トミックス 700系東海道・山陽新幹線「AMBITIOUS JAPAN!」 レビュー
2021年11月、トミックスより700系の「AMBITIOUS JAPAN!」仕様が発売された。
・97937 特別企画品 JR 700-0系東海道・山陽新幹線(AMBITIOUS JAPAN!)セット 49,500円
(税込み表示)

これだけだと普通の700系と変わらないな・・・「A」だけちょっと見えるが。

これならどうだっ。
100系引退による全列車270km/h化、「ひかり」から「のぞみ」主体のダイヤに変更、そして品川駅開業。すでに開業から55年以上経つ東海道新幹線の歴史の中でも、2003年10月のダイヤ改正は歴史に残る大きな変革だったといえるだろう。そしてそれらは「AMBITIOUS JAPAN!」キャンペーンとして大きくアピールされ、JR東海所有の700系及び300系の全編成(※)にロゴステッカーが貼りつけられた。特に700系は先頭車に「AMBITIOUS JAPAN!」の文字が大きくラッピングされ、シンプルなデザインながらも目を引く派手なものとなった。
(※)300系のうち営業運転に用いられないJ1編成は対象外。また、JR西日本の編成(300系、500系、700系)も対象外。
このキャンペーンは早々に終了する予定だったが、2005年の「愛・地球博」に合わせて延長され、車両へのラッピングも2005年10月くらいまで見ることができた。後年、リニア・鉄道館に展示中の700系(723-9001元C1編成)に施されたこともあった。TOKIOとタイアップした「AMBITIOUS JAPAN!」の楽曲はJR東海車の車内チャイムに採用され、現在でも引き続き流れているので聴いたことがある人も多いだろう。
新幹線、特に東海道新幹線にしては珍しく派手なラッピングは「模型映え」するにも十分で、このキャンペーン時期にすでに製品が存在していたカトーが、2005年11月にセット構成を変更した際に対応した。ただし、「AMBITIOUS JAPAN!」が印刷されていたのはスターターセットの両先頭車だけで、それに増結セットを追加した場合は中間車の円形ロゴをステッカーで表現するという中途半端なものだった。通常製品の先頭車も「AMBITIOUS JAPAN!」化することはできたものの、あくまでもステッカーによる表現だった。
当時、筆者はスターターセットを買うのはやぶさかでなかったが、中間車のステッカー表現がどうしても半端に思えて「カトー版AMBITIOUS JAPAN!」は見送っていていた。いずれ正式製品で出してくれると期待していたが叶わず・・・
実車の引退が差し迫った2019年、トミックスからJR東海のC編成が発売され、そもそも想定していたであろう「さよならセット」はともかく「AMBITIOUS JAPAN!」も出してくれるのでは?と期待していたところ(このあたり過去のレビューでもしつこく書いていた気がする)、めでたく発売と相成った。
個人的にはC55編成以降と「AMBITIOUS JAPAN!」の組み合わせを期待していたが、C55編成以降は2004年9月~12月にかけて増備されたため他の編成よりもラッピング期間は短く(落成時からラッピングされていたはず)、トミックスのプロトタイプであるC33~54編成と比べても少数派なうえに1号車の屋根も新規で作らないといけないから、叶わないのはまあ仕方がないだろう。
今回製品も基本的には従来製品ベースであることから、過去のレビューも参考にされたい。
トミックス700系通常品レビュー
http://speedsphere.blog84.fc2.com/blog-entry-367.html
トミックス700系「さよならセット」レビュー
http://speedsphere.blog84.fc2.com/blog-entry-390.html
また、(周知のことだと思うが)台車にリコールが出ている件についてはいったん置いてレビューする。


