トミックス N700S確認試験車(J0編成) レビュー
※2022/3/20 追記
カトーのN700S発売に伴い、トミックスとの比較レビューを新たにアップしました。
カトーN700S・トミックスN700S 比較レビュー(前編)
カトーN700S・トミックスN700S 比較レビュー(後編)
以下記載の単独レビューも有効ですが、より詳細なレビューで再評価した箇所も多々ありますので、上記の比較レビューも読まれることをお勧めします。
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2019年6月、トミックスよりN700S確認試験車(J0編成)が発売された。
●98670 JR N700-9000系(N700S確認試験車)新幹線 基本セット 21,500円
●98671 JR N700-9000系(N700S確認試験車)新幹線 増結セット 20,800円

N700Sは東海道・山陽新幹線向けの新型車両で、2018年3月に「確認試験車」J0編成が登場した。現在は各種試験を行っており、2020年度に量産車が営業運転を開始する予定である。N700SのSは「Supreme(スプリーム、最高の)」からのもので、N700S系とはいわないし、かといってN700系〇〇番台でもなく、それでいて新しい形式番号が割り振られているというこれまでにない扱いになっている。

編成記号は300系で使用されていた「J」。現在試験走行を繰り返している確認試験車はJ0編成となる。
基本的にはN700系を発展させたような車両で、特に見た目は先頭形状以外はほとんど変わらず新形式といわれてもぱっとしない部分もあるが、走行機器類は新形式と呼ぶにふさわしいほど大幅に刷新されている。従来のN700系、700系は4両で1ユニットを構成していたが、N700Sでは機器類の小型化で2両1ユニット化しており、JR東海では「標準車両」と呼んでいるが、同じく2両1ユニットだったかつての0系のように柔軟な編成構成に対応できるとしている。
同車は16両編成で落成しているが8両編成に組み替えての試験も行っており、東海道新幹線のみならず山陽新幹線や九州新幹線の500系、700系、800系の置き換えも想定していると考えられる。リニア開通後に東海道新幹線の利用客が減ったとしても16編成からの減車が容易になるし、東海道・山陽新幹線で行う予定はないものの360km/hの速度試験も実施しており、海外への売り込みも想定。まさに高汎用性の「標準車両」とえるだろう。
さて、そんなN700Sの模型がトミックスより発売された。プロトタイプは当然、現在それしか存在していない確認試験車J0編成で、N700Sが営業運転に入る前に発売されたことになる。ただ、トミックスはN700系の時も先行量産試作車Z0編成を先立って発売、量産車が登場すればそちらも発売しており、今回も同じパターンを踏んだだけだといえる。したがって、N700Sも今後量産車が発売されることは既定路線だ。

N700系ではZ0編成や3000番台(N編成)はスターターを意識した3両基本セット+増結セットだったが(最近3両基本セット自体やらなくなった気が)、今回は基本セット8両+増結セット8両のシンプルな構成。ウレタンは先日発売の700系0番台と同じくパンタの位置を調整できるタイプが採用され、16両編成を号車順に収納することができる。
製品名は「N700-9000系」となっておりZ0編成とかぶりそうな気がするが、Z0編成の製品名は「JR N700系 東海道・山陽新幹線(Z0編成)」だったので、とりあえず重複していない。量産車の製品名が気になるところだが・・・

付属品はこれだけ。基本と増結にそれぞれ同梱されている。
インレタは形式番号が同じく印刷済みだったN700系Z0編成と似た構成。ただし、前面窓の編成番号と禁煙マークは印刷済みになったので含まれない。Z0編成は営業運転に用いられることはなかったが、N700系では唯一喫煙ルームがない(とされている)ため、禁煙マークが貼られていない車両が存在した。
左はパンタ車の車端部に取り付ける投光器のパーツ。これはZ0編成の付属品と同じものだ。
最近の新幹線模型はバリエーション展開が主だったので、久々に新しい先頭形状の製品が出たといえる。なので、先頭部は少し詳しく見ていこう。




