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マイクロエース 小田急30000形「EXEα」レビュー

2018年5月、マイクロエースより小田急30000形ロマンスカー「EXEα」が発売された。

・A6596 小田急30000形・EXEα・リニューアル 基本6両セット 33,400円
・A6597 小田急30000形・EXEα・リニューアル 増結4両セット 20,700円


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旧「EXE」の発売より7年後に発売された「EXEα」。リニューアルは順次行われているため、実車でもこの並びは見られる。

1996年デビューの30000形ロマンスカー「EXE」は車歴約20年でリニューアルされることになり、2017年に第1編成(30051F+30251F)が更新改造をうけ、外装・内装・走行機器が変更され「EXEα」となった。2018年6月現在、2本が改造済みで最終的には7編成全てが改造される予定となっている。

「EXE」のNゲージとしては2011年5月にマイクロエースから発売されており、「EXEα」もその流れで同社から2018年5月に発売された。旧「EXE」のレビューは当サイトの記事としては初期のものだったし(当初はブログで書いたが後にメインサイトに移動)、好きな車両でもあるので、7年後に更新後の姿の製品のレビューを書くのは個人的には感慨深い。

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今回も6両セット+4両セットを併結した10両フル編成で楽しめる。価格は・・・後述する。

実車がそうであるように、今回製品は従来の旧「EXE」製品がベースとなっているので、興味があればメインサイトの「EXE」の記事も参考にされたい。非常に出来の良い前製品だったけど、今回はどうだろうか。

なお、今回は実車の写真を用意できていないのはご了承願いたい(筆者が住む横浜市は小田急とは縁遠いのよ)。

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非貫通型・貫通型共に造形は従来製品と変わらないが、塗装は実車と同様にムーンライトシルバー+ディープグレイメタリックに白とオレンジバーミリオンの帯に変更されている。

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非貫通・貫通型共に、塗装やロゴの位置は忠実に再現。非貫通側は塗り分け位置がほんのわずかに高い感じがするが許容範囲だと思う。白いラインも細いのにきちんと出ている。

貫通側は旧「EXE」が6号車、「EXEα」は7号車なのでスカートのハッチが逆になっている。また、旧はTNカプラーに換装している。

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旧「EXE」では前面の愛称表示機の照明が上部に漏れないよう、前面窓のブラックアウトが凸状になっていたが、「EXEα」では表示機が撤去されたため模型でも光漏れを考慮する必要がなくなり、ブラックアウトの塗り分けが実車に近いものとなった。

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「EXEα」では貫通型先頭車の運転席横に小窓が追加されたが、模型でもボディ(側面)を新規制作してもちろん再現。乗務員室扉のノブや下部にある手かけも微妙に変化しているし、旧「EXE」の扉の横にあった縦2連の側灯も「EXEα」ではなくなっている(次の画像でも後述)。メタリック塗装ということもあり、パーティングラインが若干目に付くのは仕方ないかな。

オレンジバーミリオン帯の収束も十分頑張っているといえるだろう。乗務員室の表記が漢字の縦書きから「MSE」等でも見られるアイコンに変更され、窓から扉横に移動していることがわかる。

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3号車山側は売店設備に代わり多目的室が設置され、小窓が増設された。また、「EXEα」は客用扉を交換しているので窓の形が四角い。客用扉の左側に見えるドアコックも印刷表現からモールド表現に変わり、側灯も扉横上部に新設されている。これはリニューアルに際し行われた改造で、前の画像で縦2灯の側灯がなくなったのはこのためである。

「Odakyu」ロゴ下部にある小さなハッチの形状も変わっていて、これは実車どおりかはわからないが、とにかくボディの新規制作により「EXEα」化による変化点を余すことなく再現している。

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屋根上にも変化がみられる。旧「EXE」にあった2本の車内電話用アンテナや売店設備のキノコ型ベンチレータの撤去を再現したほか、「EXEα」では写真右側のランボード延長や配管の追加が行われており、これらは「とれいん」2017/7のディテール写真を見る限り、実車の変更を忠実に再現できている。そう、側面だけでなく屋根上も新規制作されているのだ(クーラーは従来と同じパーツのようだ)。

また、写真は用意できなかったがパンタも補助ロッドが細いものに変更されている。

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先頭車の信号炎管が撤去されたのも再現。別パーツによる表現だったので屋根板には穴が開いていたはずで、それが埋まっているということはここも新規ということになる。屋根の色はやや明るいグレーに変更された。

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旧「EXE」では連結したら見ることができない車端ドアにある「EXE」ロゴを入れていたが、今回はドットパターンに変更。実車もそうなのかわからないが(まだ乗ってないんで)、ここも抜かりなしといえる。妻面モールドについては変化は見られない。

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印刷も細かいところまでよく出ている。カスレが若干あるが個体差だろう。ムーンライトシルバーとディープグレイメタリックの粒状感はNゲージとしては一般的なレベルだと思う。下部のガンメタっぽいメタリックグレーは光沢がそれなりにあり、光の変化で見え方が結構変わる。

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「EXEα」は外観や内装だけでなく、サハから電装された車両もあるくらい走行機器類も大きく変更されている。余談だが旧「EXE」はM車よりもT車の比率が高く、これは歴代の小田急車両でも唯一の特徴である。「EXEα」ではMT比は1:1に改められた。

