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トミックス 700系0番台(C編成)レビュー

2019年4月、トミックスより700系0番台(C編成)が発売された。

・98667 JR 700 0系東海道・山陽新幹線(のぞみ)基本セット 21,600円
・98668 JR 700 0系東海道・山陽新幹線(のぞみ)増結セット 20,900円

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700系0番台は「C編成」と呼ばれ、JR東海が所有する編成である。2020年3月には引退することになっていて、2019年4月時点においてはもはや風前の灯火となっているが、今回紹介するのはそんな「末期の時期」に発売されたトミックスのC編成製品だ。

トミックスからこれまで700系の製品は出ていたものの、7000番台(E編成)、3000番台(B編成)といったJR西日本所有車の製品だった。一方、C編成はカトーからすでに発売されていたため、おそらくバッティングを避けていたのだと思われる。しかし、実車の引退が迫ってきたし、これまで東海道新幹線系統の「さよならセット」を出し続けてきた同社。ついにC編成を発売することとなった。

カトーと同じC編成といっても、カトーがC2~11編成の初期車がプロトタイプなのに対し、今回のトミックス製品は客用扉窓が高くなった中期型以降のC33~54編成がプロトタイプなので厳密にはバッティングしていない。カトー製品は1999年末、実車登場より半年余りで発売されたため(実に20年近く前の製品である)、当時最新鋭だった700系を製品化するなら必然的に初期型になったわけだけど、トミックスは引退間際の製品化なので残存している中期型以降になったというのは、なかなか感慨深い経緯だと思った。

カトーのC編成が1999年、トミックスのE編成が2003年、B編成が2006年。700系としては約13年ぶりの新製品、はたしてどのようなものになったのか。ちょっとだけ結論を書けば、基本的には従来のトミックス700系の延長線上にある製品である。したがって、メインサイトの700系レビューの内容も参考にしていただきたく思う。

・・・かくいう筆者も、自分で書いたレビューを大いに参考にして今回の記事を書いていたりする(苦笑)。

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基本セット8両+増結セット8両というシンプルなセット構成。写真は編成順に並び替えた後のもの。

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ウレタンはパンタ車の位置に応じて柔軟に変更できるものになっている。したがって、きちんと編成順に16両が収納できる。筆者はやらなかったけど、山側をこちらに向ける収納もできそうだ。

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先頭形状はトミックスの従来の700系ファミリとまったく同じだ。左からドクターイエロー、E編成、B編成、C編成(今回製品)、初出は古い製品ながらも造形は非常に優れているため、それらが引き継がれるのは当然だろう。写真では目立ちにくいが、今回製品でもヘッドライト周囲に銀色のリムが表現されている。

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ドクターイエローやE編成ではノーズ横のパーティングラインが目立っていたが、今回製品はB編成同様にまったくわからないものになっていて、造形的には完璧に近いように思える。

ただし、ノーズ床下部にある2つのハッチ・・・このへんはメインサイトの実車編を参考にしてほしいが、今回のプロトタイプのように先頭部連結器カバーの開口部が小さくなった編成は前方側のハッチは無いのが正解。なんでこんなことになっているのかというと、B編成(もっといえばE編成)の床下を流用しているから(床下の項で後述する)。

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左のB編成と同じく連結器カバーは小さいタイプとなるが、カバーの分割線のモールドは若干強くなった。B編成はほとんどわからないくらい弱かったので適正化されたといってよいだろう。

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前面窓のワイパーは従来通り印刷表現となるが、今回製品はなぜかワイパー形状がJR西日本仕様になってしまっている。JR東海車は左のドクターイエローの形状が正しい。従来の前面窓部品がモールド表現だったならともかく、柔軟に対応できる(しかもJR東海仕様は実績もある)ことがメリットの印刷表現なのに・・・

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乗務員室扉周辺の表現は客用扉窓が高くなった点を除けば、概ねB編成と変わらず。カトーのC編成は製品化時期が古いため雨どいが分割されたタイプだったが、今回製品は1本化されたタイプである。