「デュアルスプリームウイング」という先頭形状はなんとなくLMPクラスのレーシングカーを思わせる稜線を両側持っていて、このためにヘッドライトに至るまでのサイドラインが水平に近く、ここはN700系との大きな差といえる。3段になった青帯もこれまで以上にスピード感を演出している。
模型ではこれらをひっくるめて忠実に再現。造形についてはトミックスは本当に安定しており、まったく問題ないと思う。

ライティングを変えてみると「デュアルスプリームウイング」の特徴である両サイドの稜線がよくわかる。


模型はフォーカス合わせがきつい・・・ヘッドライトがきちんとノーズの造形に収まっており精度の高さがうかがえる。


非常に小さいにも関わらず、3次曲面の中にある複雑な形状のヘッドライトも見事に再現。ノーズカバーの分割線からの距離感も含め、まったく破たんが見られない。


模型のヘッドライトはややツリ目気味だが、正面からの見た目もいい感じだ。サイドから回り込んでいる青帯が眉毛みたいに見えるのも忠実に再現。
ところで模型の正面の写真、撮影に使用しているパナソニック「DC-TX2」の「フォーカスセレクト」という機能を使ってみた。画面各所に片っ端からフォーカスを当てながら連続撮影し、後からピントが合っている画像を選択できるというもので、合っている各ピントを合成して画像を出力することもできる。ロングノーズの車両でも先端から後方までピントが合った写真を作成できるという寸法だ。画像の継ぎ目が不自然になる事も多くてあまり多用はできないものの、上の写真は上手く撮れたので採用した。

N700系Z0編成と並べてみる。スマートなN700系に対し、N700Sは幅広でいかつい感じ。

1つ上の写真のような構図だとN700系の方が先端が細く見えるが、真上からに近い構図で見ると寸法的にはほぼ変わらないことがわかる。ヘッドライトの形状の違いにも注目。

前面窓はN700系と同じパーツを使っているようだ。内部のコクピットパーツも同じ。N700SとN700系の先頭形状の違いはノーズ部分に集中していることがわかる。Z0編成では前面窓の編成番号の印刷がなくインレタ対応だったが、今回製品は「J0」が印刷済みになった。
また、この写真からもサイドの青帯がN700Sではかなり前方に伸ばされたことがわかるだろう。


N700系でも一部編成が装備しているセンサー窓はN700Sでは1号車山側、16号車海側にあり、模型でも目立ちにくいながらも印刷で表現再現されている(乗務員室扉の少し前方にある黒い小窓)。モールドにすると量産車の時に困るし、500系のセンサーも印刷だったので特に問題はないだろう。ドクターイエローがモールド表現にできたのはその編成しかないからである。

青帯が3段になった以外、この部分の見た目はモールドの強さを含めてN700系から変わっていない。


実車の方はがっつりホームドアに邪魔されてしまっているが、1号車後位もロゴマーク以外はN700系と同じである。確認試験車はこれだけなので車番は印刷済みだが、量産車ではインレタから選択する方式になると思う。号車番号、禁煙車マークも印刷済みで、N700系と同じく綺麗に印刷できている。
屋根上の検電アンテナ、実車は見慣れない形状のアンテナを装備しているが模型は標準的な形状である。実車はテストのためにパーツを変えまくるので、筆者が撮影した時はたまたまこの形状だったというだけである(16号車は標準的な形状だったし)。したがって、模型が間違っているわけではない。


N700Aと同様、ロゴマークは奇数号車に貼りつけられよく目に付く。従来のN700系と比べると柔和なロゴマークだと思う。
ただ、砂絵みたいになってしまって印刷クオリティがいまひとつなのは気になった。離れて見る分にはそれほど問題ではないし、写真は異常に拡大している事も確かだが、これまでのトミックスは印刷が少々悪いと思ったものでも、シャープさだけは譲らないと思っていたので。量産車登場後に発売するあろうカトー製品がどうなるかわからないが、かつては印刷では劣っていたカトーも力を付けてきている。この状態では印刷は負けてしまってもおかしくない。


9号車はロゴマークが行先表示機をよける配置になっているので、海側(模型の側)は車端側に、山側(実車の側)は客用扉側にそれぞれオフセットされている。模型でもそのあたりは忠実に再現しているし、グリーン車マークなどの印刷クオリティも従来通り高い。それだけにロゴマークのザラザラ感は本当に惜しまれる。
一見同じように見えるN700SとN700系の側面だが、改めて模型を見比べ、そして実車も確認すると結構差があることに気づく。


