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鉄道コレクション・小田急2200形・2320形 プチレビュー

2021年5月に発売された、鉄道コレクションの小田急2200形・2300形をプチレビュー。

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2200形(右)の初出は2006年発売の鉄道コレ第3弾であり、かなりの古株。今回は2320形(左)をラインナップに加え、各種改良してオープンパッケージ版で発売となった。

●実車について

2200形は1954年に登場した、小田急初のカルダンドライブ・ユニット方式等を採用した、いわゆる「高性能車」と呼ばれる車両である。のちに登場した派生車を含めて簡単に説明する。

・2200形
最初に登場した形式で、片開3扉ロングシートの2両固定編成が9本在籍していた。前面は非貫通型で、湘南型風の大きな2枚窓を持つのが特徴。後に行先表示機の追加やヘッドライト2灯化などの改造が行われているが、後述の形式と異なり編成の組み換えなどは最後まで行われなかった。最終増備の2217Fは正面貫通型のいわゆる「小田急顔」で、後述の2220形の2両固定編成版という趣だった。

・2220形
片開3扉ロングシートは2200形と同じながら、4両固定編成でトイレ付という特徴があり4本が在籍していた。しかし、数年後には中間車は先頭車改造が行われ2両固定編成8本となった。改造された先頭車は行先表示機が埋め込み式になったため、既存の先頭車とは顔つきが若干異なる。側面の扉窓配置は2200形と変わらないが、ドアには3種類の形態がありバリエーションが豊富だった。

・2300形
当初は2200形の下回りに特急用の車体を組み合わせた3代目ロマンスカーである(当サイトでは初代ロマンスカーは「SE」」ではなく1910形の認識)。以前鉄コレの記事を書いているのでこちらも参考のこと。4両固定編成が1本製作されただけであり、最終的には2両固定編成2本となったが、その際に既存の先頭車も小田急顔に作り直したため改造先頭車と顔つきの差はない。

・2320形
準特急用として4両固定編成が2本製作された。当初は両開2扉セミクロスシートだったが、ほどなく準特急廃止により片開3扉ロングシートに格下げ改造された。その際に中間車は先頭車改造され、2両固定編成4本となった。2220形と同様、既存先頭車と改造先頭車では行先表示機の仕様差により顔つきが異なっていた。側面の客用扉間にある3枚の窓のうち、中央の窓だけ少し狭いのが外観的特徴。

時系列的には2200形→2300形→2220形→2320形の順で登場している。駆動方式は2200(2217F除く)・2300形は直角カルダン、2220・2320形は平行カルダンである。昭和30年代の小田急は輸送力増強に追われていた時期であり、特に2300形は特急型から2度の格下げ改造が行われたほど、時代に翻弄されて短期に改造されまくっていた印象だ。いずれも1963年くらいには最終的な2両固定編成・全電動車・17.5m級3扉ロングシートで統一され、「FM系」「ABFM系」と呼ばれるグループとなった。

その後はヘッドライト2灯化、種別表示追加、電連や無線アンテナの装備、塗装変更などが行われたが基本的には大きな変化はなく、全電動車2両固定編成というフットワークの軽さから、他形式の増結用、多摩線での単独運用、4両編成・6両編成での運用、さらには「ブツ10」と呼ばれた10両編成まで登場。各駅停車から急行まで弾力的に運用されていた。しかし、20m車が増えてきた中で中型車と呼ばれたFM系は輸送力で不利なこと、非冷房だったことから徐々に8000形に置き換えられ1984年にすべて引退した。

小田急引退後は富士急行に譲渡車としては比較的多い8編成が譲渡され(FM系4形式がすべて揃っていた)、最終的には1997年まで活躍していた。また、新潟交通(廃線)にも2220形1編成が譲渡されている。保存車両としては2200形のみ現存しており、2201がロマンスカーミュージアム開館により空き家となった、海老名の元「SE」格納庫に2600形・9000形の先頭車とともに保存されている。また、山梨県笛吹市にある企業の敷地内に2211、2212が保存されている。その他辻堂海浜公園に2218、山梨県の個人所有で2327が存在したが、どちらも解体されて現存しない。

●模型について

ガレージ製品を除いた、メジャーメーカーからの製品としてはグリーンマックス(以下GM)の京急1000形キットに付属の2200形前面パーツを使用したものが最初と思われる。扉窓配置が同じというだけでその他は2200形とはかなり異なっていたが、1800形も国鉄72系の前面を変えただけのものだったし、5000形も9000形キットがベースだったりと、1980年代前半のおおらかな時代、実車に忠実であるよりもバリエーションが増やせる方がよかったのだろう。後に9000形キットから8000形を制作するためのパーツが発売されたが、それに2220形の前面も収録されており、前述の京急のキットと組み合わせて制作することができた。

本格的な製品が出てきたのは2006年になってからで、クロスポイント(GMのブランド)から2200・2220形のキットが発売された。当然専用設計されたキットであり、別パーツ化された3種類のドア、その他機器類が多数収録され、実に2200・2220形のバリエーションすべてを制作できる製品だった。ただ、2両で6,000円(しかも台車・パンタ・動力等別売)とかなり高価だった記憶がある。なお、このキットは今年8月にGMからエコノミーキットとして、価格を大幅に下げて再発売予定だ。

また、同時期に鉄道コレクション第3弾としても2200・2220形が発売された。ブラインドパッケージ版だったが、2200形は小田急時代、2220形は新潟交通譲渡後と富士急行譲渡後でモデル化。新潟交通版は社紋以外は変わらないため、そのまま2220形小田急時代としても大きな問題はなかった。鉄コレなので全体的にチープな面は否めず、GMのキットのようなバリエーションも望めなかったが全体の印象把握は良く、床下機器も専用設計のものが奢られた。GMの未塗装キットに比べたらお手軽で圧倒的に安価だったことから上手く棲み分けできていた。また、改造のべースとしてもなかなかの製品でもあった。

後に小田急の公式ショップ「TRAINS」名義で2200形の旧塗装が発売された。第3弾がベースであるため、旧塗装で活躍していた時代というより、保存後に塗り替えられた「晩年型の旧塗装」仕様だった。

2300形については2018年2月に「TRAINS」名義で特急車時代の製品が発売された。先ほどもリンク貼ったが、こちらも参考にされたい。これにより歴代ロマンスカーすべてがNゲージで揃うことになったが、一般車時代の製品は未発売である。

そして、今回紹介するのは2021年5月に発売されたオープンパッケージ版の2200形・2320形である。鉄コレとはいえ、後者はガレージ製品を除けば初のNゲージ化となる。

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オープンパッケージの鉄コレでは標準となっているパッケージデザイン。2200形は「セットA」、2320形は「セットB」となる(なぜか)。価格はそれぞれ3,564円(税込)となるが、15年前の鉄コレ第3弾の頃はブラインドパッケージとはいえ展示レール付きで500円くらいで買えたような気がする。2両なら1000円程度。

後述するが、一応第3弾の頃からグレードアップしている点もあるにはあるけど、それにしてもずいぶん高くなったなという印象。当サイトはマイクロエース製品を紹介すると決まって「高くなった」と評しているが、(最近の鉄コレ全般にいえる話だけども)鉄コレも正直大概である。

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ブラインドパッケージ時代と異なり、展示用レールは付かない(無くても特に困らないが)。パーツは屋根に取り付ける無線アンテナだけで、動力ユニット用の台車枠は付かないが、指定の動力ユニット(TM-06)側に付属してくるので問題ない。あとは写真の行先・種別ステッカーが付くだけである。今回製品はいずれも印刷済みだが、内容を変えたい場合はこれで貼りかえる。

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2200形は2209F(右が新宿寄り2209、左が小田原寄り2210)がプロトタイプ。鉄コレ第3弾の2013Fから変更されている。鉄コレはパンタ畳めないので、前パン車両だと画像の縦方向が高くなりがちだ。

