鉄道コレクション・小田急2300形登場時 プチレビュー
2018年2月に発売された、鉄道コレクションの小田急2300形(登場時)をプチレビュー。

●実車について
公式では3000形「SE」が初代となっているが、厳密にはそれよりも前から「小田急ロマンスカー」と呼ばれた車両は存在しており、今回紹介する2300形は1955年(昭和30年)に登場した3代目ロマンスカーである。
1910形から開始されたロマンスカーの運転は好評を博し、2代目1700形が運用される頃には箱根観光客の増加に伴い増発待ったなしの状況になっていた。当然車両を増備しようとなるわけだけど、1954年には小田急初の高性能カルダン駆動車2200形が登場しており、いわば旧世代の1700形を増備する時代ではなくなっていた。一方で3000形「SE」は開発研究段階でまだまだ投入できる状況にない。そこで「SE」登場までのつなぎとして、2200形の足回りに特急用の車体を組みあわせ、急遽製造されたのが2300形である。
1910、1700形は3両編成だったが、高性能車である2300形はM-M'ユニットを組むため4両編成となった。当時流行だった「湘南顔」と小窓がずらりと並んだ特急車らしいいで立ちは急ごしらえとは思えないものだった。4両編成1本のみ制作され、1700形とともに特急運用に就いた。
しかし、前述したように3000形「SE」登場が計画された中で暫定的に増備された車両であり、いずれ特急運用から外される運命でもあった。登場から4年後の1959年に「SE」が4編成出揃うと、2300形は2ドアのセミクロスシートに改造され、同じく2ドアセミクロスシートの2320形とともに準特急として活躍することになった。
しかし、当時の小田急は沿線全体輸送量が急増していた時期。1963年に3100形「NSE」が登場すると準特急は廃止され、2300形は2320形とともに3扉ロングシートの一般車に格下げされることになった。2両固定編成化により中間車の先頭車化、1・2号車の方向転換+改番、前面は貫通扉付きのいわゆる「小田急顔」になるという大改造を受け、機器がおおよそ共通化していた2200形などと「FM系」と呼ばれるグループに組み込まれることとなり、特急車の風格は完全に失われてしまった。それでも、他のFM系と比べて100mm広い車体幅、ドア間に狭窓4枚(他は広窓3枚)、パンタが連結面側にある(他は前パン)など、原形の面影が少し残っていた。
一般車化された後は1982年まで活躍、その後は富士急行に譲渡され1995年に廃車となった。
●模型について
2300形の模型はガレージメーカーの真鍮製キットは存在していたが、この度、トミーテックの鉄道コレクションとして発売された。手軽にNゲージ化することができ、古い車両との相性がよく、ロマンスカーでは初代1910形、2代目1700形がすでに発売されており、残されていた2300形もようやく発売されることになった。3000形「SE」以降が大手メーカーのNゲージで揃い、70000形「GSE」も製品が出るのは時間の問題。小田急ロマンスカーはすべての形式が入手しやすいNゲージで揃うことに。


「SE前ロマンスカー」の1910・1700形と共通したイメージのパッケージデザイン。今回もTRAINS名義の店舗限定品で一般流通品ではない。車両のほか、動力台車用レリーフ、ヘッドマークのステッカー、展示用レール4両分が付属する。筆者は横浜鉄道模型フェスタで入手した。
筆者は2300形は一般車になった後しか知らないし、そもそも乗ったことがあったかどうかも覚えていない(FM系の中から2300形を見分ける方法を知ったのは廃車前後くらいだった)。なので自分で撮った実車の写真はないし、模型としても比較できる他製品がないから「プチ」レビューになってしまうのだけど・・・それでは、ざっと見て行こう。

非貫通2枚窓のいわゆる「湘南顔(国鉄80系風)」。1700形3次車や2200形も2枚窓だったが、こちらは後退角があるのと金太郎塗りのせいでより「湘南顔」に近い。書籍などで実車の写真と見比べる限り、造形については特に問題なさそうだ。ヘッドライト・テールライト・通過表示灯のすべてにレンズが入っている。

ワイパーが「ヘ」の字型で妙な印象を受けるが、これは実車通りである。車体側と窓側にぞれぞれモールド+銀塗装で表現。2300形は1編成しか存在しなかったので車番は印刷済み。
1つ前の写真でもわかるが、ダークブルーとオレンジの塗り分けに塗り重ねのようなものがある。マイクロエースの0系1000番台でも同じような処理がなされていて、塗り分けをきれいに出すためのもので実際効いていると思うが、当製品では微妙に色味の違いがあったり、左の2304号のようにベースの塗り分けが透けて見えてしまっている。この写真はかなり拡大しているとはいえ、肉眼で見てもわかってしまうレベルなのは残念。