まず、N700Sは3号車の両側、15号車の海側に喫煙ルームの窓がない。実車写真はN700系になるが、3号車車端にある小窓がN700Sにはないことがわかる。確認試験車なので該当部分に喫煙ルーム自体がない可能性もあり、量産車では復活する可能性もあるが実際のところは不明だ。
(2019/8/10追記)
調べてみると、現在のN700系の3・15号車海側の喫煙ルームは過去の物騒な事件を受け、防護用品や医療品置き場として業務用室に用途変更されているとのこと。したがって、N700Sの上記箇所は喫煙ルームではないことになるし、量産車で復活することもなさそう。筆者はまだ未確認だけど、N700AのG47編成以降でもN700Sと同様に窓が省略されているらしい。3号車の山側は喫煙ルームがあるにも関わらず窓がなくなったことになるが、15号車と異なりサイズが小さいので省略されたのではないだろうか。

11号車の山側にある多目的室の窓がグリーン車と同じサイズに拡大されている。N700系では普通車の大きさで正方形に近いものだった。
また、N700Sでは客用扉下部の横にあったドア点検ハッチが廃止されている。N700系ではハッチがある箇所とない個所があり、さらにその位置がZ0編成と量産車で異なっている有様だったが、N700Sではそういうことはなさそうだ(量産車で復活しなければだけど・・・)。

実車においてもN700系とN700Sでは車体断面が微妙に違っているが、模型でもきちんと再現されている。奥がN700Sでより四角い形状になっている。ボディがすべて新規制作とはいえ、よくここまで再現したなと驚く。

窓配置がN700系と同じ号車が多いので、窓ガラスパーツはさすがに流用しているだろと思いきや、これも新規パーツのようだ(左がN700S)。ただし右のN700系はZ0編成なので、同社のN700系では最も古い製品である。その後の量産車製品や再生産によりパーツが更新された可能性はある。


N700Sでは高圧線が屋根内に潜ったので屋根上がスッキリしているが、E5系等と異なり車端では従来通りジョイントでケーブルを露出させて渡している。これらは模型でも再現しているがジョイント形状は全号車同じ。もっとも、N700SにはN700系にあった一部車両の大型ジョイントがあるかどうか不明なので、完璧に再現できているかは判断しかねる。
(2019/9/29追記)

N700Sにも大型ジョイントがあることを確認。位置は3・6・11号車の東京寄りでこれはN700系から変わっていないが、N700Sでは10号車は両端も大型ジョイントになっている。ただし、ケーブルは両端とも1本出ているだけとなっている。確認試験車という性格上、今後状態が変わる可能性はある。

2・15号車の屋根にはパンタ及びパンタカバー取り付けの準備工事がされており、実際8両編成のテストではパンタが搭載されたこともあるが、こんなところもモールドで再現されている。確認試験車ならではのものであり、量産車製品ではおそらくボディが差し替えられるはずだ。

パンタグラフは似ているがN700S(右)は上部のカバー形状が異なり新規パーツであることがわかる。パンタ支えるガイシの数もN700系の2本から1本に変更されている(写真に見える範囲の話で、パンタ全体では3→2本に変更)。
また、パンタ下部を覆う前後がスロープになっている「ガイシ覆い」もN700Sでは僅かに幅が狭くなっていることがわかるだろうか?これは実車においても同様に変更された箇所であり、一見わからないにも関わらず忠実に再現。車体断面ともども、これはグッジョブだ。





ヘッドライトの光量は十分明るく色味も全く問題ない。ただ、N700系と同様に「ヘッドライト全体が光るだけ」であり、見る角度によっては先端側が光って見えるのも変わらない。カトーのN700系はヘッドライトが非常に凝ったものだったが、N700Sはどう出るのだろうか。

N700S(左)とN700系(右)では室内灯の保持部分が異なっており、室内パーツは新規であることがわかる。また、可動幌も一見同じに見えるが前述の車体断面変更の関係で新規パーツになっている(可動幌パーツ上部の厚みが違う)。一方、特に変える理由もないので当然だけど、座席パーツは同じパーツを使用している。