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2320形は2321F(右が新宿寄り2321、左が小田原寄り2322)がプロトタイプ。メジャーメーカーから発売されるNゲージとしては初の製品化である。

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ヘッドライトや行先表示機の意匠はいわゆる「小田急顔」に準じている2200形だが、大きな2枚の前面窓の顔は「ネコ」の異名を持つ。今でこそ3000形、5000形のように小田急通勤車の非貫通型は珍しくもなくなったが、それまでは開業当時の車両や、国鉄や帝都電鉄(現在の京王井の頭線を運営していた会社)から導入した他社由来の車両でもない限り、頑なに貫通型にこだわっていた小田急通勤車の歴史の中でも、2200形はかなり異彩を放っていた存在だった。

実車と比べて窓の間隔がやや広いかな?と思ったが、全体的な印象は特に問題ないといえるだろう。右の新宿寄りにはジャンパー線のモールドがあったりと、きちんと作り分けられている。初出が15年前とはいえ、すでにリアル志向になっていた時代ではあるから当然かもしれないが。

行先表示は印刷済みで、種別表示は空白(各停を示す)。多摩線の線内折り返し列車を想定したようだ。FM系が多摩線で走っていた当時は唐木田駅はなく小田急多摩センター止まりだったが、新宿までの直通列車はないに等しく、その意味では並走する京王相模原線に水をあけられていた。現在は新宿まで10両編成の直通急行が普通に走っているし、一時期メトロからの直通やロマンスカーも走ってたのだから、隔世の感がある。

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一方、2320形は貫通扉付きの典型的な「小田急顔」である。実車の項でも書いたが、既存先頭車(右)と改造先頭車(左)では行先表示機の仕様が異なり、顔つきもやや差がある。なお、2220形にも同様の差異が見られる。実車は両側の窓がもう少し縦長な印象があるが、十分許容範囲だと思う。

こちらは「急行」「新宿」が印刷済み。FM系は高性能車だったこともあり、5000形や9000形といった大型車と併結した急行運用も珍しくなかった。

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2200形のサイドビュー、上が2209、下が2210。左が新宿寄りなので山側となる(車体に関しては海側も変わらないが)。

片開き3ドアで間に3枚窓というのは京王とか京急(前述のとおり、昔は京急1000形のキットから2200形を作ることができた)でも見られたスタイルで、特に格下げ改造等を受けていない2200・2220形は整った印象である。模型でもそのあたりはよく再現できていると思う。客用扉に対して車体後方側の1つは戸袋窓になっていて開閉できないが、模型でもよく見ないとわからない程度ながら開閉できる窓には少し段差があり作り分けられている。

2200形の客用扉はプレスドア(窓の下に四角い枠が2つ見える)で、最終編成2217F以外は全車そうなっている。この車両が現役だった頃は筆者は小学生だったが、同じくプレスドアだった1800形とともに「古い小田急の車両」を象徴するアイテムに思えた。

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パンタ車しか画像用意できなかったが、こちらは鉄コレ第3弾の2220形である。新潟交通に譲渡された後がプロトタイプだが、社紋以外は小田急時代と変わっていない。2200形とは扉窓配置は完全に同じで、横からではベンチレータくらいしか見分けがつかない。

FM系の台車は2種類あって、2200・2300形はFS203(直角カルダン)、2220・2320形はFS316(平行カルダン)となるが、見た目は似ているものの後者は軸距がやや短い。鉄コレもGMもFS316をプロトタイプにしているが、どちらも甲乙つけがたいレベルでよく再現できていると思う。

2200形と異なる点として、2220形の客用扉はプレスドア、通常ドア小窓、通常ドア大窓の3種類があり、同一編成内でそれが混在することもありバリエーションが豊富だった(他のFM系はドアの仕様が統一されている)。鉄コレ第3弾は2両とも通常ドア小窓となるが、2229Fをプロトタイプとしていて正しい。一方、GMキットはこのバリエーションにすべて対応できるのが強みといえるだろう。

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今度は2320形のサイドビューで、上が2321、下が2322。左が新宿寄り。

大まかな扉窓配置は2200・2220形と同じだが、両開き2ドアのセミクロスから改造されたこともあり、その名残として客用扉間の3つの窓のうち、中央がやや狭いという特徴がある。また、客用扉と車端から2つの窓、運転室直後の窓の位置も微妙に異なる。2220形から改造するにしても、扉窓の位置まで変更するのは大変困難であるため、ちゃんと再現した製品が出てきたのは本当にありがたいことだと思う。

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上が2200形、下が2320形で、それぞれ左が第3弾、右が今回製品。屋根はかなり濃いグレーになったことがわかる(個人的には前回の方が好き)。2320形の屋根板は2220形と大きく変わらないため流用品になるが、もしかしたら実車では若干差はあるのかもしれない(資料が少ない!)。

ベンチレータは屋根板と一体モールドで、無線アンテナや避雷器は省略されている。前者はパーツが付属しているが、後者はGMのパーツから持ってくるしかなさそうだ。パンタも交換しない限り鉄コレ標準の軟質プラ製の固定式だ。

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左が2200形、右が2320形。どちらもパンタ車でベンチレータの形状やパンタからの配管位置が異なる。

2200形のベンチレータは製造メーカーによって向きが正反対になっていた。左が新宿、右が小田原。
日車 パンタ > < > < | > < > < > → 2201-2202、2203-2204、2209-2210、2211-2212
川崎 パンタ < > < > | < > < > < → 2205-2206、2207-2208、2213-2214、2215-2216
※2217-2218ベンチレータが異なる(2220形と同じ)ので該当しない。

鉄コレのプロトタイプは日車製なので今回製品の2209Fとしては正しいが、第3弾時代は2213Fだったので間違っていたことになる。ちなみになんの因縁か、10000形「HiSE」のシート生地の色(赤と青があった)も日車製と川崎製でパターンが正反対だったりする。

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今でこそ20m級の新鋭車両もラインナップされる鉄コレだが、初期コンセプトは「小型で古い車両」がラインナップの中心であり、特にトミックスのスーパーミニカーブレールを使用したコンパクトなレイアウトで走らせることが提案されていた。鉄コレ初期に発売されたFM系にも言えたことであり、リアルさはともかく台車の可動域もめちゃくちゃ広い。

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パンタ車の屋根上(右)にはパンタからの配管がモールドされているが、妻面には配管のモールドがない。ただ、屋根板を入れ替えれば既存先頭車と改造先頭車を比較的簡単に再現できるメリットはありそう。

例えば2320形だと4両編成時代は2321-2322-2323-2324という編成で、中央2両が先頭車改造されたわけだけど、パンタの有無(奇数車がパンタあり)と既存・改造の顔つきの組み合わせで4種類ある。今回製品は2321-2322だから、もう1セット買って屋根板を入れ替え、車番を何とかすれば2323-2324の編成も再現できる。

こだわるなら前面のジャンパー線等も上手いこと処理する必要はあるが・・・

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左が第3弾、右が今回製品。画像が上下に高くなりすぎるのでパンタなし車で比較。

基本的には同じだが、今回製品はヘッドライト・テールライト(通過表示灯を兼ねる)にレンズが入り、行先表示が印刷済みになった。種別表示が空白なのは前述のとおり、各駅停車を示すものである(実際には薄く「↓」が表示されていた)。このあたりの仕様変更は1800形にもみられた。

窓から運転室の仕切りが簡易的に表現(鉄コレ名物)されているが、運転席背後はごく小さな窓があるだけだったので(しかもカーテンがかかっていた模様)実車とは異なる。第3弾の頃、銀河モデルからエッチング製の仕切りパーツが発売されていた気がするが・・・

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左が第3弾2220形、右が今回製品。今回製品は2220形から側面だけ金型を変えただけのようで、前面は灯火類のレンズ入れ以外まったく同じ。また、2200形と同様に行先表示等は印刷済みである。