「さよならセット」シリーズのみならず、トミックスお得意の限定品パッケージを採用。
オレンジのスピード感ある「AMBITIOUS JAPAN!」ロゴをメインに配したデザインは品川駅等で掲げられてたポスターを思い起こさせるもので非常にセンスがいい。TOKIOのCDジャケットもこんな雰囲気だった気がする。ちなみに、筆者が買った最初で最後のTOKIOのCDは「AMBITIOUS JAPAN!」である。いろいろあって、TOKIOも当時とは変わってしまったけど・・・

2つのブックケースのスリーブデザインはいつもの限定品のそれを踏襲している。

「さよならセット」と同様に16両フル編成セットなので、2つのブックケースに最初から編成順に収納されている。

後述するが印刷類は充実しているのでインレタは車番程度しかない。収録編成はC37・40・42・47編成で既存製品と被る編成はない(通常品はC49・51・52・54編成、「さよならセット」はC53・54編成)。
これ以外の付属品は動力台車用の工具のみだ。


先頭車(上・1号車、下・16号車)には「AMBITIOUS JAPAN!」のロゴが印刷されている。まさに今回製品の目玉だと思うので、まずはここから見ていこう。


上が今回製品で、下はカトー製品にステッカーを貼ったものである。冒頭で書いたように印刷済みの製品は持っていないので、今回のレビュー用に急遽仕立て上げた。都合上、16号車に施工したのでトミックスも16号車で比較している。
ステッカーの厚みや質感の違いはいったん置いておいて、カトーはフォントがやや太くて密な印象で、ネットで画像を見る限り印刷済み製品もほぼ変わらない。位置についてはカトーはやや前寄りに貼ってしまったが、トミックスもカトー印刷済みもどちらも実車通りだと思う。

筆者が撮影できた「AMBITIOUS JAPAN!」の写真は少なくこの程度しかない。画角が異なるので参考になるかは・・・物足りなければ真横から撮った他のネット画像も参考にしてほしい。フォントはトミックス、カトーともによく再現しているが、全体的な雰囲気は甲乙つけがたい。


先頭車の「AMBITIOUS JAPAN!」のほか、1・5・9・11・15号車には円形ロゴが貼られている。このロゴは300系にも貼られていた(先頭車の「AMBITIOUS JAPAN!」はない)。余談だが、さよなら運転の装飾は11号車がないだけで同位置だった。
上が今回製品、下がカトー。トミックスは1号車だがカトーは都合上15号車に施工している。円形に切るのは難しく筆者の腕ではこんなもんだが(周囲が透明なステッカーなのでまだマシな気はする)、やはり存在感やシャープさで印刷済みのトミックスに軍配が上がる。カトーは帯色のブルーに対しての明るいブルーはメリハリあるといえばあるんだけども、やや眠たい印象。



円形ロゴを拡大。上から今回製品、カトー、実車。
トミックスの印刷されたロゴは太いながらも横線やグラデーションも表現していて、「のぞみは、かなう。」の文字も判読できるほど精細で凝ったものとなっている。カトーは水色に近いブルー1色で済まされているが、ステッカーの方が有利なのか文字類はさらに細かいものとなっている。また、700系のシルエットもカトーの方が近い。トミックスはシルエット途中のグラデーションもやろうとしている形跡があるのだけど、ちょっと無理があるようだ。
カトー印刷済みについてはブツを持っていないので比較・評価は保留しておく。




ちょっと意地悪なアングルから。「AMBITIOUS JAPAN!」と円形ロゴ、それぞれ上がトミックス(印刷)、下がカトー(ステッカー)。
フォントが似てる似てないとかではなく、ここまではスルーしてきた「印刷済み vs ステッカー表現」だとさすがに印刷の圧勝と言わざるを得ない。ステッカーはどうやっても厚みや光沢感、色調の差から逃れることはできない。