特徴である狭窓がずらりと並ぶ特徴は良く出ている。写真だと車高がやや高めに見えるが、プラ車輪のままとはいえ実測で6.5mmなのでまずまずの数値である。

1700形もそうだったが、実車ではエッチング製で立体感のある特急マークはシンプルに印刷で表現。床下機器がちょっと外れちゃってるけど・・・

鉄道コレクションではすでに2200形の製品があったことから(第3弾、すでに10年以上前の製品である)、台車や床下は実車同様に同じパーツを使用。台車(アルストム、FS203)は成形色が黒に変更されている。床下機器も2200形からの流用となるが、2200形では4種類のパーツがあったのに今回は3種類しか使われていない。これは実車がそうだったのか、筆者がハズレ品を掴んだ可能性もあるが、たぶん製品が間違っている気がする。まあ、第3弾は改造用にとかなりストックがあるのでパーツ持ってくればいいんだけども。

2302号の海側はトイレがあり、実車通り擦りガラス風になっている。写真は省いたが連結面を挟んで対になる2303号には山側に放送室があり、ここも摺りガラス風の表現になっている。ただし、放送室の窓には装備されていた保護棒は省略されている。室内パーツにはさすがにトイレ・放送室の再現はないが、2303号の海側中央には喫茶カウンターが再現されている。
2300形の客用扉は両先頭車にしかなく、中間2両には非常用扉が片面にあるだけだ。この極端に客用扉が少ない設計は前作1700形から引き継いだものだ。客用扉は1910形、1700形に続き引き戸が採用されているが、この後のロマンスカーの客用扉は「SE」「NSE」は手動ドア、「LSE」「HiSE」「RSE」は折り戸と特殊なものが多く、「EXE」まで引き戸はなかったことになる。「VSE」はプラグドアが採用されたが「MSE」「GSE」で引き戸に戻っている。

パンタは鉄コレお馴染みの軟質プラ製。配管は片側に2本出ているだけのシンプルなものだが、「小田急電車回顧」とか見ていると反対側からも出ている気がする。

「SE」前ロマンスカー(左から1910形、1700形、2300形)は地味顔だけど、ヘッドマーク付けると特急車っぽく見栄えする。丸く切り取るのが大変だったが、それぞれ「特急」「はこね」「明神」を設定した。なお、1910形は動力組み込み・パンタ交換などでN化している。
前述のとおり、2300形の特急としての活躍は4年程度で、パッケージの説明書きにもあるように確かに「短命に終わったロマンスカー」ではある。しかし、1910形はさらに短く2年、1700形も7~8年程度で、戦後から高度経済成長期にかけての輸送人員増加や車両の高性能化などに翻弄され、どうしてもプロトタイプ的にならざるを得なかった「SE」前ロマンスカーは押しなべて短命だった。
しかし、いずれも一般車に格下げ改造されてその後の活躍の方が長かった点も共通していて(「SE」以降のロマンスカーで格下げ改造されたものはない)、時代の流れで急遽ドロップアウトしてしまった「HiSE」「RSE」よりも(小田急の車両としては)長生きしていた。特に2300形はなにかと「短命」を強調されることが多いけれど、4000形に機器を譲る目的でやはりドロップアウトしてしまった1910形も1700形もと比べても、「小田急の車両」として全うできたんじゃないか個人的には思っている。
●総評
あまり模型のレビューはしてない気もするが(汗)総評を。
品質は・・・いつもの鉄コレクオリティであり、正規のNゲージの品質は期待しないほうがよい。まあ「出してくれただけでもありがたい」製品ではある。品質はアレだけどもモデリングは決して悪くないので、手を加えればかなり良いものになるポテンシャルはあると思う。
さて、これにて「SE前ロマンスカー」は全形式出てしまったわけだけども、TARINS名義で次は何を出すんだろうか。個人的には1700形の1次 or 2次車(すでに出ているのは3次車で、結構差があるのだ)あたりが希望かな。2300形も一般化改造された晩年型も欲しい。今回、第3弾の2220形と合わせて晩年型を作ろうかと2セット買う予定だったがやめてしまった。なんか、そのうち出そうな気がするので・・・