青帯塗装の先端部が欠けたようになっているのはたぶん個体差(山側や16号車は普通だったので)。あと、空気ばねカバーのすぐ右にある床下の切り欠きはB編成・E編成にあったジャッキ穴用のもの。ボディからは切り欠きがなくなったものの、前述のとおり床下が流用なので残ってしまっている。

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1号車後位。こちらも客用扉窓が高くなった点を除けば、ドア点検ハッチがツライチであること、印刷されたものを含めてB編成と同じだ。

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車端部にある行先表示機は可動幌を採用している関係でガラスが入っていない。これは同じく可動幌を採用するE編成にも見られる仕様で、E編成はリニューアルで車端の客用扉窓にもガラスが入るようになったものの、行先表示機はそのままだった。700系は行先表示機の部分が少し傾斜しているためガラス入れが難しいのだと思うが、これによりステッカーを貼ることすらできなくなっており、つくづくモールド表現で良かったのでは?と思う。位置的にどうせ室内灯の光は来ないんだし。

行先表示機がガラス表現で、車端部にあって、可動幌というと700系しかない。500系以前はモールド表現、N700系は車端にないのでいずれも問題になってないし、可動幌ではないB編成は車端にもきっちりガラスは入っており、やはりこの問題は発生していない。筆者は可動幌という仕組み自体には特に悪い印象はないのだけど、700系C・E編成は仇花になってしまった感がある。

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裏からプラ板でもテープでも貼ろうかと思ったら、よりによって段差があるとは・・・一応方向幕を貼る案はないでもないが、今回の記事には時間が足りないので残念ながら保留。

(2019/10/13追記)
行先表示機にステッカーを貼る記事を追加
http://speedsphere.blog84.fc2.com/blog-entry-375.html

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車端がこんな有様なので、中間部の行先表示・座席表示機もガラスがない・・・わけではなく、一応ガラスはあるが奥まった表現になっていて、これもE編成と同じ仕様である(B編成は客用窓と同様にツライチに近い表現になっている)。

客用扉窓には車端でもきちんと窓が入っているが、それにくらべて客用窓はやや引っ込んだ感じになっている。おそらく、客用扉窓が車端にある偶数号車はE編成用の窓ガラスパーツを流用しているのではないだろうか。奇数号車のように客用扉窓を含むパーツは新規で作ったが、流用パーツのレベルに合わせたと。まあ、これでもカトーの700系よりはかなりマシではあるんだけど。

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某巨大掲示板で話題になっていたけども・・・上の14号車と比べて、下の12号車の行先表示機はちっちゃくね?8号車も同じような感じになっていて、その大きさはB編成の行先表示機のサイズに近い。客用扉窓が高くなっていること、ジャッキの切り欠きがないことから、少なくともB編成のボディをそのまま流用した説はないと思われる。

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同じく行先表示機が小さくなっている8号車でB編成(下)と比較。大きさはやはりB編成に近いが、四隅に丸みがある点はB編成とは異なるので、一応C編成の行先表示機にしようと思ったがサイズを間違えた、という印象を受けた。早い話、エラーやポカミスの類だろう

その他の箇所では、グリーン車マークや号車番号の位置、客用扉窓高さ、ジャッキの切り欠き有無など、C編成とB編成の違いがきちんと再現されているのだが・・・

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ちなみにカトーのC編成はこんな感じ。四隅の丸さが少々足りない気もするが、サイズ的には適切だと思う。

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号車は失念したが上が行先表示機の大きさが正しい号車のボディ、下が8号車のボディで裏側の刻印が異なる。構造に特に違いはないのだが、B編成は生産終了品になっているので、ボディの一部はC編成用に金型改修したのかもれない。行先表示機の大きさの違いもそんな中で発生したんじゃね?程度にしか筆者の知見では想像できないが・・・

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B編成では控えめだった屋根上の滑り止めのモールドは結構強め。E編成よりも強い。1号車屋根上の無線アンテナの形状は差が見られない。