実車の「AMBITIOUS JAPAN!」もラッピング貼り付けであり段差や色調差があるにはあるが・・・実車が現役で走っていたときでもほとんど気にならなかったと思う。厚みは1mmくらいだろうか。
カトーのステッカー厚を仮に0.05mmとした場合、実車換算で8mm車体から出ていることになる。ちなみに、ひとつ前の記事で書いた昭島の0系後期型の非常口ハッチ出っ張りもそのくらいで、カトーのステッカー表現はそれに匹敵するくらい車体から出っ張っているということだ。
カトー700系は最新ロットではステッカーで「さよなら運転仕様」にも対応できるが、「AMBITIOUS JAPAN!」ともどもやはりステッカー表現は疑問に思う。「お手軽に表現できるように」も理解できなくはないけど、ユーザの技量にも影響されるし、悪く言えばメーカーが手を抜いているだけだと言えなくもない(最近までは標準の700系ロゴすらステッカー表現だったのだ)。カトーの700系はトミックスより安価ではあるけど、正直、数万円もする製品でやることではないと思うな。

左から通常製品(2019年発売)、今回製品、「さよならセット」。冷たい感じの通常製品の白さに対し「さよならセット」はややアイボリー寄りになっていたが、今回製品はその中間という感じだ。ヘッドライト周辺に銀色のリム印刷が入っているのはすべて同じ。
前面窓は通常製品のみワイパー印刷がJR西日本仕様になっているというエラーがあったが、今回製品は「さよならセット」と同様にきちんとJR東海仕様になっている。今回製品はデフォルトの車番印刷がないため、編成番号はインレタで表現することになる。
また、写真は省いたがヘッドライトも「さよならセット」と同様に電球色LEDを採用。光量も同じくらいで相変わらず激マブ。

左が今回製品、右が通常製品。今回製品はややアイボリー寄りであることがわかる。ブルー帯は今回製品は若干明るいようだ。

左が今回製品、右が「さよならセット」。こちらは「さよならセット」側がアイボリー寄りであることがわかる。行先表示機は今回製品もモールド表現になっている。

印刷類は充実しており、「さよならセット」と同様に屋根上の号車番号まで印刷済み。前述のとおりデフォルトの車番はないのでこれだけはインレタ表現となる。
「AMBITIOUS JAPAN!」の運転時期は3・4・10・15・16号車が喫煙車でこの期間に変更はないので、通常製品と異なり禁煙マークは印刷済みになっている。3・4号車が禁煙車化された「さよならセット」に対し、今回製品は見てのとおり3号車に禁煙マークがなく他の号車も考証はバッチリである。

屋根上は通常品、「さよならセット」と違いはないが、滑り止めは2011年以降のN700系のような「4本渡し」に変更された姿で再現されているのでこの点は異なる(通常製品のレビューも参考にされたい)。トミックスの700系は引退直前、つまり晩年期がプロトタイプのため「AMBITIOUS JAPAN!」のように少し時代を遡ると実車と異なる点が出てしまう。


パンタカバーは通常製品、「さよならセット」と同様にB編成(JR西日本)のパーツが流用されているのでこちらも異なっている。下のカトーのように、カバーからケーブルが直接生えているのが正しい。
●総評
元々素性がよいトミックス700系。今回製品はいろいろ改良された「さよならセット」製品をベースにしている(印刷変えただけ)ので、改めてその出来に言及しなくてもよいだろう。屋根上の滑り止め違いなど些細な問題だし、そこを差っ引いても売りである「AMBITIOUS JAPAN!」の各種ロゴ類は車体に見事に溶け込んでおり、実車の運転終了から約16年を経て、ようやく待ち望んでいた決定版が出たように思う。
今回製品は限定品なので入手性、価格はカトーの方が優位かもしれないが、模型の出来栄えとしては歴然とした差がある。カトーの「AMBITIOUS JAPAN!」は初期編成で再現できることしかメリットはなく、もはや過去のものになったといってよいだろう。
「のぞみ」の花形500系と同期であり、東海道新幹線完成形の後継N700系に対して今一つパッとしない印象の700系だが、「AMBITIOUS JAPAN!」ロゴをまとった姿は間違いなく輝いでいた。今回製品はその「輝き」を十分に再現できているので、ここはTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」を流しながら(びーあんびしゃーす♪)走らせたいものである。
●追記・台車にリコール発生
すでにメーカーからも通知が出ているが、今回製品は台車にエラーがありリコールされることになった。写真一通り撮影して執筆し始めた頃にネットでこれを知ったのだが、こんなところ間違えてるなんて思わなかったのでレビュー中は気づかず・・・