●実車について
公式では3000形「SE」が初代となっているが、厳密にはそれよりも前から「小田急ロマンスカー」と呼ばれた車両は存在しており、今回紹介する2300形は1955年(昭和30年)に登場した3代目ロマンスカーである。
1910形から開始されたロマンスカーの運転は好評を博し、2代目1700形が運用される頃には箱根観光客の増加に伴い増発待ったなしの状況になっていた。当然車両を増備しようとなるわけだけど、1954年には小田急初の高性能カルダン駆動車2200形が登場しており、いわば旧世代の1700形を増備する時代ではなくなっていた。一方で3000形「SE」は開発研究段階でまだまだ投入できる状況にない。そこで「SE」登場までのつなぎとして、2200形の足回りに特急用の車体を組みあわせ、急遽製造されたのが2300形である。
1910、1700形は3両編成だったが、高性能車である2300形はM-M'ユニットを組むため4両編成となった。当時流行だった「湘南顔」と小窓がずらりと並んだ特急車らしいいで立ちは急ごしらえとは思えないものだった。4両編成1本のみ制作され、1700形とともに特急運用に就いた。
しかし、前述したように3000形「SE」登場が計画された中で暫定的に増備された車両であり、いずれ特急運用から外される運命でもあった。登場から4年後の1959年に「SE」が4編成出揃うと、2300形は2ドアのセミクロスシートに改造され、同じく2ドアセミクロスシートの2320形とともに準特急として活躍することになった。
しかし、当時の小田急は沿線全体輸送量が急増していた時期。1963年に3100形「NSE」が登場すると準特急は廃止され、2300形は2320形とともに3扉ロングシートの一般車に格下げされることになった。2両固定編成化により中間車の先頭車化、1・2号車の方向転換+改番、前面は貫通扉付きのいわゆる「小田急顔」になるという大改造を受け、機器がおおよそ共通化していた2200形などと「FM系」と呼ばれるグループに組み込まれることとなり、特急車の風格は完全に失われてしまった。それでも、他のFM系と比べて100mm広い車体幅、ドア間に狭窓4枚(他は広窓3枚)、パンタが連結面側にある(他は前パン)など、原形の面影が少し残っていた。
一般車化された後は1982年まで活躍、その後は富士急行に譲渡され1995年に廃車となった。
●模型について
2300形の模型はガレージメーカーの真鍮製キットは存在していたが、この度、トミーテックの鉄道コレクションとして発売された。手軽にNゲージ化することができ、古い車両との相性がよく、ロマンスカーでは初代1910形、2代目1700形がすでに発売されており、残されていた2300形もようやく発売されることになった。3000形「SE」以降が大手メーカーのNゲージで揃い、70000形「GSE」も製品が出るのは時間の問題。小田急ロマンスカーはすべての形式が入手しやすいNゲージで揃うことに。


「SE前ロマンスカー」の1910・1700形と共通したイメージのパッケージデザイン。今回もTRAINS名義の店舗限定品で一般流通品ではない。車両のほか、動力台車用レリーフ、ヘッドマークのステッカー、展示用レール4両分が付属する。筆者は横浜鉄道模型フェスタで入手した。
筆者は2300形は一般車になった後しか知らないし、そもそも乗ったことがあったかどうかも覚えていない(FM系の中から2300形を見分ける方法を知ったのは廃車前後くらいだった)。なので自分で撮った実車の写真はないし、模型としても比較できる他製品がないから「プチ」レビューになってしまうのだけど・・・それでは、ざっと見て行こう。

非貫通2枚窓のいわゆる「湘南顔(国鉄80系風)」。1700形3次車や2200形も2枚窓だったが、こちらは後退角があるのと金太郎塗りのせいでより「湘南顔」に近い。書籍などで実車の写真と見比べる限り、造形については特に問題なさそうだ。ヘッドライト・テールライト・通過表示灯のすべてにレンズが入っている。

ワイパーが「ヘ」の字型で妙な印象を受けるが、これは実車通りである。車体側と窓側にぞれぞれモールド+銀塗装で表現。2300形は1編成しか存在しなかったので車番は印刷済み。
1つ前の写真でもわかるが、ダークブルーとオレンジの塗り分けに塗り重ねのようなものがある。マイクロエースの0系1000番台でも同じような処理がなされていて、塗り分けをきれいに出すためのもので実際効いていると思うが、当製品では微妙に色味の違いがあったり、左の2304号のようにベースの塗り分けが透けて見えてしまっている。この写真はかなり拡大しているとはいえ、肉眼で見てもわかってしまうレベルなのは残念。