今回製品は連結器に電連が表現されているが(取り付け精度が低いのはご愛敬)、2220・2320形では行先表示機が出っ張っている既存先頭車には装備されていたが改造先頭車にはなかった。屋根上の無線アンテナもそうだが、電連が装備されたころには改造先頭車は実質中間封じ込め状態だったので省略されたのだろう。

また、運転室の仕切りは既存先頭車は前述の2200形と同じだったが、改造先頭車は運転席直後も助手席側と同じサイズになっており、その意味では鉄コレは大雑把には合っている。

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ここまで第3弾と今回製品を並べて思うのが1800形の時もそうだったが、とにかく色味が違うなということ。ボディも屋根もかなり濃くなったというか、全体的に色黒な印象。写真よりも実物を見るとアイボリーの鮮やかさが足りない気がしている。

昔のGMのカタログの名言(これがわかる人は余裕で中年以上だと思われ)、「A君の小田急とB君の小田急が云々」の件もあるからどちらが正しいかは人によるとは思うが、筆者は旧製品の好きかな。2320形は側面と前面の青帯のつながりが乱れているし塗りなおしたい気分・・・GMから再発売されるキットで2220形でも作って、その塗装工程で一緒に塗ってしまおうかと画策中。

●総評

「レビュー」というほど模型に対して言及していない一方(汗)、古い車両はついつい余計な事を書きたくなってしまう性分なのでバランスの悪い記事になってしまった。もっとも、模型については大部分が15年前(第3弾)の時点で語り尽くされている気がするのでまあいいかなと・・・

ここまでの写真で見るとおり所詮鉄コレという品質の悪さは見られるものの、そこは価格なりなので(ずいぶん高くなったけどね・・・)通常のNゲージのクオリティを期待するのは野暮だ。それよりも、個人的には今回の2320形のような「こんなものまで」製品化してくれたことが嬉しかった。ボディとか基本的な部分はしっかりできているから、細密化改造や再塗装後のポテンシャルは高い製品だと思うし、それをしやすいのもまた鉄コレの魅力、利点なんじゃないだろうか。

これで晩年期のFM系4種類のうち、3種類が揃うことになった。となれば、あとは格下げ改造後の2300形しかない。特急用時代の製品から改造する手もあるが、ここまで来たら製品として出てきそうな気がするし、4両セットでぜひお願いしたい。なんなら2100形も4両セットで製品化を!!

トミックス 小田急ロマンスカー7000形「LSE」新塗装 レビュー

2020年1月、トミックスより小田急ロマンスカー7000形「LSE」(新塗装)が発売された。

●98687 小田急ロマンスカー7000形LSE(新塗装)セット 18,700円
(税抜き表示)

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7000形「LSE(Luxury Super Express)」は公式的にはロマンスカー3代目にあたる。「NSE」の1963年から17年ぶりの1980年に登場したが、その後のロマンスカーがおおよそ数年程度で新型が出ていることを考えると、かなりスパンが空いたことになる(そう考えると、現在最古の「EXE」が大規模リニューアルしている最中なので今後10年以上は走るだろうし、「GSE」の次は長くなりそうではある)。

前面展望室、連接構造の11両編成、塗装と先代の3100形「NSE」のキープコンセプトで、それをモダナイズしたような車両となったが、「SE」「NSE」にあった軽量、低重心構造といった高速化志向は鳴りを潜め、一般車並みの床下高さとなり速度よりも快適性を重視する方向となった。「NSE」が登場した当時と比べ沿線利用客は急増、「LSE」が登場した頃は過密ダイヤとなっていたし、複々線化は計画はあったものの当時は代々木上原~東北沢だけが複々線で他は工事すら始まっておらず、高速化どころではない環境で無理はなかったといえる。

4編成が揃い後継車両が出ても自社線内の特急として幅広く活躍。1996年に身障者設備設置などのリニューアルが行われ「HiSE」に準じた「新塗装」となったが、2007年に1編成が、最終的に残った2編成はすべて旧塗装に戻され新塗装は姿を消した。2018年に70000形「GSE」登場に伴い「LSE」は引退したが、ノーマルデッキで身障者設備もあったことから、小田急車としては後継の「HiSE」「RSE」よりも長生きした結果となった。

さて、模型の世界では「LSE」のNゲージ製品はトミックスから発売されたが、ガレージ製品を除いた一般的な量産品としてはロマンスカー初のNゲージ製品である。1981年発売と、実に40年近い歴史を持つ(筆者は当時小学生である)。現在でこそロマンスカーはすべての形式(それこそ「SE」より前の車両でさえ)が製品化されているが、先輩の「SE」「NSE」がマイクロエースが発売されたのは2000年代に入ってからの話だから、その発売時期の早さは突出している。トミックスが私鉄特急のラインナップを増やしていた時代、当時最新鋭だった「LSE」を選択したのだろう。おそらく連接車としてもNゲージ初で、スナップ式の連結方式が珍しくて特徴的だったのを覚えている。

一番最初の製品は時代的なものもあるが、両ヘッドライトとヘッドマークが一体のクリアパーツで構成、間の塗装はステッカー表現、点灯は緑色LEDのヘッドライトとヘッドマークのみでテールライトは非点灯、窓枠も印刷塗装なし、床下機器もグレー(実車は黒)というものだった。

しばらくこの仕様でカタログに載っていたが、2005年に身障者対応のボディを新規制作した新塗装が発売、ヘッドライトとヘッドマークまわりの構成が見直されテールライトも点灯するようになった第2世代となり、2006年には登場時の旧塗装が発売された。その後、2013年に前述の1編成のみ旧塗装になった編成の製品、2016年に旧塗装のブランドマーク付きが発売となり、実車引退後の2019年にはラストラン仕様が発売。ヘッドライトとヘッドマークまわりがさらに改良され、先頭車の車高も見直された第3世代となった。

そして2020年1月に発売されたのが、今回紹介する「LSE」の中でも1996~2012年の姿である新塗装の製品である。前述のラストラン仕様はいろいろ改良されたことは知っていたけど、「ラストラン」には特に興味はなかったのでスルーしていた。通常仕様が出るならまあ、という感じだったが、言っても所詮40年近く前の製品だし・・・と、トミックス「LSE」はノーマークだった。ところが、ある時読者様より新しい「LSE」について聞かれ、その流れでいつの間にか新塗装が発売されたことを知ったのである。出とったんかワレ!と。そして購入、レビューと相成ったわけである(コメントをいただいた読者様、ありがとうございます)。

基本的には40年前の最初期製品がベースで見直し箇所は前面および先頭車に集中しているから、今回は主に御顔を中心としたレビューになる。

ついでに、ちょっとした資料としてこれまで発売された製品をまとめておく。4編成すべてが製品化されたことがわかる。

1981年 7001F 最初期製品 登場時の姿
2005年9月 7003F 第2世代 新塗装、身障者対応車、シングルアームパンタ
2006年10月7002F 第2世代 登場時の姿
2013年3月 7004F 第2世代 ロマンスカー50周年の復活旧塗装(前面窓枠が黒)、ブランドマークはインレタ、動力改良
2016年1月 7003F 第2世代 晩年期の旧塗装(前面窓枠が銀)、ブランドマーク印刷済み
2019年3月 7004F 第3世代 ラストラン仕様
2020年1月 7001F 第3世代 新塗装、身障者対応車、シングルアームパンタ、ブランドマークはインレタ

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11両フル編成が1つのケースに収まるが、最初期製品から変わらず1段目が11・10・9号車、2段目が8・7・4号車、3段目が5・6号車、4段目が3・2・1号車と、トリッキーで直感的ではない並びになっている。同社のVSEや他社の連接ロマンスカーは編成順になっているのだから、そろそろ手を入れてほしい気もする。

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動力車用の補助ウエイト2つ、交換用ヘッドマークパーツ2つ(ビニール袋に入っている)、ヘッドマークステッカー、ブランドマークのインレタが付属品となる。