写真小っさ・・・床下は新規制作されたもので、ここに至ってまでZ0編成の床下流用はさすがにやらなかったようだ。先頭車は新規にせざるを得ないとしても、ダクト形状をZ0編成に合わせるだけで中間車はすべて流用してきても個人的にはまったく驚かなかっただろうが、それはさすがに見くびりすぎか。
中間車は写真の2パターンしかないが、実車においても雑誌の形式写真を見る限りはこの2パターンだけのようだ。細かなハッチの有無の違いやパネルの分割線差はあるかもしれないが、同じく中間2パターンで済ませていたN700系と比べたら(少なくとも確認試験車では)忠実に再現されているといえる。実車の機器構成がシンプルになったことに救われたともいえるが、メーカーにとっても仕事が楽に?

台車はN700系と同じ、両端の空気ばねが削られている点も同じだ。一応、集電板が改良され車輪の転がりがよくなったとのこと。写真ではわからないけど・・・
台車カバーは分割線2本のタイプで実車の中間車では2・7・8・ 9・10・15号車が該当するが、分割線1本タイプの方が数は多い。いずれにしても実車とは異なってしまうがここを作り分けていないのはカトーも同じ。トミックスのN700系製品(S・R編成除く)はすべてZ0編成の分割線なしタイプだったことを考えたら、マシになったと考えていいのかもしれない。もちろん、確認試験車としての話で量産車製品がどうなるかはわからない。

カプラーはフックリング式からフック・U字式に変更された。左はZ0編成となるが、新幹線では通電カプラー初採用の製品である。それからすでに10年以上を経過した現在、トミックス新幹線はフック・U字式が主流になっている。

連結部の印象もN700系からまったく変わっていない。
●総評
特徴的な先頭形状はもとより、パンタのガイシ覆いとか車体断面形状とか、言われなければ分からない個所も手抜くことなく再現、単にボディ・床下を新規制作しましたという以上に、N700Sの確認試験車を忠実に再現した製品であることは間違いない。そのおかげで、一見同じに見えるN700系との差異に気づかされる箇所も多々あり、実に勉強になる製品でもあった。
予想以上に新規率の高い今回製品だけど、先日発売の700系0番台もボディ・床下が新規制作ながら基本設計は従来の700系製品に準じていたように、今回製品も基本的には従来のN700系と同じである。
したがって、各種造形や窓ガラスの精度感とか良いところは引き継いでいる一方、無難すぎて「すげえ」と思えるギミックもない。床下がよくなったと思えばロゴマークの印刷は悪くなるなど「プラマイゼロ」な点もあって、とにかく長所・短所とも同社のN700系製品のクオリティそのもので、進化も退化もしていない。その意味では今回も良くも悪くもガワがかわっただけという印象だ。
とはいえ、実車も見た目に関してはN700系からそれほど変わっていないし、N700SもN700系のバリエーションと考えれば差が出すぎてもそれはそれで問題があるかもしれない。細かな不満はあるとはいえ同社のN700系だって水準以上のクオリティは持っているわけで、そこから変わらないのも間違っていないと考える。
なので、トミックスの従来のN700系製品に特に不満がないのであれば、今回のN700Sでも不満が出ることはないと思う。あとは「確認試験車」というマニアックな編成に興味があるかどうかがポイントだろうか。後にカトーも含めて量産車製品が出てくるのは既定路線ではあるけれど、いち早くN700Sの模型を手元に置きたいならこの機会に入手しておくのが良いと思う。
あと気になるのは過去に100系、N700系でもあったことだけど、量産車製品が今回製品(確認試験車)に引っ張られて、実車と異なる部分がどこまで出てくるかだろう。N700Sは少なくとも外見上は完成されていて量産車との差はあまりなさそうだから、そこまで大きな違いは出ないと勝手に予想(願望)しているが・・・量産車製品の発売をカトーともども待ちたい。
p.s.
今年の前半は(トミックスばっかりだけど)わりと新幹線製品が多かったが、11月くらいまでの新幹線模型の予定は800系(スルー予定)しかないので、しばらく(お財布的にも)のんびりできそう。ブログの更新頻度が少し下がるかもしれないけどご了承のほど。
カトーのN700S発売に伴い、トミックスとの比較レビューを新たにアップしました。
カトーN700S・トミックスN700S 比較レビュー(前編)
カトーN700S・トミックスN700S 比較レビュー(後編)
以下記載の単独レビューも有効ですが、より詳細なレビューで再評価した箇所も多々ありますので、上記の比較レビューも読まれることをお勧めします。
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2019年6月、トミックスよりN700S確認試験車(J0編成)が発売された。
●98670 JR N700-9000系(N700S確認試験車)新幹線 基本セット 21,500円
●98671 JR N700-9000系(N700S確認試験車)新幹線 増結セット 20,800円