写真は7号車のもので(ちょっとブレてしまった)、上の台車は両端の軸ばねが省略されているが、本来は下の形状が正しい。この軸ばねが省略された台車は700系では台車カバーが干渉する先頭部のみで使うもので、他にはドクターイエローやN700系でも使用されているものだ。
筆者の購入品では3・4号車の博多寄り、7号車東京寄り、8号車博多寄りが先頭車用台車になっていたが、ホビーサーチさんの画像だと別の号車に割り当たってたりするので法則はないようだ。この問題はケースAの車両(1~8号車)のみで発生しているが、動力車である5号車は問題ないようだ。また、ケースB(9~16号車)の車両は問題ない。念のため従来製品もチェックしてみたが大丈夫だった。
推測だけど、製造ラインはケースAとケースBで分かれてて、ケースA側は「台車枠パーツを誤って混ぜちゃった」んじゃないかと。ぱっと見にはわかりにくいし、そのまま車輪付けて組み立てて・・・号車や位置がバラバラなのもそれが理由じゃないだろうか。もしかしたら、偶然にも全車両間違っていないセットが存在しているかも!?
それにしても、通常製品の方向幕リコールの時は発売から2ヶ月くらい経ってからだったが、今回は11月19日発売から翌週にはリコール出しているから動きが早い。レビューであれこれ書く前に動きが決まった感じ。ただ、700系(C編成)としては2回目のリコールなのがなんとも。ミスは仕方がないし無償交換はありがたいのだけど、こういうのはお互い対応するのが面倒で良いことない。せっかく製品は良いのだから、今後は発生しないように願いたい。
まあ、筆者も適時メーカー送りにしよう。めんどくさいけど・・・
・97937 特別企画品 JR 700-0系東海道・山陽新幹線(AMBITIOUS JAPAN!)セット 49,500円
(税込み表示)

これだけだと普通の700系と変わらないな・・・「A」だけちょっと見えるが。

これならどうだっ。
100系引退による全列車270km/h化、「ひかり」から「のぞみ」主体のダイヤに変更、そして品川駅開業。すでに開業から55年以上経つ東海道新幹線の歴史の中でも、2003年10月のダイヤ改正は歴史に残る大きな変革だったといえるだろう。そしてそれらは「AMBITIOUS JAPAN!」キャンペーンとして大きくアピールされ、JR東海所有の700系及び300系の全編成(※)にロゴステッカーが貼りつけられた。特に700系は先頭車に「AMBITIOUS JAPAN!」の文字が大きくラッピングされ、シンプルなデザインながらも目を引く派手なものとなった。
(※)300系のうち営業運転に用いられないJ1編成は対象外。また、JR西日本の編成(300系、500系、700系)も対象外。
このキャンペーンは早々に終了する予定だったが、2005年の「愛・地球博」に合わせて延長され、車両へのラッピングも2005年10月くらいまで見ることができた。後年、リニア・鉄道館に展示中の700系(723-9001元C1編成)に施されたこともあった。TOKIOとタイアップした「AMBITIOUS JAPAN!」の楽曲はJR東海車の車内チャイムに採用され、現在でも引き続き流れているので聴いたことがある人も多いだろう。
新幹線、特に東海道新幹線にしては珍しく派手なラッピングは「模型映え」するにも十分で、このキャンペーン時期にすでに製品が存在していたカトーが、2005年11月にセット構成を変更した際に対応した。ただし、「AMBITIOUS JAPAN!」が印刷されていたのはスターターセットの両先頭車だけで、それに増結セットを追加した場合は中間車の円形ロゴをステッカーで表現するという中途半端なものだった。通常製品の先頭車も「AMBITIOUS JAPAN!」化することはできたものの、あくまでもステッカーによる表現だった。
当時、筆者はスターターセットを買うのはやぶさかでなかったが、中間車のステッカー表現がどうしても半端に思えて「カトー版AMBITIOUS JAPAN!」は見送っていていた。いずれ正式製品で出してくれると期待していたが叶わず・・・
実車の引退が差し迫った2019年、トミックスからJR東海のC編成が発売され、そもそも想定していたであろう「さよならセット」はともかく「AMBITIOUS JAPAN!」も出してくれるのでは?と期待していたところ(このあたり過去のレビューでもしつこく書いていた気がする)、めでたく発売と相成った。
個人的にはC55編成以降と「AMBITIOUS JAPAN!」の組み合わせを期待していたが、C55編成以降は2004年9月~12月にかけて増備されたため他の編成よりもラッピング期間は短く(落成時からラッピングされていたはず)、トミックスのプロトタイプであるC33~54編成と比べても少数派なうえに1号車の屋根も新規で作らないといけないから、叶わないのはまあ仕方がないだろう。
今回製品も基本的には従来製品ベースであることから、過去のレビューも参考にされたい。
トミックス700系通常品レビュー
http://speedsphere.blog84.fc2.com/blog-entry-367.html
トミックス700系「さよならセット」レビュー
http://speedsphere.blog84.fc2.com/blog-entry-390.html
また、(周知のことだと思うが)台車にリコールが出ている件についてはいったん置いてレビューする。


