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トミックス 「ありがとう東海道新幹線700系」 レビュー

2020年9月、トミックスより700系のさよなら運転セット 「ありがとう東海道新幹線700系」 が発売された。

・97929 限定品 JR 700-0系(ありがとう東海道新幹線700系)セット 45,600円
(税抜き表示)

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トミックス恒例の「さよなら運転セット」に700系が登場。

トミックスはこれまでも0系、100系、300系で東海道新幹線引退の「さよならセット」をリリースしてきたが、その例に漏れず700系も「さよならセット」が発売されることになった。過去形式と違うのは、ベースとなる通常製品の発売時期が2019年4月と新しく「さよならセット」を見越していたと思える点で、その意味では一定のクオリティが期待できるといえるだろう。

さよなら運転(実際は中止になってしまったが・・・)を模した製品という意味では、ひとつ前の記事にあるカトー700系(C8編成仕様)の方が発売が早かったといえるが、装飾はステッカーによる表現で初期車ゆえにプロトタイプも異なっているため、「真・さよなら運転仕様」としてはやはり今回製品が唯一のものである。

図らずも連続して700系のレビュー記事となったが、今回製品はトミックスの通常製品をベースにしているためそちらのレビューも参考にされたい。

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過去のさよなら製品と同様、特製パッケージ入りのフル編成セットとなる。表側のイラストは大井で並ぶC53・54編成、裏側は雪の米原を通過するC53編成となっている(装飾編成が走り始めた2月くらいなら雪もアリか)。300系もそうだったが裏側のイラスト、走り去っていく「後撃ち」なのがセンス良い。

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ケーススリーブも過去の限定品に沿ったデザイン。16両フル編成ということもあり、最初から編成順に並べられている。

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こちらもおなじみの付属品、ブックレット。終盤の装飾はラッピング剥がれ防止のために塗装でやっていたとの貴重な情報が。確かに初日の装飾、剝がれまくってたし。

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装飾編成はC53・54編成となるが、前者の車番に加えて禁煙マークや屋根上の号車番号も印刷済みであることから、C53編成用は乗務員室扉窓の編成番号くらいしかない。一応、C54編成に仕立てることができるようマスク付き車番も用意されているが、よほどC54編成に思い入れがあるとかでなければ、C53編成そのままにしておくのがいいと思う。

なお、通常製品もC54編成が含まれていた。

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インレタの構成は300系(J55・57編成)と似ているが、唯一の違いは前面窓に「C53」が印刷済みになっていること。それじゃC54編成はどうするのかというと、車番が印刷されていない前面窓が付属しているのでそれに交換して(「C54」をインレタ施工して)再現する。前面窓が付属するというのは前代未聞で、当然分解を伴い初心者向けではない(上級者でも面倒)ことも、先ほど「C53編成にしておくのがよい」と書いた理由の一つだ。

それならせめて「C54」を印刷済みにしてくれてもいいのにと最初は思ったが、通常製品にあった問題点「ワイパー印刷がJR西日本仕様になっている」が修正されているので、通常製品を持っているならこのパーツを流用して正しい状態にできるのは美味しい。メーカーが通常製品を持っているユーザに配慮して印刷済みにしなかった・・・かどうかはわからないが、このパーツが無用の長物であるとは言えなさそうだ。

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通常品をベースにしながらも、ノーズ部や側面に装飾が施されている。カトーのようにステッカー表現ではないので車体への溶け込みは完璧だ。前面窓に「C53」が印刷されていることもわかる。

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実際のさよなら運転は中止になってしまい、3月1日の団臨(写真)が営業運転としてのラストランである。その時用いられた編成がC53編成だったので、今回製品のプロトタイプも最終運転時の編成ということになろう。もし3月8日にさよなら運転が行われていたら、どちらの編成が充当されていたのだろうか。

画角が異なるので正確な比較にならないかもしれないが、装飾の大きや位置は問題なさそうだ。なお、装飾編成はなぜか先頭車だけ屋根上がきれいだったが、さすがに模型ではそこまで再現していない。こだわるなら自分でウェザリングか。

(2020/10/26追記)
読者様より、3月8日のさよなら運転はC53編成が充当される予定だったとの情報をいただきました。当記事のコメント欄にソースへのリンクあり。情報ありがとうございます。