各種後述するが、今回製品は動力車のウエイトが薄型で軽量になったので、補助ウエイトはトラクション不足の場合に取り付ける。ヘッドマークはデフォルトで「はこね」がセットされているため、変えたい場合はステッカー+付属パーツで交換する。ブランドマークは再現したい時期(付き始めたのは2008年3月から)に応じて施す。

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奥が今回製品、手前が2005年発売の従来製品の新塗装。約15年の変化を顔を中心とした比較でみていきたい。

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上段が今回製品、下段が従来製品。

ボディや窓などのパーツは大部分従来製品と同じものを流用しているが、ヘッドライトとヘッドマークは大幅な変更を受けており、銀色のリムは太くてハッキリしたものとなりパーツの精度感も向上、ぱっと見でもキリっとして男前な印象になったことがわかる。

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実車と比べても、ヘッドライトとヘッドマークのリムの目立ち方もさることながら、四隅のR付けがよく似てると思う。一つだけ惜しいのはやや扁平気味なところで、窓下の黒帯との位置関係を考えても、従来製品と今回製品の間くらいだったらちょうどよかったかもしれない。逆にいえば、従来製品はちょっと大きめだと感じている。なお、公式を見る限りラストラン仕様はヘッドライト内部の構造は今回製品と同様に改良(後述)されているが、大きさやリムの太さは従来製品に準じている。

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左が今回製品、右が従来製品。後述するが、従来製品は先頭部の車高が高い。

最初期製品は両ヘッドライトとヘッドマークの部分が一体型のクリアパーツで構成されていて(間の塗装はステッカー表現)、上の写真を見るとどちらの製品にもその周囲に名残の分割線が見られる。右の従来製品から各パーツが分割されてその間も塗装表現になったが、パーツ精度はよくなくて福笑いみたい(ちょっと大袈裟か)になっている。今回製品もこの範囲内での調整ながら精度感が向上し、見た目がかなり改善されたといえるだろう。

今回製品はヘッドマークに印刷済みの「はこね」がデフォルトでセットされており、カトーの「NSE」を思わせるが最初から印刷されているのは楽。個人的には新塗装「LSE」は「はこね」よりも「さがみ」「えのしま」な印象なんだけど、印刷済みヘッドマークパーツが付属していたカトーと異なり、こちらは付属パーツにステッカーを貼って交換することになる。

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今回製品はヘッドマーク4隅にある小さな突起も表現されていることがわかる。また、やはりヘッドライトとヘッドマークは扁平気味だと思う。ヘッドライト直下の赤とアイボリーの塗り分け線、実車ではエッジの部分で塗り分けられているが模型ではやや下にあり、この点は従来製品から改善されていない。

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上が従来製品、下が今回製品。前面回りの改善と並んで大きいのが先頭部の車高が下げられたことだろう。従来製品は集電スプリングによって上がってしまっていて、触るとボヨヨンと揺れてしまっていたほどだが、ここが改善されただけで随分落ち着いているというか、見た目の安定感が劇的に向上している。

展望席の窓は一部が車体も構成しておりボディと同色で塗装されているものの分割線が出ている。離れて見ればまあまあ気にならないが、そこは設計の古さが出てしまっている。

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運転席下の赤とアイボリーの塗り分けは実車はなだらかなラインを描いていて模型は少々異なるようだ。

各種窓や扉の位置といった基本的な造形はかなり良く、相当古い設計の製品ながら「モデリングのトミックス」を見せつけられる。ただ、それ故に古い設計が使いまわされ続けてきたのかもしれない。

写真が傾いて見えるが、現場がかなりの下り勾配だからである(定番の渋沢~新松田間で撮影)。

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上が従来製品、下が今回製品。前述のとおり、先頭部の車高が下がったおかげでウィリー気味だった車高がほぼ水平になった。「先頭車の車高」ではなく「先頭部のみ」が高かったのである。設計が古いとはいえ、よくこんな状態で最近まで売っていたなと思うが、遅きに失したとはいえこの改善は高く評価したい。なお、この改善はラストラン製品から適用されている。

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奥が今回製品、手前が従来製品。運転席の屋根周りはパーツの分割が古めかしい。アンテナの色は今回製品は濃いグレーになった。従来製品は取り付けが良くなくて両先頭車とも同じ状態だったから、ここも改善されたのだろうか。

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パンタグラフ周りも全く同じだが、避雷器とヒューズ箱のグレーが先頭車のアンテナと同じグレーに変更されている。濃いほうが今回製品だ。

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上が従来製品、下が今回製品。6号車に設定された動力車(ここだけ両側に台車がある)は従来製品では車内いっぱいウエイトで埋め尽くされていたが、今回製品は高さが抑えられてう向こう側が見通せるようになり、室内灯も取り付けできるようになった。ただ、車体長が短いので相当軽量になってしまっており、レイアウトの条件によってはトラクションが足りず、前述のとおり付属品の補助ウエイトを付けることになる。この動力の改善は復活旧塗装(前面窓枠が黒)から適用されている。

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従来製品ヘッドライト点灯。

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今回製品ヘッドライト点灯。フォーカスが少しずれたみたい。

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従来製品テールライト点灯。

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今回製品テールライト点灯。

今回製品でもっとも顕著に改良を感じるのは灯火類周りだろう。緑色LEDでヘッドライトしか点灯しなかった最初期製品と比べたら(ここで挙げてる)従来製品はマシになったのかもしれないが、それでも今回製品と比べたら大雑把すぎるといわざるを得ない。

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正面から見ると従来製品はひどすぎて(苦笑)もはや次元が違うレベル。今回製品も正面からだとパーツの隙間から光が透けてしまっているし、特にテールライトはやや下方にずれているうえにヘッドライトに少し光が漏れてしまっているが、それでも劇的に改善されたといっていいだろう。

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今回製品は上方から見た場合の光漏れ対策も抜かりない。もしかしたら、ヘッドライトの光漏れ対策のためにヘッドライトがやや扁平気味になったのかもしれない。個人的にはヘッドマークの光り方がすごく気に入っていて、古い製品をベースにここまでやったのは称賛に値する。これの前では従来製品はもはやオモチャ。

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実車のヘッドライトとテールライト。それぞれの大きさの比率も良く再現できていて、かなり頑張ったといえるだろう。一応、ラストラン仕様もこの構成になっている。

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左が今回製品、右が従来製品。床下は同じパーツながら、今回製品は先頭部の下部に部品が追加されており、これがヘッドライトの改良の種なのかもしれない(分解はしてないので詳細は不明)。台車も同じパーツだが集電方式が変更されていることがわかる。

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上が従来製品、下が今回製品。身障者対応工事が行われた3号車の客用扉付近を見る。従来製品新塗装で初めて新規制作されたボディで、その後の復活塗装やラストラン製品でも使用されている。逆に使っていないのは登場時を再現した製品のみである。

色調は新旧変わらず、扉横のステップに塗り残しがある点も変わらない。というか、動力車を除けば中間車は従来製品との見分けは付きにくいくらい。

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扉や窓の位置関係などは問題ない。号車番号や禁煙マーク等は一切印刷がなく、その下のプレートがモールドされているだけである。ロゴマークの位置は従来製品の方が近く、今回製品はやや上方&客用扉寄りである。今回製品が悪くなったというより単に個体差レベルの問題だろう。

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ロゴマークの比較。上から従来製品、今回製品、実車。今回製品はロゴの主線が濃くなり、花の茎の部分のグリーンがきちんと枠内に収まって印刷されていることがわかる。実車は花は白で地がアイボリーで模型ではそこまで再現していないのだけど、従来製品の方がアイボリーという感じである。