「さよならセット」シリーズのみならず、トミックスお得意の限定品パッケージを採用。
オレンジのスピード感ある「AMBITIOUS JAPAN!」ロゴをメインに配したデザインは品川駅等で掲げられてたポスターを思い起こさせるもので非常にセンスがいい。TOKIOのCDジャケットもこんな雰囲気だった気がする。ちなみに、筆者が買った最初で最後のTOKIOのCDは「AMBITIOUS JAPAN!」である。いろいろあって、TOKIOも当時とは変わってしまったけど・・・

2つのブックケースのスリーブデザインはいつもの限定品のそれを踏襲している。

「さよならセット」と同様に16両フル編成セットなので、2つのブックケースに最初から編成順に収納されている。

後述するが印刷類は充実しているのでインレタは車番程度しかない。収録編成はC37・40・42・47編成で既存製品と被る編成はない(通常品はC49・51・52・54編成、「さよならセット」はC53・54編成)。
これ以外の付属品は動力台車用の工具のみだ。


先頭車(上・1号車、下・16号車)には「AMBITIOUS JAPAN!」のロゴが印刷されている。まさに今回製品の目玉だと思うので、まずはここから見ていこう。


上が今回製品で、下はカトー製品にステッカーを貼ったものである。冒頭で書いたように印刷済みの製品は持っていないので、今回のレビュー用に急遽仕立て上げた。都合上、16号車に施工したのでトミックスも16号車で比較している。
ステッカーの厚みや質感の違いはいったん置いておいて、カトーはフォントがやや太くて密な印象で、ネットで画像を見る限り印刷済み製品もほぼ変わらない。位置についてはカトーはやや前寄りに貼ってしまったが、トミックスもカトー印刷済みもどちらも実車通りだと思う。

筆者が撮影できた「AMBITIOUS JAPAN!」の写真は少なくこの程度しかない。画角が異なるので参考になるかは・・・物足りなければ真横から撮った他のネット画像も参考にしてほしい。フォントはトミックス、カトーともによく再現しているが、全体的な雰囲気は甲乙つけがたい。