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車端の高圧線ジョイントはいつもの形状だが、今回は6・11号車の博多寄りにある大型ジョイントも再現している(左)。これはB編成でもカトーC編成でも再現していない部分でありポイントが高い。

4・5、8・9、12・13号車間にある傾斜型ケーブルヘッドはB編成のそれとまったく同じだった。

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3号車(左)と14号車(右)の終端処理は可動幌の関係もあってB編成のように妻面への引き込みまでは再現していないが、特に問題ないレベルだと思う。

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写真は8号車の博多寄り(ケーブルヘッドじゃない方)の滑り止め表現で、カトー(左)が2本で渡しているのに対し、トミックスの今回製品(右)は4本で渡している。トミックスは2本で渡しているのが2・3、14・15号車間だけで他は4本、カトーは先頭車と次位の車両、ケーブルヘッド部分だけが4本で他は2本という差がある。

どちらかが間違っているのかと思い手持ちの動画を調べてみたら、どうも滑り止めのパターンがN700系と同じ4本に改修されたようだ。2008年くらいの動画ではカトーのパターンだったのに対し、2011~2012年くらいの動画ではトミックスのパターンの滑り止めになっている編成が確認されており、全検のタイミングで順次改修していったのだろう。したがって、発売時期による差が出ただけであり、どちらとも正しいといえる。

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パンタグラフ本体、ガイシ覆い、遮音板がグレーである以外はB編成と全く同じ。パンタ周りの滑り止めもきちんとJR東海仕様になっており、忠実に再現されている。

●2021/3/14追記
デテロニー様より、パンタカバー車端側の高圧線ジョイントの形状がB編成(JR西日本車)の形状になっているとの情報をいただきました。本来はカトーの700系のように、カバーから直接高圧線が生えているような表現が正しい。パンタカバーを共用したからだと思いますが、気づかなかった・・・

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B編成ではわずかにアイボリーがかっていた感じだが、今回はピュアホワイトというか、同社のN700系製品に近い白になった。光沢はそこそこある感じで、300系さよなら仕様やE7系ほどではないけど、B編成よりはかなりある。床下のグレーの明るさの違いもきちんと再現できている(B編成の方が明るい)。

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側面の700系ロゴはB編成と同じ。

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号車番号は印刷済みだが、車番は印刷されておらずインレタで表現することになる。このあたりの事情はB編成と同じだ。収録編成はC49・51・52・54編成。700系は禁煙車の位置が変遷しているので、禁煙マークは印刷されておらずインレタ表現となる。時代ごとの禁煙車の変遷についてはメインサイトのレビューに記述があるので参考にしてほしい。前述の屋根上の滑り止めの状態からすると、忠実にやるなら2011年以降の姿と捉えるのがよいと思われ。

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ヘッドライトはきれいに点灯するがいまだにトホホな黄色LED。

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室内パーツは可動幌なのでE編成タイプになると思ったが、以外もB編成と同じ構成だった。TSカプラー固定用の穴も残っているが、可動幌はボディ側に実装されるし通電カプラーにも干渉しないので問題ないということだろう。

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前述のとおり、床下はB編成、さらに元をたどればE編成の流用が主である。ただし、一応「700系」と同一形式ではあるので、C編成とB編成の床下は基本的には同じ。違いといえばB編成(上)では横長のダクトがC編成(下)では正方形に近いものになっている程度で、ダクトの数も一致している。このあたりはメインサイトに床下の比較があるので参考にされたい。

したがって、B編成床下を流用しつつも、上記のダクト形状が異なる床下のみ新規制作して対応しているので、基本的にはC編成の床下として問題はない。ただし、先頭車は横長ダクトがないことから新規の床下が用意されず、前述のようにノーズ下のハッチ有無、ジャッキ穴の切り欠きが残ってしまったという訳。ちなみに、初出はE編成用であるためハッチの有無についてはB編成でも実車と異なっている。