このロゴは神奈川県の県花である山百合をモチーフにしたもので、「SE」より前の1700形第2編成(後に第1編成にも装備)より採用された。エッチング製の立派なもので2300形にも採用され、「SE」「NSE」「LSE」の旧塗装では採用されなかったものの、「LSE」の新塗装化と併せて「HiSE」「RSE」にもステッカーによるものとはいえ復活した。「EXE」以降はそれぞれ専用のロゴが用意されたため採用されることはなく、「LSE」も旧塗装に戻ったことで姿を消した。

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両先頭車でシートの色が異なるため(5・6号車に境界がある)、展望席から室内パーツの色違いが見えてしまう。比較的新しいカトー「NSE」も同様で、編成を組めば並ぶことはないとはいえやはり興ざめする一瞬。なお、登場時仕様は編成を通してシートの色が統一されているためこのような状態は見られない。

●総評

根本的には40年近く前の製品がベースであり、実際にそれが分かってしまう・見えてしまう部分はあるし、いくら弄ったところで所詮古いもんは古い。正直、そう思うところはある。しかし、それにしても今回製品はできる範囲でのことは目一杯やったうえに、最大限に良い結果も出していると感じており、よくやったなという感想の方が優る。扁平気味なヘッドライトなどやや惜しい部分はあるもの、ここまで良くなるとは想定外だった。

カトー「NSE」のレビューで従来製品のトミックス「LSE」は「論外」と評したが、正直なところ今回製品はここ最近のロマンスカー製品(他社製含めて)と並べても遜色ないレベルになったと思う。今回の改良をもっと早くやってくれてたらよかったのにと思うところはあるものの、それでも従来のトミックス「LSE」への認識を覆すくらいの製品になったと評価したい。

今回の仕様で「登場時の」旧塗装も欲しくなってくる。ついでに、「HiSE」もヘッドライトの中身なら今回製品並みに修正してくれると嬉しい。今後に期待したい。

トミックス 小田急70000形「GSE」レビュー

2018年11月、トミックスより小田急ロマンスカー70000形「GSE」が発売された。

・98658 小田急ロマンスカー70000形GSE(第1編成)セット 22,800円

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今年の3月に登場したばかりの最新型ロマンスカーが早くもNゲージで登場。メーカーはこれまで「LSE」「HiSE」「VSE」を手掛けてきたトミックス。

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限定品ではないが、「VSE」と同様に特殊な装飾・イラストのパッケージとなる。製品名に「第1編成」とあるように70051Fがプロトタイプ。

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ケースに収まった姿は「赤い!」という印象。「GSE」は名鉄っぽいという人もいるがなんとなくわかる気も。7両編成ということで1つのブックケースに無難に収まる。付属品は特になくシンプルな内容だ。

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前面窓が大きいので照明が反射してしまって大変・・・とりあえず、造形は全く問題ないのではないだろうか。シンプルな造形だけれども各部のエッジがきちんと出ていて実車に忠実だと思う。特に展望席窓下端のエッジが生み出すハイライトは一見無表情に見える「GSE」にとって良いアクセントになっている。

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カッコいいすね「GSE」。正面も銀色のピラーとボディのエッジとのつながりや位置関係がよく再現できている思う。ドーム状の運転室の形状も良い感じ。曲面ガラスということもあって、模型だとガラスの厚みが少々目立ってしまうが・・・

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向きが逆になってしまったが、展望席側面の窓や扉の位置関係、オレンジバーミリオン帯の収束具合等文句なし。扉上部のRが実車よりも角ばっているが、まあ誤差レベルだと思う。

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銀色ピラーの下端、実車には「GSE 70000」のエンブレムがあるがさすがに小さすぎるためか省略されている。

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2階運転室はシンプルなドーム形状を再現。ガラス類は若干プラの厚みを感じるががあるが仕方ないか。断面を黒で塗るとよくなりそうだ。「VSE」ではワイパーが省略されていたが(余談だが、なぜかGMの3000形キット付属のインレタに「VSE」用のワイパーも収録されていた)、今回はモールド+塗装で表現されている。

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この角度で見る「GSE」いいなあ。展望席窓下端のエッジはそのまま側面まで伸びて7両編成を貫く。「VSE」「MSE」にはシルヘッダーのような表現があったが、今回はこのエッジが側面のアクセントのようだ。

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1号車後位のグラフィック。帯が2本に見えるが、上段は前述の側面部のエッジである(客用扉にはない)。
実車と見比べる限り(光線状態の問題でテカってしまった)、客用扉・乗務員室扉の大きさ形状、各種印刷との位置関係も正確だと思う。扉下の靴ズリは未塗装だが、新幹線などでもトミックスは伝統的に塗装を省略している。

ただ、車端の床下が若干反ってるのは気になるところ(後述する)。

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4号車山側の車販準備室のあたり。ロゴも綺麗に印刷されていて、「GSE」の文字は白でその他はグレーというのも再現されている。ロゴ下のドアコックはモールド表現で、マイクロの「EXEα」や「MSE」に比べて節度感があると思う。それはともかく、ボディと床下の隙間が若干あるような・・・

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同じく4号車の客用扉付近を拡大。小さな形式番号に加え、小田急ロゴ、身障者対応マークもきちんと印刷され位置関係も完璧に近い。オレンジバーミリオンの帯は実車では細い線で挟まれているが模型では細すぎるためか省略されている。行先表示機はガラス表現となるが、ステッカー等は付属しないのはいつものトミックスである。

動力車はこの4号車に設定されているが、客用扉の縦長の窓からウエイトが少し見えてしまっている。

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4号車の海側は2つの窓が並ぶ。こちらもロゴや窓の位置関係は良好といえる。それにしても、どんな格好で電話してるんだか・・・この箇所の写真はこれしか撮れなくて。

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VSE、MSEよりも大きくなった側窓はビシッとはめ込まれて精度感が高い。行先表示機はやや引っ込んでいるが普通に見る分には気にならない。実車はソリッドカラーっぽいけど、「VSE」がそうだったように模型はパール塗装風。拡大しないと分からないくらいのラメ感で不自然な感じはまったくない。

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「GSE」の空調装置は空力を意識したような形状が面白い。屋根上は「ルージュボルドー」という色で側面とは異なる。新幹線のE6系、E7系でも見られたが、屋根上の塗装は全般的に光沢が強く、深みや高級感がある。

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空調装置はメタリックになっている。実車と比べると表現オーバーな気がしなくもないが、上から見たときのメリハリには相当効いていて模型的な見栄えはかなりよい。

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シングルアームパンタは「VSE」と同じパーツのようだ。

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左から2・4・6号車。公式サイトの「情報室ページ」にもあったが、6号車はヒューズボックスが逆に付いているように作り分けされている。屋根上の実車写真はないので再現度については断言しにくいのだけど、一応筆者は「ちゃんとやっている」と信じる。妻面も凝っていて、雨どい周辺の細かい配管も再現されている。

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パンタを囲うカバー車端部から出ている配管がリアル。貫通路から見える文字はガラスパーツにモールドされたもの。実車に沿ってのものだと思うが、貫通路のガラス扉は号車によってあったりなかったりする。

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「VSE」に続き、床下はカバーが付く。塗装は「EXEα」の車体上部に使われている「ムーンライトシルバー」。2・6号車の海側には空気取り入れダクトがあるのが特徴で、それもしっかり再現されている。

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「VSE」と同様、座席は別パーツで向きを変えることができる。実車のシート生地は柄物となるが、模型ではブルー1色で表現。

床下はコアとなる床下パーツに外板パネルを付ける方式を採用し、号車ごとの作り分けを容易にしている。同じような床下カバー付きでもなにかと流用が多い新幹線模型でもやってほしい方式ではあるけど、この「GSE」では前述の1号車車端部の反りとか、特に動力車となる4号車は少々ガバガバな感じがあったりとか、精度があまり高くない印象が受けるのが残念。

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グレーの部分が床下のコアとなるパーツで、銀色の外板(カバー)パーツが付いていることがわかる。コアパーツには前述のダクトの「逃げ」が用意されていることもわかる。