そんなわけで、床下機器も変化しており(変わっていない車両もあるが)、それらの変更も余すことなく再現。上と下それぞれ2枚、どことどこが変わったのかわかると思う(動力車は相変わらずメタボ・・・)。「EXEα」では最近の小田急の仕様に合わせてグレーになっている。

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実車ではヘッドライトがLEDに変更されたが、模型では旧「EXE」とあまり変わらず電球色っぽい感じ。もっと白い方がいい気もするが、実車の写真は案外黄色っぽい感じもするので間違いとまでは言えないか。テールライトは従来通りである。従来製品同様、通過表示灯の準備工事(?)は残されているが当然実装されていない。

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室内パーツはグレーから明るいブルーに変更。窓が大きい「EXEα」に室内灯を入れるとかなり目立つはず。枕カバーはメタリックになっていて実車っぽい。従来製品の時点で見ないところまで作り込んだ売店設備は特に変更ないことから、室内は従来と同じパーツである。見えない個所だから特に問題ないだろう。

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「EXEα」では前面の表示機が廃止されたのでステッカーの収録は側面のみである。3色LEDからMSEと同じ白色(フルカラー?)に変更されたのを再現している。種類はあまりなくて江ノ島線系統は未収録、さすがに3月に登場したばかりの「モーニングウェイ」も未収録である。

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貫通型先頭車は併結を楽しむ場合は従来製品のように付属のカプラーに交換する必要があるが、今回はあの珍妙なアーノルドカプラーではなくマイクロカプラーに変更された。ただし、「MSE」と異なり電連が省略されたタイプである。見た目は劣ってしまったが、「MSE」カプラーの切り離しは特殊だったので一般的なマイクロカプラーと同じ操作性なったのは良いかも・・・とはいっても、やはり大正義TNカプラー(JC25の下段電連切り落とし)に変えたいところ。ただでさえ高額な製品にさらに出費するのは憚られるけども。

また、「MSE」と同様に「貫通扉が開いた状態の」パーツが付属する。「MSE」の使い回しではなく「EXE」専用品。したがって旧製品にも使えるが調色が難しい。取り付けは両面テープで行う。テープも付属するが市販品なら粘着が弱いタイプを使ったほうがよいだろう。

●総評

概ね旧製品をベースにしているので、長所も短所も基本的には引き継いでいるが、そのうえで「EXEα」化で変化した個所はボディ・屋根上(既存金型の差し替えだと思う)、床下を新規作成して「これでもか」というくらい再現している。塗装印刷も相変わらず見事だし付属パーツもグレードアップ。とにかく妥協や手抜きを感じないのだ。新幹線模型のレビューをしていると(ライトユーザが多いせいか)結構容赦ない流用や「タイプ」的な手抜きを見せられることが多いだけに余計にそう思う。

なので、「EXEα」を再現した模型としては非常に出来の良い、エクセレントな製品と評価したい。

●ただ、価格がね・・・

以下、6両セット+4両セット=10両セットの値段(税抜き)。

旧「EXE」(2011年)  19,400円+15,200円=34,600円
「MSE」(2014年) 24,100円+16,700円=40,800円
「EXEα」(2018年) 33,400円+20,700円=54,100円

旧「EXE」→「MSE」が約3年で5,000円程度の値上げだったのに対し、「MSE」→「EXEα」では4年で15,000近く値上がりしており、同じ製品ベースで考えれば旧「EXE」→「EXEα」の7年で20,000円くらい上がっている。いくら今回製品の出来が良いといっても大きく仕様が変わったわけでもないし、正直尋常じゃない値上がりだと思う(投機商品じゃあるまいし)。なので、正直お勧めしにくいのだ。

もちろん、これは生活必需品ではなく趣味のものだ。「嫌なら買うな」は究極の正論だし、筆者も実はなんでもかんでも「高い高い、安く安く」という考え方は嫌いだ。だけども限度というものはある。プラ製完成品Nゲージとしてはいくらなんでも高すぎだとはいいたい。なんでこんなこと書くのかというと、マイクロエースのNゲージメーカーとしての先行きが心配だからだ。

同社の生産はすべて中国で行っているが、ご存知の通り近年の経済発展で中国では人件費が高騰している。衣料品とかなら東南アジアに生産をシフトしているわけだけど、Nゲージはノウハウも必要だと思うので同じようにはいかないのだろう。かといって国内回帰もできない。となると、中国側のコストが高騰するなら販売価格に転嫁するしかない。発売が予定されている小田急9000形登場時は34,200円+24,100円=58,300円と「EXEα」よりも高くなるが、なすすべも無いのだろう。

でも、学生さんとか若い人たちがついてこれなくなるのは心配。というか、大人でもキツイ領域に入りつつあると思う。このまま値上げするに任せていたら、そのうち誰も買わなくなる(買えなくなる)。誰もがNゲージに無尽蔵にお金を出せるわけではないからだ。

初期の頃に比べたら製品の質も上がってきているし、他社がやらない車両を製品化してくれるという意味では貴重なメーカーだ。値上げを続けた結果売れなくなって撤退、というのは寂しいし惜しい。同社も悩んでると思いたいし、前述の正論に胡坐をかいているとは思いたくないが、値下げまではいわないでも、これ以上の価格の高騰はなるべく進まないように望みたい。

次は70000形「GSE」はよ、となるが現時点ではマイクロにはやってほしくないな。製品の出来には心配ないが、価格がまた跳ね上がりそうなので(7両編成で40,000円超えそう)。まあ、たぶんトミックスがやると思うけどね。
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