N700Sは東海道・山陽新幹線向けの新型車両で、2018年3月に「確認試験車」J0編成が登場した。現在は各種試験を行っており、2020年度に量産車が営業運転を開始する予定である。N700SのSは「Supreme(スプリーム、最高の)」からのもので、N700S系とはいわないし、かといってN700系〇〇番台でもなく、それでいて新しい形式番号が割り振られているというこれまでにない扱いになっている。

編成記号は300系で使用されていた「J」。現在試験走行を繰り返している確認試験車はJ0編成となる。
基本的にはN700系を発展させたような車両で、特に見た目は先頭形状以外はほとんど変わらず新形式といわれてもぱっとしない部分もあるが、走行機器類は新形式と呼ぶにふさわしいほど大幅に刷新されている。従来のN700系、700系は4両で1ユニットを構成していたが、N700Sでは機器類の小型化で2両1ユニット化しており、JR東海では「標準車両」と呼んでいるが、同じく2両1ユニットだったかつての0系のように柔軟な編成構成に対応できるとしている。
同車は16両編成で落成しているが8両編成に組み替えての試験も行っており、東海道新幹線のみならず山陽新幹線や九州新幹線の500系、700系、800系の置き換えも想定していると考えられる。リニア開通後に東海道新幹線の利用客が減ったとしても16編成からの減車が容易になるし、東海道・山陽新幹線で行う予定はないものの360km/hの速度試験も実施しており、海外への売り込みも想定。まさに高汎用性の「標準車両」とえるだろう。
さて、そんなN700Sの模型がトミックスより発売された。プロトタイプは当然、現在それしか存在していない確認試験車J0編成で、N700Sが営業運転に入る前に発売されたことになる。ただ、トミックスはN700系の時も先行量産試作車Z0編成を先立って発売、量産車が登場すればそちらも発売しており、今回も同じパターンを踏んだだけだといえる。したがって、N700Sも今後量産車が発売されることは既定路線だ。

N700系ではZ0編成や3000番台(N編成)はスターターを意識した3両基本セット+増結セットだったが(最近3両基本セット自体やらなくなった気が)、今回は基本セット8両+増結セット8両のシンプルな構成。ウレタンは先日発売の700系0番台と同じくパンタの位置を調整できるタイプが採用され、16両編成を号車順に収納することができる。
製品名は「N700-9000系」となっておりZ0編成とかぶりそうな気がするが、Z0編成の製品名は「JR N700系 東海道・山陽新幹線(Z0編成)」だったので、とりあえず重複していない。量産車の製品名が気になるところだが・・・

付属品はこれだけ。基本と増結にそれぞれ同梱されている。
インレタは形式番号が同じく印刷済みだったN700系Z0編成と似た構成。ただし、前面窓の編成番号と禁煙マークは印刷済みになったので含まれない。Z0編成は営業運転に用いられることはなかったが、N700系では唯一喫煙ルームがない(とされている)ため、禁煙マークが貼られていない車両が存在した。
左はパンタ車の車端部に取り付ける投光器のパーツ。これはZ0編成の付属品と同じものだ。
最近の新幹線模型はバリエーション展開が主だったので、久々に新しい先頭形状の製品が出たといえる。なので、先頭部は少し詳しく見ていこう。




「デュアルスプリームウイング」という先頭形状はなんとなくLMPクラスのレーシングカーを思わせる稜線を両側持っていて、このためにヘッドライトに至るまでのサイドラインが水平に近く、ここはN700系との大きな差といえる。3段になった青帯もこれまで以上にスピード感を演出している。
模型ではこれらをひっくるめて忠実に再現。造形についてはトミックスは本当に安定しており、まったく問題ないと思う。