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実車の台車は半分カバーに覆われているのであまりよく見えないが、模型の再現度は特に問題はなさそうだ。ただ、筆者が購入した個体は3箇所くらい車輪が外れた状態だったが・・・

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「GSE」は展望室付きロマンスカーでは初のボギー車となった。これまでのトミックスのロマンスカーはすべて連接構造だったので、同社としても初のボギー車ロマンスカーである。とはいっても一般的な姿になったといえるわけで、連結方式も一般的なアーノルドカプラーが採用されている。

ただねえ・・・実車と比べたらアレだけども、連結間隔がちょっと広すぎな気がする。

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伸縮カプラーを使用しないNゲージの連結間隔はだいたい4~5mmくらいだけど、この「GSE」は実測でなんと8mm。連結間隔がある意味特徴な(?)がマイクロエースの2400形じゃないんだからさ、と思って並べてみたらなんとほぼ同じ間隔。

マイクロ2400形は動力車の前後はもっと広いし(10mm以上ある)、連結間隔が狭い「EXE」でも動力車の前後では間隔が広くバラつきがあるのに比べると、「GSE」はすべての連結箇所で同じ間隔を保ってはいるけど・・・「GSE」はありふれた20m級ボギー車であり、構造上ここまで間隔を広げる必要はないと思うが・・・解せぬ。

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ヘッドライト・テールライトが点灯するのは当然として、展望室は最初から室内灯が実装されているのは面白い。一般的な室内灯のプリズムでは展望室は確かに届きにくいから合理的だし有難い。そういえば、カトーのNSEも先頭車にはプリズムが事前に仕込んであったっけ。

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灯火類は小さいながらも点灯。標準的な光量であまり眩しい感じはしない。写真ではやや黄色がかっているが実物はもっと白い印象がある。実車のヘッドライトもLEDとはいえ、ここまで載せた写真を見ても割と黄色がかって見えるので特に問題はないと思う。

●総評

概ね、造形と塗装は文句なし、床下の精度と連結間隔がちょっと・・・という感じだろうか。

新幹線でもそうだけど、造形に関してはトミックスは変なデフォルメがなくて個人的には好感が持てる。今回の「GSE」も同社の実力が反映された素晴らしい造形だと評価したい。また、塗装もボディはパール塗装風、屋根は光沢を強くしてソリッドとメタリックを組み合わせるなど、単調な「赤」にしていないのは非常に見栄えがするし、シンプルな「GSE」の表情付けに一役も二役も買っていると思う。

半面、床下の精度の低さはマイナスポイント。E5系で「反り」は見られたが、こういう基本的な部分はユーザ側での対処が難しいので、もう少しなんとかならなかったのかと思う。不必要に広い連結間隔もらしくない。

ただ、床下は(個体差あるかもしれないが)ぱっと見には分かりにくいし、連結間隔はTN化など対処しようはある。そうした欠点を補って余りあるほど造形と塗装は素晴らしいので、小田急ファンとしては押さえておいて損はない製品だと思う。

現時点で小田急ロマンスカーのすべてが(鉄コレも含めれば)Nゲージで出揃ったことになるので、過去の形式と並べて「ロマンスカークロニクル」やっても面白いし、3000形などの通勤車と並べて、特に高架複々線区間を再現すると「今の小田急」感がすごく出ると思う。2018年、小田急にとって複々線完成は大きな出来事だったけど、同時期に運用開始した「GSE」も「その象徴」なのだから。

●おまけ

11月末に製品が届いたのだけど、仕事が忙しかったり天候に恵まれないなどで12月1日にようやく実車を撮影。今回のレビューはけっこうギリギリだったです。

「GSE」の運用は公式サイトで確認できるとはいえ、下回りまでディテール撮影できる駅は限られているし停車時間も短いので、海老名と本厚木に停車するやつを狙っていった。

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ま、それでも本厚木では下り列車(同駅止まり)に被られて台無しだったわけだけど・・

「VSE」と比べると若干のコストダウンは感じるものの、真っ赤なボディはやはり存在感が抜群。横浜市に住んでいるとなかなか小田急を利用する機会がないのだけど、「EXEα」も含めていつか乗車もしてみたい。

マイクロエース 小田急30000形「EXEα」レビュー

2018年5月、マイクロエースより小田急30000形ロマンスカー「EXEα」が発売された。

・A6596 小田急30000形・EXEα・リニューアル 基本6両セット 33,400円
・A6597 小田急30000形・EXEα・リニューアル 増結4両セット 20,700円


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旧「EXE」の発売より7年後に発売された「EXEα」。リニューアルは順次行われているため、実車でもこの並びは見られる。

1996年デビューの30000形ロマンスカー「EXE」は車歴約20年でリニューアルされることになり、2017年に第1編成(30051F+30251F)が更新改造をうけ、外装・内装・走行機器が変更され「EXEα」となった。2018年6月現在、2本が改造済みで最終的には7編成全てが改造される予定となっている。

「EXE」のNゲージとしては2011年5月にマイクロエースから発売されており、「EXEα」もその流れで同社から2018年5月に発売された。旧「EXE」のレビューは当サイトの記事としては初期のものだったし(当初はブログで書いたが後にメインサイトに移動)、好きな車両でもあるので、7年後に更新後の姿の製品のレビューを書くのは個人的には感慨深い。

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今回も6両セット+4両セットを併結した10両フル編成で楽しめる。価格は・・・後述する。

実車がそうであるように、今回製品は従来の旧「EXE」製品がベースとなっているので、興味があればメインサイトの「EXE」の記事も参考にされたい。非常に出来の良い前製品だったけど、今回はどうだろうか。

なお、今回は実車の写真を用意できていないのはご了承願いたい(筆者が住む横浜市は小田急とは縁遠いのよ)。

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非貫通型・貫通型共に造形は従来製品と変わらないが、塗装は実車と同様にムーンライトシルバー+ディープグレイメタリックに白とオレンジバーミリオンの帯に変更されている。

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非貫通・貫通型共に、塗装やロゴの位置は忠実に再現。非貫通側は塗り分け位置がほんのわずかに高い感じがするが許容範囲だと思う。白いラインも細いのにきちんと出ている。

貫通側は旧「EXE」が6号車、「EXEα」は7号車なのでスカートのハッチが逆になっている。また、旧はTNカプラーに換装している。

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旧「EXE」では前面の愛称表示機の照明が上部に漏れないよう、前面窓のブラックアウトが凸状になっていたが、「EXEα」では表示機が撤去されたため模型でも光漏れを考慮する必要がなくなり、ブラックアウトの塗り分けが実車に近いものとなった。

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「EXEα」では貫通型先頭車の運転席横に小窓が追加されたが、模型でもボディ(側面)を新規制作してもちろん再現。乗務員室扉のノブや下部にある手かけも微妙に変化しているし、旧「EXE」の扉の横にあった縦2連の側灯も「EXEα」ではなくなっている(次の画像でも後述)。メタリック塗装ということもあり、パーティングラインが若干目に付くのは仕方ないかな。

オレンジバーミリオン帯の収束も十分頑張っているといえるだろう。乗務員室の表記が漢字の縦書きから「MSE」等でも見られるアイコンに変更され、窓から扉横に移動していることがわかる。

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3号車山側は売店設備に代わり多目的室が設置され、小窓が増設された。また、「EXEα」は客用扉を交換しているので窓の形が四角い。客用扉の左側に見えるドアコックも印刷表現からモールド表現に変わり、側灯も扉横上部に新設されている。これはリニューアルに際し行われた改造で、前の画像で縦2灯の側灯がなくなったのはこのためである。

「Odakyu」ロゴ下部にある小さなハッチの形状も変わっていて、これは実車どおりかはわからないが、とにかくボディの新規制作により「EXEα」化による変化点を余すことなく再現している。