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いくつかの角度から見てもやはり装飾の印刷クオリティ、位置、大きさに問題はない・・・のだが、写真の1号車は正面から見てやや左に寄っている気がする。16号車はきちんと中央になっているので、筆者所有品の個体の問題かもしれない。個人的には一応許容範囲で。

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先頭車側面の青帯先端は700系を模した装飾になっているが、(実車と海側山側反対になってしまったけど)青帯の先端がノーズのくぼみにかかっているあたりとか、文字類の位置、大きさ的にも問題ないレベルだと思う。文字がやや太い気がするのと、700系のシルエットの青帯(帯の中の帯ってややこしいな)、上下段とも太さがほぼ同じな点くらいか。とはいえ、異常拡大しての話なので普通に見る分には気にならないだろう。

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1号車後位を見る(こちらも海山逆転してしまった・・・)。C53編成の車番や禁煙マークは印刷済みであるほか、1・ 5・ 9・15号車には装飾ロゴが付く。こちらも大きさ位置ともに問題なさそうだ。

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文字類は先頭部横にあるものとほぼ同じで、さすがに「東海道新幹線」は判読が困難なレベル。また、700系シルエットのグラデーションはドットによるものだが、大きさを考えたらここまでやっているだけ立派か。上下段の帯の太さがほぼ同じなのは先頭部と同様だ。

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700系のロゴは通常製品と全く同じだ。この写真で通常製品との違いを挙げるなら、屋根上の号車番号と禁煙マークが印刷済みであることくらいだ。屋根上のモールド感、可動幌、通電カプラー等も通常製品とまったく変わらない。

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通常製品(左)と並べてみる。今回製品は基本的には装飾だけだから、造形などは全く同じである。

白の色調にやや差があって、今回製品はややアイボリーに寄った気がする(B編成の製品に近い)。こうして比べると通常製品は冷たい印象がある。300系のさよなら仕様は強い光沢が特徴だったが、今回はほとんど差がないようだ。

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先般発売のカトーC8編成(右)と並べると、カトーのアイボリーっぷりがわかる。(白)トミックス通常製品>今回製品>>>カトー(アイボリー)な印象だ。

トミックス同士を比べると、前面窓に印刷されたワイパー形状に違いがあることがわかる(中央の今回製品が正しい形状)。今回製品の付属ガラスパーツを使えば通常製品の修正ができることは前述したとおりだ。なお、カトーはワイパー印刷は省略されている。

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ここまで言及を溜めてきたわけではないけど、今回製品は「基本的には通常製品と同じ」と書いてきたが、意外な変更として行先表示・座席表示がガラス表現からモールド表現に変わったという点がある。左が今回製品で、モールドに変わっていることがわかる。

どちらかといえばモールド表現→ガラス表現と進化してきたと思うので(カトーのように行先を印刷済みにするためにモールドに戻った例もあるが)、今回の変更は退化といえなくもないが、筆者としては今回の修正は英断と評価したい

通常製品や同社のレールスターでは車体断面と可動幌の関係からか、特に車端の行先表示にガラスが実装できない問題があった。そのままでは行先ステッカーすら貼れないし、上の写真の1号車のように可動幌が見えてしまう(下の写真のように、ガラス越しとはいえ車端の客用扉窓からも見えてしまうけどね・・・)。LED式ならともかく、黒く見えてしまうガラス表現は幕式のC編成にはメリットがなかったといえるだろう。個人的にも「レールスター」のレビュー時からここのモールド化を主張していたので、良い「改良」だと歓迎している。

この仕様変更、今後通常製品が再生産された場合どうなるのか気になる。金型を修正したと思われるので、ガラス表現の行先表示は通常製品初期ロットだけの特徴になるかもしれない。

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通常品はヘッドライトが黄色LEDだったが、今回製品は電球色LEDに変更。ぐっとリアリティが増した。

ただまあ、通常製品の時点で採用してほしかったと思う。初めて700系製品が出た15年前くらいならともかく、現在は電球色LEDなんて珍しくないんだから・・・

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ちなみに、光量はかなりものでカトーに引けを取ってないレベルの劇マブ仕様だ。直接見るのは避けた方がよい。

●総評

今一度、トミックスの「東海道新幹線さよならセット」を振り返ってみたい。

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実車では実現不可能なトミックスの歴代「さよならセット」並び。いや、実車でもリニ鉄でならいけるかも?大窓0系や試作車のさよなら装飾とか、カオス極まりないが・・・