ライティングを変えてみると「デュアルスプリームウイング」の特徴である両サイドの稜線がよくわかる。


模型はフォーカス合わせがきつい・・・ヘッドライトがきちんとノーズの造形に収まっており精度の高さがうかがえる。


非常に小さいにも関わらず、3次曲面の中にある複雑な形状のヘッドライトも見事に再現。ノーズカバーの分割線からの距離感も含め、まったく破たんが見られない。


模型のヘッドライトはややツリ目気味だが、正面からの見た目もいい感じだ。サイドから回り込んでいる青帯が眉毛みたいに見えるのも忠実に再現。
ところで模型の正面の写真、撮影に使用しているパナソニック「DC-TX2」の「フォーカスセレクト」という機能を使ってみた。画面各所に片っ端からフォーカスを当てながら連続撮影し、後からピントが合っている画像を選択できるというもので、合っている各ピントを合成して画像を出力することもできる。ロングノーズの車両でも先端から後方までピントが合った写真を作成できるという寸法だ。画像の継ぎ目が不自然になる事も多くてあまり多用はできないものの、上の写真は上手く撮れたので採用した。

N700系Z0編成と並べてみる。スマートなN700系に対し、N700Sは幅広でいかつい感じ。

1つ上の写真のような構図だとN700系の方が先端が細く見えるが、真上からに近い構図で見ると寸法的にはほぼ変わらないことがわかる。ヘッドライトの形状の違いにも注目。

前面窓はN700系と同じパーツを使っているようだ。内部のコクピットパーツも同じ。N700SとN700系の先頭形状の違いはノーズ部分に集中していることがわかる。Z0編成では前面窓の編成番号の印刷がなくインレタ対応だったが、今回製品は「J0」が印刷済みになった。
また、この写真からもサイドの青帯がN700Sではかなり前方に伸ばされたことがわかるだろう。


N700系でも一部編成が装備しているセンサー窓はN700Sでは1号車山側、16号車海側にあり、模型でも目立ちにくいながらも印刷で表現再現されている(乗務員室扉の少し前方にある黒い小窓)。モールドにすると量産車の時に困るし、500系のセンサーも印刷だったので特に問題はないだろう。ドクターイエローがモールド表現にできたのはその編成しかないからである。

青帯が3段になった以外、この部分の見た目はモールドの強さを含めてN700系から変わっていない。


実車の方はがっつりホームドアに邪魔されてしまっているが、1号車後位もロゴマーク以外はN700系と同じである。確認試験車はこれだけなので車番は印刷済みだが、量産車ではインレタから選択する方式になると思う。号車番号、禁煙車マークも印刷済みで、N700系と同じく綺麗に印刷できている。
屋根上の検電アンテナ、実車は見慣れない形状のアンテナを装備しているが模型は標準的な形状である。実車はテストのためにパーツを変えまくるので、筆者が撮影した時はたまたまこの形状だったというだけである(16号車は標準的な形状だったし)。したがって、模型が間違っているわけではない。


N700Aと同様、ロゴマークは奇数号車に貼りつけられよく目に付く。従来のN700系と比べると柔和なロゴマークだと思う。
ただ、砂絵みたいになってしまって印刷クオリティがいまひとつなのは気になった。離れて見る分にはそれほど問題ではないし、写真は異常に拡大している事も確かだが、これまでのトミックスは印刷が少々悪いと思ったものでも、シャープさだけは譲らないと思っていたので。量産車登場後に発売するあろうカトー製品がどうなるかわからないが、かつては印刷では劣っていたカトーも力を付けてきている。この状態では印刷は負けてしまってもおかしくない。


9号車はロゴマークが行先表示機をよける配置になっているので、海側(模型の側)は車端側に、山側(実車の側)は客用扉側にそれぞれオフセットされている。模型でもそのあたりは忠実に再現しているし、グリーン車マークなどの印刷クオリティも従来通り高い。それだけにロゴマークのザラザラ感は本当に惜しまれる。
一見同じように見えるN700SとN700系の側面だが、改めて模型を見比べ、そして実車も確認すると結構差があることに気づく。