メインサイトで書いたB編成の「パターン」に当てはめてみるとこんな感じに。
1号車:パターンA
2号車:新規、パターンBに相当
3:号車:パターンC 
4号車:新規、パターンBに相当
5号車:新規、パターンDに相当(動力車)
6号車:パターンC
7号車:新規、パターンBに相当
8号車:パターンE
9号車:パターンE
10号車::新規、パターンBに相当
11号車:パターンC
12号車:新規、パターンFに相当
13号車:新規、パターンDに相当(動力車)
14号車:パターンC
15号車:新規、パターンBに相当
16号車:パターンG

新規床下のうち、4号車のパターンBは前述のJR東海型ダクトが2組あるので、12号車で使用されているパターンFを使った方がダクトの位置が少し違うだけで適切だと思った。カトーは4号車が正、12号車側が代用とトミックスと逆だけどもそうなっている。

先頭車が少々惜しいものの、床下についてはまあまあやってる方だなという評価。なお、JR東海の車両とはいえドクターイエローの床下は流用されていない(できるものがない)。

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JR東海タイプの台車は通電カプラー対応のドクターイエロー用が既にあるので特に問題なく流用されている。先頭部の台車は台車カバーの干渉を避けるように両端の軸バネが省略されているが、中間部はちゃんと再現されるように作り分けている。

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B編成ではTSカプラーによる固定式の外幌だったが、今回製品は可動幌+通電カプラー(フック・U字型)という同社の標準的な仕様になった。800系のような外幌レスにならなかったのでひとまず安心。可動幌はE7系や0系0番台では四角い形状になってしまっていたが、今回はE編成、ドクターイエローのようにH型断面になった。ローリングダンパも控えめながらモールドされている。

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可動幌がH型断面になっているのはE7系等の反省から・・・という殊勝なものではなく、E編成やレールスターの可動幌がそのまま使えるし、実際使っているから、というのが実情だろう。

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連結間隔、連結部の見た目はトミックスの標準的な姿で収まっている。

●総評

トミックスには元々700系の製品は存在しているわけなので、今回のC編成も基本的にはそれらの延長線上にある製品だと思った。TSカプラーを採用したB編成はやや異端だけども、良くも悪くもガワが変わっただけといえるだろう。もともと造形とか基本的な部分は問題ないわけだし、車端の行先表示機や黄色LEDのように20年くらい前の仕様がポロリと出てしまうのだけど、他の製品(300系とか)でも古い設計のまま引きずってる製品もあるわけで、新規性を期待しすぎるのもアレだ。なので、このくらいは許容していいのかもしれない。屋根上の大型ジョイントの再現など、従来より良くなった個所もあるのだから。

一方、8・12号車の行先表示機や前面窓ワイパーの形状など、「それさえなければ」というようなポカミスが非常に残念だ。特に前者は公式の情報室でもアピールしていたC編成ならではのポイントなわけで、「部品流用で実車と異なる点があります」とはレベルが違う。「手を動かして直せ」「気にしなければいい」・・・それでもいいかもしれないが、そもそもきちんとしたものを提供できていないのだ。個人的にはミスとしか判断できないものを「仕様」だといわれても、納得できない。

今後、間違いなく「さよなら運転」仕様は発売されるだろうし、個人的にはC55編成以降や「AMBITIOUS JAPAN」仕様といったバリエーションにも期待しているが、その際には8・12号車の行先表示機は修正されることを切に望む。また、修正されたボディをテックステーション等で発売しフォローする等の対応も望みたい。全体的なクオリティが悪くないだけに、こんなところで評価を落とすのは情けないしもったいない。

●2019/6/16追記
行先表示機のサイズについては、後にメーカーより正式にリコール対応が発表された。

p.s.
今回は新しいカメラ、パナソニックのコンパクト1インチセンサー機「DC-TX2」で撮影した。これまで使用していた富士フィルムのX-S1よりマクロが寄れないものの画質は明らかに上で、とりあえず模型撮りでも結構イケると判断。コンパクトなので机の上での取り回しもよい。今後のレビューはしばらくこのカメラでいってみたい。なお、X-S1は誤作動が多くなってきたので現在修理中である(連休直前に出したので手元にない)。
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友輝

Author:友輝
SpeedSphere管理人
(メインサイト(休止中))

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