特徴である狭窓がずらりと並ぶ特徴は良く出ている。写真だと車高がやや高めに見えるが、プラ車輪のままとはいえ実測で6.5mmなのでまずまずの数値である。

1700形もそうだったが、実車ではエッチング製で立体感のある特急マークはシンプルに印刷で表現。床下機器がちょっと外れちゃってるけど・・・

鉄道コレクションではすでに2200形の製品があったことから(第3弾、すでに10年以上前の製品である)、台車や床下は実車同様に同じパーツを使用。台車(アルストム、FS203)は成形色が黒に変更されている。床下機器も2200形からの流用となるが、2200形では4種類のパーツがあったのに今回は3種類しか使われていない。これは実車がそうだったのか、筆者がハズレ品を掴んだ可能性もあるが、たぶん製品が間違っている気がする。まあ、第3弾は改造用にとかなりストックがあるのでパーツ持ってくればいいんだけども。

2302号の海側はトイレがあり、実車通り擦りガラス風になっている。写真は省いたが連結面を挟んで対になる2303号には山側に放送室があり、ここも摺りガラス風の表現になっている。ただし、放送室の窓には装備されていた保護棒は省略されている。室内パーツにはさすがにトイレ・放送室の再現はないが、2303号の海側中央には喫茶カウンターが再現されている。
2300形の客用扉は両先頭車にしかなく、中間2両には非常用扉が片面にあるだけだ。この極端に客用扉が少ない設計は前作1700形から引き継いだものだ。客用扉は1910形、1700形に続き引き戸が採用されているが、この後のロマンスカーの客用扉は「SE」「NSE」は手動ドア、「LSE」「HiSE」「RSE」は折り戸と特殊なものが多く、「EXE」まで引き戸はなかったことになる。「VSE」はプラグドアが採用されたが「MSE」「GSE」で引き戸に戻っている。

パンタは鉄コレお馴染みの軟質プラ製。配管は片側に2本出ているだけのシンプルなものだが、「小田急電車回顧」とか見ていると反対側からも出ている気がする。

「SE」前ロマンスカー(左から1910形、1700形、2300形)は地味顔だけど、ヘッドマーク付けると特急車っぽく見栄えする。丸く切り取るのが大変だったが、それぞれ「特急」「はこね」「明神」を設定した。なお、1910形は動力組み込み・パンタ交換などでN化している。
前述のとおり、2300形の特急としての活躍は4年程度で、パッケージの説明書きにもあるように確かに「短命に終わったロマンスカー」ではある。しかし、1910形はさらに短く2年、1700形も7~8年程度で、戦後から高度経済成長期にかけての輸送人員増加や車両の高性能化などに翻弄され、どうしてもプロトタイプ的にならざるを得なかった「SE」前ロマンスカーは押しなべて短命だった。
しかし、いずれも一般車に格下げ改造されてその後の活躍の方が長かった点も共通していて(「SE」以降のロマンスカーで格下げ改造されたものはない)、時代の流れで急遽ドロップアウトしてしまった「HiSE」「RSE」よりも(小田急の車両としては)長生きしていた。特に2300形はなにかと「短命」を強調されることが多いけれど、4000形に機器を譲る目的でやはりドロップアウトしてしまった1910形も1700形もと比べても、「小田急の車両」として全うできたんじゃないか個人的には思っている。
●総評
あまり模型のレビューはしてない気もするが(汗)総評を。
品質は・・・いつもの鉄コレクオリティであり、正規のNゲージの品質は期待しないほうがよい。まあ「出してくれただけでもありがたい」製品ではある。品質はアレだけどもモデリングは決して悪くないので、手を加えればかなり良いものになるポテンシャルはあると思う。
さて、これにて「SE前ロマンスカー」は全形式出てしまったわけだけども、TARINS名義で次は何を出すんだろうか。個人的には1700形の1次 or 2次車(すでに出ているのは3次車で、結構差があるのだ)あたりが希望かな。2300形も一般化改造された晩年型も欲しい。今回、第3弾の2220形と合わせて晩年型を作ろうかと2セット買う予定だったがやめてしまった。なんか、そのうち出そうな気がするので・・・