先頭車の「AMBITIOUS JAPAN!」のほか、1・5・9・11・15号車には円形ロゴが貼られている。このロゴは300系にも貼られていた(先頭車の「AMBITIOUS JAPAN!」はない)。余談だが、さよなら運転の装飾は11号車がないだけで同位置だった。
上が今回製品、下がカトー。トミックスは1号車だがカトーは都合上15号車に施工している。円形に切るのは難しく筆者の腕ではこんなもんだが(周囲が透明なステッカーなのでまだマシな気はする)、やはり存在感やシャープさで印刷済みのトミックスに軍配が上がる。カトーは帯色のブルーに対しての明るいブルーはメリハリあるといえばあるんだけども、やや眠たい印象。



円形ロゴを拡大。上から今回製品、カトー、実車。
トミックスの印刷されたロゴは太いながらも横線やグラデーションも表現していて、「のぞみは、かなう。」の文字も判読できるほど精細で凝ったものとなっている。カトーは水色に近いブルー1色で済まされているが、ステッカーの方が有利なのか文字類はさらに細かいものとなっている。また、700系のシルエットもカトーの方が近い。トミックスはシルエット途中のグラデーションもやろうとしている形跡があるのだけど、ちょっと無理があるようだ。
カトー印刷済みについてはブツを持っていないので比較・評価は保留しておく。




ちょっと意地悪なアングルから。「AMBITIOUS JAPAN!」と円形ロゴ、それぞれ上がトミックス(印刷)、下がカトー(ステッカー)。
フォントが似てる似てないとかではなく、ここまではスルーしてきた「印刷済み vs ステッカー表現」だとさすがに印刷の圧勝と言わざるを得ない。ステッカーはどうやっても厚みや光沢感、色調の差から逃れることはできない。

実車の「AMBITIOUS JAPAN!」もラッピング貼り付けであり段差や色調差があるにはあるが・・・実車が現役で走っていたときでもほとんど気にならなかったと思う。厚みは1mmくらいだろうか。
カトーのステッカー厚を仮に0.05mmとした場合、実車換算で8mm車体から出ていることになる。ちなみに、ひとつ前の記事で書いた昭島の0系後期型の非常口ハッチ出っ張りもそのくらいで、カトーのステッカー表現はそれに匹敵するくらい車体から出っ張っているということだ。
カトー700系は最新ロットではステッカーで「さよなら運転仕様」にも対応できるが、「AMBITIOUS JAPAN!」ともどもやはりステッカー表現は疑問に思う。「お手軽に表現できるように」も理解できなくはないけど、ユーザの技量にも影響されるし、悪く言えばメーカーが手を抜いているだけだと言えなくもない(最近までは標準の700系ロゴすらステッカー表現だったのだ)。カトーの700系はトミックスより安価ではあるけど、正直、数万円もする製品でやることではないと思うな。

左から通常製品(2019年発売)、今回製品、「さよならセット」。冷たい感じの通常製品の白さに対し「さよならセット」はややアイボリー寄りになっていたが、今回製品はその中間という感じだ。ヘッドライト周辺に銀色のリム印刷が入っているのはすべて同じ。
前面窓は通常製品のみワイパー印刷がJR西日本仕様になっているというエラーがあったが、今回製品は「さよならセット」と同様にきちんとJR東海仕様になっている。今回製品はデフォルトの車番印刷がないため、編成番号はインレタで表現することになる。
また、写真は省いたがヘッドライトも「さよならセット」と同様に電球色LEDを採用。光量も同じくらいで相変わらず激マブ。

左が今回製品、右が通常製品。今回製品はややアイボリー寄りであることがわかる。ブルー帯は今回製品は若干明るいようだ。

左が今回製品、右が「さよならセット」。こちらは「さよならセット」側がアイボリー寄りであることがわかる。行先表示機は今回製品もモールド表現になっている。

印刷類は充実しており、「さよならセット」と同様に屋根上の号車番号まで印刷済み。前述のとおりデフォルトの車番はないのでこれだけはインレタ表現となる。
「AMBITIOUS JAPAN!」の運転時期は3・4・10・15・16号車が喫煙車でこの期間に変更はないので、通常製品と異なり禁煙マークは印刷済みになっている。3・4号車が禁煙車化された「さよならセット」に対し、今回製品は見てのとおり3号車に禁煙マークがなく他の号車も考証はバッチリである。

