる場合は絶対に自己責任でやること。ただでさえ高額、入手困難品である。失敗した場合パーツだけの入手はできない。
小加工とはいえかなり細かい作業ができる腕があること、失敗の覚悟ができていること、その責を自分で負うことができる者だけがやっていい作業だ。そうでない者は見ているだけが無難だ。ご提供者様はもとより、筆者も一切の責任は負わないのでご了承のほど。