まず、N700Sは3号車の両側、15号車の海側に喫煙ルームの窓がない。実車写真はN700系になるが、3号車車端にある小窓がN700Sにはないことがわかる。確認試験車なので該当部分に喫煙ルーム自体がない可能性もあり、量産車では復活する可能性もあるが実際のところは不明だ。
(2019/8/10追記)
調べてみると、現在のN700系の3・15号車海側の喫煙ルームは過去の物騒な事件を受け、防護用品や医療品置き場として業務用室に用途変更されているとのこと。したがって、N700Sの上記箇所は喫煙ルームではないことになるし、量産車で復活することもなさそう。筆者はまだ未確認だけど、N700AのG47編成以降でもN700Sと同様に窓が省略されているらしい。3号車の山側は喫煙ルームがあるにも関わらず窓がなくなったことになるが、15号車と異なりサイズが小さいので省略されたのではないだろうか。

11号車の山側にある多目的室の窓がグリーン車と同じサイズに拡大されている。N700系では普通車の大きさで正方形に近いものだった。
また、N700Sでは客用扉下部の横にあったドア点検ハッチが廃止されている。N700系ではハッチがある箇所とない個所があり、さらにその位置がZ0編成と量産車で異なっている有様だったが、N700Sではそういうことはなさそうだ(量産車で復活しなければだけど・・・)。

実車においてもN700系とN700Sでは車体断面が微妙に違っているが、模型でもきちんと再現されている。奥がN700Sでより四角い形状になっている。ボディがすべて新規制作とはいえ、よくここまで再現したなと驚く。

窓配置がN700系と同じ号車が多いので、窓ガラスパーツはさすがに流用しているだろと思いきや、これも新規パーツのようだ(左がN700S)。ただし右のN700系はZ0編成なので、同社のN700系では最も古い製品である。その後の量産車製品や再生産によりパーツが更新された可能性はある。


N700Sでは高圧線が屋根内に潜ったので屋根上がスッキリしているが、E5系等と異なり車端では従来通りジョイントでケーブルを露出させて渡している。これらは模型でも再現しているがジョイント形状は全号車同じ。もっとも、N700SにはN700系にあった一部車両の大型ジョイントがあるかどうか不明なので、完璧に再現できているかは判断しかねる。
(2019/9/29追記)

N700Sにも大型ジョイントがあることを確認。位置は3・6・11号車の東京寄りでこれはN700系から変わっていないが、N700Sでは10号車は両端も大型ジョイントになっている。ただし、ケーブルは両端とも1本出ているだけとなっている。確認試験車という性格上、今後状態が変わる可能性はある。

2・15号車の屋根にはパンタ及びパンタカバー取り付けの準備工事がされており、実際8両編成のテストではパンタが搭載されたこともあるが、こんなところもモールドで再現されている。確認試験車ならではのものであり、量産車製品ではおそらくボディが差し替えられるはずだ。

パンタグラフは似ているがN700S(右)は上部のカバー形状が異なり新規パーツであることがわかる。パンタ支えるガイシの数もN700系の2本から1本に変更されている(写真に見える範囲の話で、パンタ全体では3→2本に変更)。
また、パンタ下部を覆う前後がスロープになっている「ガイシ覆い」もN700Sでは僅かに幅が狭くなっていることがわかるだろうか?これは実車においても同様に変更された箇所であり、一見わからないにも関わらず忠実に再現。車体断面ともども、これはグッジョブだ。





ヘッドライトの光量は十分明るく色味も全く問題ない。ただ、N700系と同様に「ヘッドライト全体が光るだけ」であり、見る角度によっては先端側が光って見えるのも変わらない。カトーのN700系はヘッドライトが非常に凝ったものだったが、N700Sはどう出るのだろうか。

N700S(左)とN700系(右)では室内灯の保持部分が異なっており、室内パーツは新規であることがわかる。また、可動幌も一見同じに見えるが前述の車体断面変更の関係で新規パーツになっている(可動幌パーツ上部の厚みが違う)。一方、特に変える理由もないので当然だけど、座席パーツは同じパーツを使用している。