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屋根上にも変化がみられる。旧「EXE」にあった2本の車内電話用アンテナや売店設備のキノコ型ベンチレータの撤去を再現したほか、「EXEα」では写真右側のランボード延長や配管の追加が行われており、これらは「とれいん」2017/7のディテール写真を見る限り、実車の変更を忠実に再現できている。そう、側面だけでなく屋根上も新規制作されているのだ(クーラーは従来と同じパーツのようだ)。

また、写真は用意できなかったがパンタも補助ロッドが細いものに変更されている。

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先頭車の信号炎管が撤去されたのも再現。別パーツによる表現だったので屋根板には穴が開いていたはずで、それが埋まっているということはここも新規ということになる。屋根の色はやや明るいグレーに変更された。

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旧「EXE」では連結したら見ることができない車端ドアにある「EXE」ロゴを入れていたが、今回はドットパターンに変更。実車もそうなのかわからないが(まだ乗ってないんで)、ここも抜かりなしといえる。妻面モールドについては変化は見られない。

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印刷も細かいところまでよく出ている。カスレが若干あるが個体差だろう。ムーンライトシルバーとディープグレイメタリックの粒状感はNゲージとしては一般的なレベルだと思う。下部のガンメタっぽいメタリックグレーは光沢がそれなりにあり、光の変化で見え方が結構変わる。

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「EXEα」は外観や内装だけでなく、サハから電装された車両もあるくらい走行機器類も大きく変更されている。余談だが旧「EXE」はM車よりもT車の比率が高く、これは歴代の小田急車両でも唯一の特徴である。「EXEα」ではMT比は1:1に改められた。

そんなわけで、床下機器も変化しており(変わっていない車両もあるが)、それらの変更も余すことなく再現。上と下それぞれ2枚、どことどこが変わったのかわかると思う(動力車は相変わらずメタボ・・・)。「EXEα」では最近の小田急の仕様に合わせてグレーになっている。

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実車ではヘッドライトがLEDに変更されたが、模型では旧「EXE」とあまり変わらず電球色っぽい感じ。もっと白い方がいい気もするが、実車の写真は案外黄色っぽい感じもするので間違いとまでは言えないか。テールライトは従来通りである。従来製品同様、通過表示灯の準備工事(?)は残されているが当然実装されていない。

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室内パーツはグレーから明るいブルーに変更。窓が大きい「EXEα」に室内灯を入れるとかなり目立つはず。枕カバーはメタリックになっていて実車っぽい。従来製品の時点で見ないところまで作り込んだ売店設備は特に変更ないことから、室内は従来と同じパーツである。見えない個所だから特に問題ないだろう。

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「EXEα」では前面の表示機が廃止されたのでステッカーの収録は側面のみである。3色LEDからMSEと同じ白色(フルカラー?)に変更されたのを再現している。種類はあまりなくて江ノ島線系統は未収録、さすがに3月に登場したばかりの「モーニングウェイ」も未収録である。

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貫通型先頭車は併結を楽しむ場合は従来製品のように付属のカプラーに交換する必要があるが、今回はあの珍妙なアーノルドカプラーではなくマイクロカプラーに変更された。ただし、「MSE」と異なり電連が省略されたタイプである。見た目は劣ってしまったが、「MSE」カプラーの切り離しは特殊だったので一般的なマイクロカプラーと同じ操作性なったのは良いかも・・・とはいっても、やはり大正義TNカプラー(JC25の下段電連切り落とし)に変えたいところ。ただでさえ高額な製品にさらに出費するのは憚られるけども。

また、「MSE」と同様に「貫通扉が開いた状態の」パーツが付属する。「MSE」の使い回しではなく「EXE」専用品。したがって旧製品にも使えるが調色が難しい。取り付けは両面テープで行う。テープも付属するが市販品なら粘着が弱いタイプを使ったほうがよいだろう。

●総評

概ね旧製品をベースにしているので、長所も短所も基本的には引き継いでいるが、そのうえで「EXEα」化で変化した個所はボディ・屋根上(既存金型の差し替えだと思う)、床下を新規作成して「これでもか」というくらい再現している。塗装印刷も相変わらず見事だし付属パーツもグレードアップ。とにかく妥協や手抜きを感じないのだ。新幹線模型のレビューをしていると(ライトユーザが多いせいか)結構容赦ない流用や「タイプ」的な手抜きを見せられることが多いだけに余計にそう思う。

なので、「EXEα」を再現した模型としては非常に出来の良い、エクセレントな製品と評価したい。

●ただ、価格がね・・・

以下、6両セット+4両セット=10両セットの値段(税抜き)。

旧「EXE」(2011年)  19,400円+15,200円=34,600円
「MSE」(2014年) 24,100円+16,700円=40,800円
「EXEα」(2018年) 33,400円+20,700円=54,100円

旧「EXE」→「MSE」が約3年で5,000円程度の値上げだったのに対し、「MSE」→「EXEα」では4年で15,000近く値上がりしており、同じ製品ベースで考えれば旧「EXE」→「EXEα」の7年で20,000円くらい上がっている。いくら今回製品の出来が良いといっても大きく仕様が変わったわけでもないし、正直尋常じゃない値上がりだと思う(投機商品じゃあるまいし)。なので、正直お勧めしにくいのだ。

もちろん、これは生活必需品ではなく趣味のものだ。「嫌なら買うな」は究極の正論だし、筆者も実はなんでもかんでも「高い高い、安く安く」という考え方は嫌いだ。だけども限度というものはある。プラ製完成品Nゲージとしてはいくらなんでも高すぎだとはいいたい。なんでこんなこと書くのかというと、マイクロエースのNゲージメーカーとしての先行きが心配だからだ。

同社の生産はすべて中国で行っているが、ご存知の通り近年の経済発展で中国では人件費が高騰している。衣料品とかなら東南アジアに生産をシフトしているわけだけど、Nゲージはノウハウも必要だと思うので同じようにはいかないのだろう。かといって国内回帰もできない。となると、中国側のコストが高騰するなら販売価格に転嫁するしかない。発売が予定されている小田急9000形登場時は34,200円+24,100円=58,300円と「EXEα」よりも高くなるが、なすすべも無いのだろう。

でも、学生さんとか若い人たちがついてこれなくなるのは心配。というか、大人でもキツイ領域に入りつつあると思う。このまま値上げするに任せていたら、そのうち誰も買わなくなる(買えなくなる)。誰もがNゲージに無尽蔵にお金を出せるわけではないからだ。

初期の頃に比べたら製品の質も上がってきているし、他社がやらない車両を製品化してくれるという意味では貴重なメーカーだ。値上げを続けた結果売れなくなって撤退、というのは寂しいし惜しい。同社も悩んでると思いたいし、前述の正論に胡坐をかいているとは思いたくないが、値下げまではいわないでも、これ以上の価格の高騰はなるべく進まないように望みたい。

次は70000形「GSE」はよ、となるが現時点ではマイクロにはやってほしくないな。製品の出来には心配ないが、価格がまた跳ね上がりそうなので(7両編成で40,000円超えそう)。まあ、たぶんトミックスがやると思うけどね。

鉄道コレクション・小田急2300形登場時 プチレビュー

2018年2月に発売された、鉄道コレクションの小田急2300形(登場時)をプチレビュー。

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実車について

公式では3000形「SE」が初代となっているが、厳密にはそれよりも前から「小田急ロマンスカー」と呼ばれた車両は存在しており、今回紹介する2300形は1955年(昭和30年)に登場した3代目ロマンスカーである。

1910形から開始されたロマンスカーの運転は好評を博し、2代目1700形が運用される頃には箱根観光客の増加に伴い増発待ったなしの状況になっていた。当然車両を増備しようとなるわけだけど、1954年には小田急初の高性能カルダン駆動車2200形が登場しており、いわば旧世代の1700形を増備する時代ではなくなっていた。一方で3000形「SE」は開発研究段階でまだまだ投入できる状況にない。そこで「SE」登場までのつなぎとして、2200形の足回りに特急用の車体を組みあわせ、急遽製造されたのが2300形である。