屋根上は通常品、「さよならセット」と違いはないが、滑り止めは2011年以降のN700系のような「4本渡し」に変更された姿で再現されているのでこの点は異なる(通常製品のレビューも参考にされたい)。トミックスの700系は引退直前、つまり晩年期がプロトタイプのため「AMBITIOUS JAPAN!」のように少し時代を遡ると実車と異なる点が出てしまう。


パンタカバーは通常製品、「さよならセット」と同様にB編成(JR西日本)のパーツが流用されているのでこちらも異なっている。下のカトーのように、カバーからケーブルが直接生えているのが正しい。
●総評
元々素性がよいトミックス700系。今回製品はいろいろ改良された「さよならセット」製品をベースにしている(印刷変えただけ)ので、改めてその出来に言及しなくてもよいだろう。屋根上の滑り止め違いなど些細な問題だし、そこを差っ引いても売りである「AMBITIOUS JAPAN!」の各種ロゴ類は車体に見事に溶け込んでおり、実車の運転終了から約16年を経て、ようやく待ち望んでいた決定版が出たように思う。
今回製品は限定品なので入手性、価格はカトーの方が優位かもしれないが、模型の出来栄えとしては歴然とした差がある。カトーの「AMBITIOUS JAPAN!」は初期編成で再現できることしかメリットはなく、もはや過去のものになったといってよいだろう。
「のぞみ」の花形500系と同期であり、東海道新幹線完成形の後継N700系に対して今一つパッとしない印象の700系だが、「AMBITIOUS JAPAN!」ロゴをまとった姿は間違いなく輝いでいた。今回製品はその「輝き」を十分に再現できているので、ここはTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」を流しながら(びーあんびしゃーす♪)走らせたいものである。
●追記・台車にリコール発生
すでにメーカーからも通知が出ているが、今回製品は台車にエラーがありリコールされることになった。写真一通り撮影して執筆し始めた頃にネットでこれを知ったのだが、こんなところ間違えてるなんて思わなかったのでレビュー中は気づかず・・・


写真は7号車のもので(ちょっとブレてしまった)、上の台車は両端の軸ばねが省略されているが、本来は下の形状が正しい。この軸ばねが省略された台車は700系では台車カバーが干渉する先頭部のみで使うもので、他にはドクターイエローやN700系でも使用されているものだ。
筆者の購入品では3・4号車の博多寄り、7号車東京寄り、8号車博多寄りが先頭車用台車になっていたが、ホビーサーチさんの画像だと別の号車に割り当たってたりするので法則はないようだ。この問題はケースAの車両(1~8号車)のみで発生しているが、動力車である5号車は問題ないようだ。また、ケースB(9~16号車)の車両は問題ない。念のため従来製品もチェックしてみたが大丈夫だった。
推測だけど、製造ラインはケースAとケースBで分かれてて、ケースA側は「台車枠パーツを誤って混ぜちゃった」んじゃないかと。ぱっと見にはわかりにくいし、そのまま車輪付けて組み立てて・・・号車や位置がバラバラなのもそれが理由じゃないだろうか。もしかしたら、偶然にも全車両間違っていないセットが存在しているかも!?
それにしても、通常製品の方向幕リコールの時は発売から2ヶ月くらい経ってからだったが、今回は11月19日発売から翌週にはリコール出しているから動きが早い。レビューであれこれ書く前に動きが決まった感じ。ただ、700系(C編成)としては2回目のリコールなのがなんとも。ミスは仕方がないし無償交換はありがたいのだけど、こういうのはお互い対応するのが面倒で良いことない。せっかく製品は良いのだから、今後は発生しないように願いたい。
まあ、筆者も適時メーカー送りにしよう。めんどくさいけど・・・