形式編成さよなら運転日さよならセット発売日通常製品初発売日
0系Yk81999/9/182001/9/121983/12
100系G492003/9/162004/71986
300系J572012/3/162012/11/291992
700系C532020/3/1(※)2020/9/302019/4/26
※実際の最終運転日。本来は3/8予定だった。

この企画の最初の製品、0系の「20世紀保存セット」が発売されたのは2000年以降なので、300系ですら最初の発売は1992年とそれよりも遥かに古く、「さよならセット」なんて全く想定されたものではなかったことがわかる。それぞれ発売当時の技術や仕様(車端の窓がないとか固定式パンタだとか)の範囲内でベストを尽くしていたと思うが、

・0系は本来1000番台の車両を2000番台で無理やり代用したものになっていた(当時は1000番台は未発売)。
・100系はボディがいくつか新規制作がされて形式代用はなくなったが、ヘッドライトは試作車のツリ目仕様。
・300系はプラグドアから引き戸に修正して実車に合わせてきたものの、床下や屋根上は細かい点では実車と異なる。

など、発売を重ねるごとに少しづよくなっていたことは認められるが、そもそも元になる通常製品の設計が古く、それをベースにすることの限界も見えていた。悪く言えば装飾と特製パッケージ、ブックレットで誤魔化していただけの、あくまでも「お祭りの記念品」「コレクターズアイテム」の域を出ておらず、「再現性」という意味では微妙だったのは確かだ。

そう考えると今回の700系は、以下の点で従来とは状況が異なっているといえるだろう。

・「さよならセット」という企画が出てから初の製品である。
・通常製品が実車の引退近くで発売されている(たいていはデビュー直後の「旬」に発売されるものである)。
・通常製品発売から圧倒的に短い期間で発売された。

C編成はもともとカトー製品があったのでここまで発売が遅くなったということもあると思うが、冒頭で述べた通り、やはり当初より「さよならセット」を見越していたのではないかと思われる。将来的にN700系の「さよならセット」も発売されると思うが、こちらはZ0編成の床下流用のままなのは目に見えてるし、その意味では今回の700系は「さよならセット」の条件としては非常に恵まれていたといえる。

結果的に、これまでの「さよならセット」で最も優れた再現度を持ち、完成度も高い製品に仕上がったといえる。通常製品の段階で(2003年発売とはいえ、設計の大元である「レールスター」製品の時点で)根本的な不満は少ないし、そのうえで電球色LED、前面窓ワイパー修正、方向幕のモールド化などで完成度を高めており(どれも通常製品の段階でやっていて欲しかったが)、「実車は先頭車以外は屋根が汚れていた」くらいしか違う点がないんじゃないだろうか。

これだけ再現度が高い「さよならセット」の実車がさよなら運転中止になってしまったのは皮肉な話だが、今回製品は間違いなく完成度は高いので、(限定品なのでいつでも入手できないかも、だけど)欲しいと思ったら是非購入をオススメしたい。

これでいったん700系の模型は落ち着きそうだが、個人的にはカトーのステッカー表現が不満なので(スタータセットなら印刷済みだが中間車の円形ロゴはステッカーのまま)、「AMBITIOUS JAPAN!」仕様を是非やってほしい。また、1号車の無線アンテナが省略されたC55編成以降も屋根板差し替えるだけでできると思うので期待。なんなら、「AMBITIOUS JAPAN!」+C55編成以降でも良し。

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ここにN700系が加わるのはいつか。

現在現役のN700系(といっても、初期車はすでに廃車が出ているが)もいずれは東海道新幹線引退となり、おそらく先達のように装飾が施されると思うが、「レガシーN700系(X編成)」と「N700A(G編成)」、どちらの引退時点でやるのだろうか。300系や700系がそうであったように、必ずしも最終編成がさよなら運転に供されるわけではないので参考程度だが、X80(Z80)編成は2012年3月、G51は2020年2月(なんとまだ今年)に落成しているので、寿命15年程度と考えると前者であれば2027年、後者であれば2035年あたりだろうか。

それまで「さよならセット」のレビューはないんだなと思いつつ、G編成だった場合は筆者は余裕で還暦突入。その時期でもはたしてN700系「さよならセット」が出ているのだろうか。そして、相変わらずレビューしているのだろうか。どんな世の中になっているのか、自分の生死すらわからない先の話すぎて想像もつかない。

でも、案外あっという間なんだよね15年・・・
プロフィール

友輝

Author:友輝
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