1910、1700形は3両編成だったが、高性能車である2300形はM-M'ユニットを組むため4両編成となった。当時流行だった「湘南顔」と小窓がずらりと並んだ特急車らしいいで立ちは急ごしらえとは思えないものだった。4両編成1本のみ制作され、1700形とともに特急運用に就いた。

しかし、前述したように3000形「SE」登場が計画された中で暫定的に増備された車両であり、いずれ特急運用から外される運命でもあった。登場から4年後の1959年に「SE」が4編成出揃うと、2300形は2ドアのセミクロスシートに改造され、同じく2ドアセミクロスシートの2320形とともに準特急として活躍することになった。

しかし、当時の小田急は沿線全体輸送量が急増していた時期。1963年に3100形「NSE」が登場すると準特急は廃止され、2300形は2320形とともに3扉ロングシートの一般車に格下げされることになった。2両固定編成化により中間車の先頭車化、1・2号車の方向転換+改番、前面は貫通扉付きのいわゆる「小田急顔」になるという大改造を受け、機器がおおよそ共通化していた2200形などと「FM系」と呼ばれるグループに組み込まれることとなり、特急車の風格は完全に失われてしまった。それでも、他のFM系と比べて100mm広い車体幅、ドア間に狭窓4枚(他は広窓3枚)、パンタが連結面側にある(他は前パン)など、原形の面影が少し残っていた。

一般車化された後は1982年まで活躍、その後は富士急行に譲渡され1995年に廃車となった。

●模型について

2300形の模型はガレージメーカーの真鍮製キットは存在していたが、この度、トミーテックの鉄道コレクションとして発売された。手軽にNゲージ化することができ、古い車両との相性がよく、ロマンスカーでは初代1910形、2代目1700形がすでに発売されており、残されていた2300形もようやく発売されることになった。3000形「SE」以降が大手メーカーのNゲージで揃い、70000形「GSE」も製品が出るのは時間の問題。小田急ロマンスカーはすべての形式が入手しやすいNゲージで揃うことに。

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「SE前ロマンスカー」の1910・1700形と共通したイメージのパッケージデザイン。今回もTRAINS名義の店舗限定品で一般流通品ではない。車両のほか、動力台車用レリーフ、ヘッドマークのステッカー、展示用レール4両分が付属する。筆者は横浜鉄道模型フェスタで入手した。

筆者は2300形は一般車になった後しか知らないし、そもそも乗ったことがあったかどうかも覚えていない(FM系の中から2300形を見分ける方法を知ったのは廃車前後くらいだった)。なので自分で撮った実車の写真はないし、模型としても比較できる他製品がないから「プチ」レビューになってしまうのだけど・・・それでは、ざっと見て行こう。

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非貫通2枚窓のいわゆる「湘南顔(国鉄80系風)」。1700形3次車や2200形も2枚窓だったが、こちらは後退角があるのと金太郎塗りのせいでより「湘南顔」に近い。書籍などで実車の写真と見比べる限り、造形については特に問題なさそうだ。ヘッドライト・テールライト・通過表示灯のすべてにレンズが入っている。

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ワイパーが「ヘ」の字型で妙な印象を受けるが、これは実車通りである。車体側と窓側にぞれぞれモールド+銀塗装で表現。2300形は1編成しか存在しなかったので車番は印刷済み。

1つ前の写真でもわかるが、ダークブルーとオレンジの塗り分けに塗り重ねのようなものがある。マイクロエースの0系1000番台でも同じような処理がなされていて、塗り分けをきれいに出すためのもので実際効いていると思うが、当製品では微妙に色味の違いがあったり、左の2304号のようにベースの塗り分けが透けて見えてしまっている。この写真はかなり拡大しているとはいえ、肉眼で見てもわかってしまうレベルなのは残念。

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特徴である狭窓がずらりと並ぶ特徴は良く出ている。写真だと車高がやや高めに見えるが、プラ車輪のままとはいえ実測で6.5mmなのでまずまずの数値である。

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1700形もそうだったが、実車ではエッチング製で立体感のある特急マークはシンプルに印刷で表現。床下機器がちょっと外れちゃってるけど・・・

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鉄道コレクションではすでに2200形の製品があったことから(第3弾、すでに10年以上前の製品である)、台車や床下は実車同様に同じパーツを使用。台車(アルストム、FS203)は成形色が黒に変更されている。床下機器も2200形からの流用となるが、2200形では4種類のパーツがあったのに今回は3種類しか使われていない。これは実車がそうだったのか、筆者がハズレ品を掴んだ可能性もあるが、たぶん製品が間違っている気がする。まあ、第3弾は改造用にとかなりストックがあるのでパーツ持ってくればいいんだけども。

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2302号の海側はトイレがあり、実車通り擦りガラス風になっている。写真は省いたが連結面を挟んで対になる2303号には山側に放送室があり、ここも摺りガラス風の表現になっている。ただし、放送室の窓には装備されていた保護棒は省略されている。室内パーツにはさすがにトイレ・放送室の再現はないが、2303号の海側中央には喫茶カウンターが再現されている。

2300形の客用扉は両先頭車にしかなく、中間2両には非常用扉が片面にあるだけだ。この極端に客用扉が少ない設計は前作1700形から引き継いだものだ。客用扉は1910形、1700形に続き引き戸が採用されているが、この後のロマンスカーの客用扉は「SE」「NSE」は手動ドア、「LSE」「HiSE」「RSE」は折り戸と特殊なものが多く、「EXE」まで引き戸はなかったことになる。「VSE」はプラグドアが採用されたが「MSE」「GSE」で引き戸に戻っている。

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パンタは鉄コレお馴染みの軟質プラ製。配管は片側に2本出ているだけのシンプルなものだが、「小田急電車回顧」とか見ていると反対側からも出ている気がする。

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「SE」前ロマンスカー(左から1910形、1700形、2300形)は地味顔だけど、ヘッドマーク付けると特急車っぽく見栄えする。丸く切り取るのが大変だったが、それぞれ「特急」「はこね」「明神」を設定した。なお、1910形は動力組み込み・パンタ交換などでN化している。

前述のとおり、2300形の特急としての活躍は4年程度で、パッケージの説明書きにもあるように確かに「短命に終わったロマンスカー」ではある。しかし、1910形はさらに短く2年、1700形も7~8年程度で、戦後から高度経済成長期にかけての輸送人員増加や車両の高性能化などに翻弄され、どうしてもプロトタイプ的にならざるを得なかった「SE」前ロマンスカーは押しなべて短命だった。

しかし、いずれも一般車に格下げ改造されてその後の活躍の方が長かった点も共通していて(「SE」以降のロマンスカーで格下げ改造されたものはない)、時代の流れで急遽ドロップアウトしてしまった「HiSE」「RSE」よりも(小田急の車両としては)長生きしていた。特に2300形はなにかと「短命」を強調されることが多いけれど、4000形に機器を譲る目的でやはりドロップアウトしてしまった1910形も1700形もと比べても、「小田急の車両」として全うできたんじゃないか個人的には思っている。

●総評

あまり模型のレビューはしてない気もするが(汗)総評を。

品質は・・・いつもの鉄コレクオリティであり、正規のNゲージの品質は期待しないほうがよい。まあ「出してくれただけでもありがたい」製品ではある。品質はアレだけどもモデリングは決して悪くないので、手を加えればかなり良いものになるポテンシャルはあると思う。

さて、これにて「SE前ロマンスカー」は全形式出てしまったわけだけども、TARINS名義で次は何を出すんだろうか。個人的には1700形の1次 or 2次車(すでに出ているのは3次車で、結構差があるのだ)あたりが希望かな。2300形も一般化改造された晩年型も欲しい。今回、第3弾の2220形と合わせて晩年型を作ろうかと2セット買う予定だったがやめてしまった。なんか、そのうち出そうな気がするので・・・
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