写真小っさ・・・床下は新規制作されたもので、ここに至ってまでZ0編成の床下流用はさすがにやらなかったようだ。先頭車は新規にせざるを得ないとしても、ダクト形状をZ0編成に合わせるだけで中間車はすべて流用してきても個人的にはまったく驚かなかっただろうが、それはさすがに見くびりすぎか。
中間車は写真の2パターンしかないが、実車においても雑誌の形式写真を見る限りはこの2パターンだけのようだ。細かなハッチの有無の違いやパネルの分割線差はあるかもしれないが、同じく中間2パターンで済ませていたN700系と比べたら(少なくとも確認試験車では)忠実に再現されているといえる。実車の機器構成がシンプルになったことに救われたともいえるが、メーカーにとっても仕事が楽に?

台車はN700系と同じ、両端の空気ばねが削られている点も同じだ。一応、集電板が改良され車輪の転がりがよくなったとのこと。写真ではわからないけど・・・
台車カバーは分割線2本のタイプで実車の中間車では2・7・8・ 9・10・15号車が該当するが、分割線1本タイプの方が数は多い。いずれにしても実車とは異なってしまうがここを作り分けていないのはカトーも同じ。トミックスのN700系製品(S・R編成除く)はすべてZ0編成の分割線なしタイプだったことを考えたら、マシになったと考えていいのかもしれない。もちろん、確認試験車としての話で量産車製品がどうなるかはわからない。

カプラーはフックリング式からフック・U字式に変更された。左はZ0編成となるが、新幹線では通電カプラー初採用の製品である。それからすでに10年以上を経過した現在、トミックス新幹線はフック・U字式が主流になっている。

連結部の印象もN700系からまったく変わっていない。
●総評
特徴的な先頭形状はもとより、パンタのガイシ覆いとか車体断面形状とか、言われなければ分からない個所も手抜くことなく再現、単にボディ・床下を新規制作しましたという以上に、N700Sの確認試験車を忠実に再現した製品であることは間違いない。そのおかげで、一見同じに見えるN700系との差異に気づかされる箇所も多々あり、実に勉強になる製品でもあった。
予想以上に新規率の高い今回製品だけど、先日発売の700系0番台もボディ・床下が新規制作ながら基本設計は従来の700系製品に準じていたように、今回製品も基本的には従来のN700系と同じである。
したがって、各種造形や窓ガラスの精度感とか良いところは引き継いでいる一方、無難すぎて「すげえ」と思えるギミックもない。床下がよくなったと思えばロゴマークの印刷は悪くなるなど「プラマイゼロ」な点もあって、とにかく長所・短所とも同社のN700系製品のクオリティそのもので、進化も退化もしていない。その意味では今回も良くも悪くもガワがかわっただけという印象だ。
とはいえ、実車も見た目に関してはN700系からそれほど変わっていないし、N700SもN700系のバリエーションと考えれば差が出すぎてもそれはそれで問題があるかもしれない。細かな不満はあるとはいえ同社のN700系だって水準以上のクオリティは持っているわけで、そこから変わらないのも間違っていないと考える。
なので、トミックスの従来のN700系製品に特に不満がないのであれば、今回のN700Sでも不満が出ることはないと思う。あとは「確認試験車」というマニアックな編成に興味があるかどうかがポイントだろうか。後にカトーも含めて量産車製品が出てくるのは既定路線ではあるけれど、いち早くN700Sの模型を手元に置きたいならこの機会に入手しておくのが良いと思う。
あと気になるのは過去に100系、N700系でもあったことだけど、量産車製品が今回製品(確認試験車)に引っ張られて、実車と異なる部分がどこまで出てくるかだろう。N700Sは少なくとも外見上は完成されていて量産車との差はあまりなさそうだから、そこまで大きな違いは出ないと勝手に予想(願望)しているが・・・量産車製品の発売をカトーともども待ちたい。
p.s.
今年の前半は(トミックスばっかりだけど)わりと新幹線製品が多かったが、11月くらいまでの新幹線模型の予定は800系(スルー予定)しかないので、しばらく(お財布的にも)のんびりできそう。ブログの更新頻度が少し下がるかもしれないけどご了承のほど。